第213話 従魔師の誓い
その場にいる全ての従魔を順繰りに撫でて、マリアローゼは満足して振り返った。
ウルラートゥスは机に寄りかかり、頬杖をつきながら、その様子を飽きることなく眺めている。
「気は済んだか?」
そのままの体勢で穏やかに聞かれて、マリアローゼはドヤ顔で頷いた。
「じゃあ、俺からの返礼をしよう。お前がもっと成長したらな」
「どういう事ですの?」
ウルラートゥスはフッと色気のある笑みを浮かべた。
「お前を俺の主人にしてやるよ」
どうしてそうなった!?
マリアローゼはぽかん、と口を開けてウルラートゥスを見詰めた。
原作には登場しない…まあそれも1巻だけだが、攻略対象でもない人物なのだが、
これではまるで乙女ゲーのようではないだろうか。
しかもお酒で…ちょろすぎますわ……
「え…ええ……気持は嬉しいですけれど、お酒で身を売るような真似は…」
「そうじゃねぇ。従魔師同士も交感出来んだよ」
それは初耳だ。
再びマリアローゼはぽかん、と口を開いた。
「それは使役……」
「じゃねえよ。笑わせんな。大体の居場所が分かる程度だ。俺は人間で従魔じゃねえぞ」
「それは存じておりますけれど…何故成長してからですの?」
マリアローゼの素朴な疑問に、ウルラートゥスは人の悪い笑みを浮かべた。
「身体が耐えらんねぇだろ。それとも使役されてぇのか?」
脅かせば、マリアローゼはブンブンと勢いよく首を横に振った。
「公爵はお前の事を何より大事にしてる。守る術は多いほど良い筈だ。ほら、約束」
ぶっきらぼうな動作で、ウルラートゥスが武骨な褐色の指を差し出した。
頬杖をしたまま、投げやりな雰囲気で。
マリアローゼは指とウルラートゥスを見比べて、小さな白い小指をおずおずと絡めた。
「これでよろしいの?」
「ああ。用は済んだだろ、帰れ」
シッシッと追い払うように手を振るが、ウルラートゥスは気まずそうに顔を僅かに逸らしている。
「ありがとうございます、ウル。お酒、召し上がってね」
「おー」
返事はするが、視線は合わせない。
さっきまで自信満々だったのに…
とマリアローゼは訝しんだが、嫌な雰囲気とも態度とも感じなかった。
寧ろ、居心地悪そうにしているので、軽くお辞儀をして、小屋を後にした。
「はぁ、何やってんだ、俺は」
まるで幼子の様に約束を強請ったようで、ウルラートゥスは机に突っ伏しながら、
大量の酒を見詰めた。
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