第228話 弟は可愛いか?
「まああ、可愛らしい……」
マリアローゼが第三王子、エネアを見て声をあげると、気を利かせた乳母が近くで見せてくれた。
ぷくりとした頬に、もちもちの手足も可愛らしい。
マリアローゼはふにふに、と薔薇色の柔らかな頬を小さな手で撫でた。
エネアは大きな赤い瞳でローゼをじっと見詰めて、ふにゃりと笑顔を見せる。
「まああ、なんて可愛らしい笑顔なのかしら…」
嬉しそうに両手を頬に当てて、喜ぶマリアローゼから離れて、乳母はカメリアの元へとエネアを連れて行った。
その間も探すように、エネアはマリアローゼの方を見ようと小さな頭を動かしている。
カメリアは小さな息子を、乳母から受け取ると胸に抱いた。
「さあ、三人ともこちらにきて、お茶を戴きなさい」
「はい、伯母上様」
お辞儀をしたマリアローゼが自分の席へと戻り、従僕達が新たに追加した椅子に、
ロランドとアルベルトは其々座った。
母と王妃が仲良く喋るのを聞きつつも、マリアローゼはまだ食べていない甘味や軽食に手を伸ばした。
だが、言葉にならない声で、エネアがローゼに向かって何かを話しかけ、手を伸ばすので思わずマリアローゼはその度に手を止めて、にっこりと微笑む。
「ローゼは子供が好きなのか?」
と不思議そうな顔でロランドが聞くので、マリアローゼは少し首を傾げた。
「そうですわねぇ…小さくて柔らかくて可愛いから好き、ですけれど、わたくしには弟妹がいないせいも
あるかもしれませんわ」
そう言われたロランドも、初の弟だが、そこまで可愛い、とは思った事はないので、まじまじとエネアを見詰めた。
同じくアルベルトも、ロランドの時でさえあまり興味がなかったので、不思議な気持ちで同じくエネアを見詰める。
当のエネアはマリアローゼに向かって手を伸ばしたり、目の前に置かれた食べ物を持ったりと忙しない。
「どうしたのかしら?今日はやんちゃですね。ゼナイダ、お散歩を続けてちょうだい」
何時もはもっと大人しいらしいエネアは、ゼナイダと呼ばれた乳母に抱き上げられた。
エネアは不満そうな声をあげながら、連れて行かれる。
最後までマリアローゼから視線を逸らさず、もちもちとした小さな手を伸ばしていた幼児の可愛らしさに、マリアローゼは思わず、カメリアに尋ねた。
「わたくしも一緒にお散歩してきても宜しいでしょうか?」
「ええ、構わなくてよ」
マリアローゼが王妃に問いかけると、王妃は笑顔で頷いた。
嬉しそうに頷き返すと、マリアローゼは椅子からすとん、と降りて、
立ち止まっていた乳母の下へとてとてと駆け寄る。
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