第302話 双子に愛された人は苦労する
「どうしたんだ?ローゼ」
双子ではなく、その向こうにいるシルヴァインが声をかけてきた。
マリアローゼは、また二人を見比べて言う。
「こうして見ていると、やっぱりお二人は似ているのだなと思いまして」
「「双子だからね」」
声を揃えて返されて、マリアローゼもふふっと笑みを漏らす。
「食べ物の好みも似てらっしゃるでしょう?ですから好きになる女性も似るのかもしれないと思いましたの」
「確かに、それはそうかもしれないな」
シルヴァインがニッと笑顔を見せると、二人はお互いの顔をマジマジと見つめあう。
それから、二人は同時にニカッと笑顔を見せた。
「確かに、似るかも?」
「じゃあ、せーので好きな女の子の名前を言おうか?せーのっ」
「「マリアローゼ」」
二人は笑いながら片手でハイタッチをするのだが、マリアローゼは途中で気づいてげんなりしていた。
「それは、双子でなくても兄弟で似るのではありませんか?」
と目の前のキースが本から顔を上げて言うと、その横に座っているノアークもうんうんと頷いた。
「……似ると思う」
シルヴァインはニヤニヤと愉しそうに微笑んでいる。
マリアローゼは、自分の疑問が思わぬ方向に転がったので、慌てて修正に入った。
「そういう事ではなくて、ですね。妹のわたくしではなく、恋人として好きになった女性が1人だった場合は、取り合いで喧嘩になってしまわないかと心配したのですわ」
二人はきょとん、とした顔をしてから、ふるふるっと首を振った。
「喧嘩はしないと思う」
「しないね」
「では、あきらめますのね」
そうですか、お互いが大事ならそういう選択肢もありますね、と思ってマリアローゼは、頷いた。
だが二人は、ニヤリ、と不敵に笑った。
ジブリールが、人差し指を一本立てて左右に揺らす。
「いやいや、もう一つ解決法があるんだな」
「二人で半分こ、だよ」
とても、はしたない事を言われて、マリアローゼは冷たいジト目を二人に注ぎつつ微笑んだ。
「それは、縦にですか?横にですか?」
「ローゼが怖い事言う!」
「残虐!」
シルヴァインだけは大笑いをしているが、マリアローゼは大きく溜息を吐いた。
何にしてもこの双子に好かれた女性は苦労するに違いないのである。
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