第203話 エルノの冒険者ギルド

買物も終わり、飲物を飲んで休憩した後で、一行は冒険者ギルドに向かった。

昨日の内にシルヴァインが話をしておいてくれたお陰で、出迎えの人々が歩道に出て待ち構えている。

中には昨日や一昨日共に過ごした冒険者も居り、一行を見つけるとぶんぶんと元気よく手を振ってきた。

マリアローゼも嬉しそうに、小さく手を振り返す。

呼ばれてきたのか、中から厳しそうな強面の中年男性が出て来た。


「ようこそ、いらっしゃいました。エルノのギルド長、アーウィンと申します」


日焼けした肌に、灰色の髪とハシバミ色の瞳で、精悍な容姿をしている。

顔にも身体にも幾筋もの戦いの証が刻まれていた。


「マリアローゼ・フィロソフィと申します。以前は折角ご足労頂いたのにご挨拶出来ず申し訳ありませんでした。

それから、掃討戦、誠にお疲れ様でございました。ご無事で何よりでございます」


丁寧なお辞儀と口上に、アーウィンは片膝を地面に付いて、頭を下げる。


「勿体無いお言葉です。こちらこそ怪我人をお任せしてしまい、心苦しく思っておりました。

でも、ダンが回復して仲間も、私も大変嬉しく思います」


「あ、あら、どうぞ、お立ち下さいませ。わたくしも彼が歩けるようになって、嬉しく存じます。

それに、彼が助かったのは、諦めずに彼を救い出した冒険者さま達のおかげでもあると思うのです」


鷹のような猛禽類を彷彿とさせる猛々しい眼を緩く和ませて、アーウィンは微笑んだ。


「私が騎士ならば、貴女に騎士の誓いを捧げていたところです」

「まあ、そのお気持だけで嬉しゅうございますわ」


微笑んだマリアローゼは、布帽子の白さと相俟ってぷっくりと膨らんだ頬が愛らしい。

アーウィンは立ち上がって、ギルドの中に置かれた椅子へと案内した。

昨日は教会に訪れていなかった、数人の怪我人が待っている。


マリアローゼは椅子に座ると、手が届かない箇所の怪我はマリアローゼ自ら塗り、

手の届く範囲なら、薬を適量手に渡して自分で薬の効果を試させた。


「これは、本当にポーションの半額以下でお売りになるのですか?」


眉を顰めて、厳しい顔でアーウィンが問いかける。


「ええ、ですが、内部の傷にはポーションでないと効きませんので、

効果もポーションの半分以下かと思いますけれど」

「いえ、冒険者の怪我の殆どは外傷によるものですから、我々にとってはかなりの朗報です」


確かにそれはそうだろう。

今迄小さな外傷でポーションを飲めずに苦しんだ人も多いかもしれない。

マリアローゼは厳しい顔のアーウィンを見上げた。

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