第51話 おちおち寝られない

とある講習が、AM10時から昼休憩を挟んでPM4時まで開催された


昼からの部、途中までは我慢して起きていたのだが、いつの間にか椅子にもたれて寝ていたようだ


映画を上映するような音がしてハッと目が覚めると


いつの間にか壇上で研修用DVDが流れている


"えっ、どのくらい寝てた?"


腕時計を見ると、35分程度寝落ちしていたらしい


俺の他にも強者が2名ほど、グガー!とイビキをかいて寝ている


が、どうやら俺は、周囲に迷惑の掛からぬよう、静かに寝ていたみたいだ


全く、寝るにもマナーがあるぜ。


講習全体が終わり、修了証を受け取ってエレベーターに向かう途中、背中をポンと叩かれた


振り向くと同業の知り合いだ


「Tさん、相当お疲れみたいで。」


「あ〜Wさん、もう眠くて眠くて。ヤバかったですわ」


「気持ち良さそうに寝てらっしゃいましたもんねぇ」


「あっ、バレてたんですか笑」


「地底怪獣みたいにグロロロォ・・・グロロロォ・・・地響きみたいでしたよ笑」


「えっ?!」


大迷惑だったらしい

ただ、これはまだ救いがある


皆様は寝言を言うだろうか?


俺は全く言わない


・・・言わないと思っていた


6月のとある週末に孫息子(小3)が泊まりにきた


その夜。


俺は前日までのハードワークで疲れていたからか、孫より先に寝落ちしたらしい


ゆっさゆっさと揺り起こされ、目を開けると


「ジージ?ジージ?大丈夫だよ?僕、ここにいるよ?!」


孫が、俺を覗き込んで必死に話しかけてくる


「え?」


「大丈夫だよ?どこにも行かないよ?!」


「なに海(かい)くん、寝惚けてんの?」


「違うよぉ!ジージがずっと、しゃべってたんじゃん!」


「えっ?ジージが?何を??」


聞けばどうやら


お願い!

10分!

10分でいいからぁ〜!

ここにいてよぉ〜!


俺が突然、身悶えはじめたそうだ


海は、ジージが寝ぼけて僕のことを探している!と思ったらしい


俺は一体、誰に懇願してたんだろうか。


「海くん。もう、ジージいい年して寝言なんて恥ずかしいからさぁ、ママとかには絶対言わないでよ?」


「わかった」


だがそれがもし、先の講習会場だったらと思うとゾッとする・・・

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