第8話 噂のマンション
昨年5月だったか、1ヶ月半ぶりに友人Mと、Mの経営するバーでAM10時から昼(朝?)飲みしていた
前回Mと飲んだ際に、Mの住むマンション近辺で恐ろしい轟音が聞こえる、と動画を見せてもらった
「うわっ、これ、あれだあれ、『終末の音』ちゃうの?!」
終末の音とは、御存知の方もおられるかも知れないが
2011年以降、世界各地でその現象が報告され、この世の終わる前触れでは?!と騒動になった、別名「アポカリプティック・サウンド」というもの
現象としては
森の奥深くや住宅街で、何処からともなく不気味な、地獄の咆哮のような轟音が聞こえてくるというものだ
未だ原因は解明されていないらしい
Mの見せてくれた動画は、周囲に3棟マンションが立ち並ぶ道路の中心で撮影されたものだ
ゴオォォォ・・・
グウゥォォォ・・・
ゴオオゥゥゥ・・・
グォォ・・・
グオオォゥゥゥ・・・
何処からともなく不規則に、地獄の門が開いたかのような不気味な轟音が鳴り響いている
「どう?マンションの管理会社も調べたんだけど原因不明なんだってよ」
「いやこれ・・・まじ凄いわ」
現象は毎日起こるという訳でもなく、時間帯もまばらだが、特に昼と夕方に多いという
Mはこの不気味な現象を広め、自分の住む地域を有名スポットにしたいと笑っていた
そんなことをして何かバチが当たらないのだろうか?
・・・で、冒頭で言った通り1ヶ月半振りにMと飲むことになったので
「その後どう、あの音?まだ続いてるの?」と聞いてみた
「ああ、あれ?すっかり忘れてたな」
もう興味も失せたと言わんばかりの口調だ
「何だそれ?あんなに盛り上がってたやないの?」
「いやそれが。3月末に、ウチのマンションに配管清掃が入ったのよ、年1回の。そうしたらピタッと音が止んじゃってな」
どうやら配管の一部または複数箇所に“小動物”が詰まったらしく
詰まった部分に生活排水が流れる度に、大きな管楽器のような音を発していたらしい
「なんじゃそら」
結局、世の不思議現象など、そんなものか
・・・いや待て。
「小動物って何?そんな一斉に詰まるようなものか?」
「問題はそこだ。俺も知らなかったんだけどな。」
同じマンションに入る、違法でやっていた小動物ペットショップ?ブリーダー?の部屋から、ある単体種が逃げだしたらしいとの噂
「なにその、ある単体種って?含みのある表現だな。」
「それがな。どうやら『オキナワイシカワガエル』らしい」
「・・・え?!え〜っ!!」
オキナワイシカワガエルとは、絶滅危惧IB類(近い将来、野生での絶滅の危険性が高いもの)で、天然記念物の個体だ
本当だとすれば相当、やばい話だ・・・
更に言えば、何処からどう排水管なんかに大量侵入したのか?
「おかげで今、うちのマンション、動物使って闇実験してたらしい!とか、訳わからん噂されててよ・・・」
自分の住む地域を有名スポットにしたいという願いはある意味、叶ったわけだが・・・なんとも。
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