第155話 だから帰るの嫌なんです

お盆休み


Eさん(28・男性)は実家に帰り、夕食前に和室でテレビを観ていた


「あれ〜帰っとったんかい」


声を掛けられ振り向くと、ケイコ婆が自分の後ろに座るところだ


「ほんにあんたは可愛ええなあ」


そう言って後ろから抱きついてくる


Eさんは身を硬くしてジッとしている


背後からギューッと抱きつかれながらテレビを観ていると、父親が入ってきた


「お前なに窮屈そうにしてるんだ?」


「いや・・・見たらわかるでしょ、また婆ちゃんが」


「婆ちゃん?居るんか?」


Eさんは必死にケイコ婆を振り解こうとしていたのだが、身体に全く力が入らなかったのだ


ケイコ婆はますます鋭い爪で自分を締め付けてくる


「父さん助けて、ケイコ婆、離して」


察した父親は身動き出来ないEさんを座卓から引き出すと


「まだか?まだ無理か?」Eさんの身体を激しく揺さぶる


しがみついたケイコ婆の重さに後ろに倒れそうになりながらも


Eさんは必死に「離して!離して!」叫び続けた


騒ぎを聞きつけた母親もいつの間にか和室にきて、Eさんを心配そうに眺めている


父親のアシストを受けながらEさんが身体を揺さぶり続けていると


フッとケイコ婆が離れた


「ふうーっ、ふうーっ、ふうーっ・・・」


Eさんは過呼吸になりながらも立ち上がり、Tシャツをめくる


父親が顔をしかめ、母親が「やっ?!」と叫ぶ


Eさんの左右の脇腹に3つの穴が開き、血が垂れている


穴から背中にかけて3本の引っ掻き傷が付き、血が滲んでいる


3人は仏間に移動し、ケイコ婆の位牌に線香を灯すと手を合わせた

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