第26話 連れてきた
「きっとくる」のは貞子だが、「連れてきた」のは、一体・・・
下の娘が、同い年の事務のR嬢、そのお友達のKさん、Yさんと部屋飲みをすることになった
会場はKさんの部屋
ところが当日、急用でYさんが来れなくなった
以前からZOOMを使っていたKさんは、Yさんに
「遅れても良いから自分家からリモートしなよ」と参加用URLを送ったそうだ
部屋飲みが始まってから1時間程経ったころ
4人共通のグループLINEに、Yさんから「もうすぐ参加します」と連絡があった
KさんはノートPCを開き、Yさんの参加を待つ
程なくYさんが画面に映る
「おつかれ〜」
「ごめんね〜今日〜」
双方が画面越しに手を振ったのだが、直後Yさんの顔が、心なしか強張る
「Y〜どうしたの〜?」
3人の問いかけに、缶ビール取ってくる、という仕草をしたYさんが席を立つ
すると
ブブー ピロリン ポヨン
それぞれの設定音とともに、3人側のそれぞれにLINE着信
ん?なに?
それぞれにスマホを見ると、先程席を立ったYさんからグループLINEに
「いるいるいる」
そう文章が入っている
えっ? 3人同時にノートPCを見る
席を立ったYさんが部屋の遠目に立っていて、こちらをじーっと見ている
また直ぐLINEがきた
「スマホ置いて早く!!」
3人は同時に、慌ててテーブルに各自のスマホを置いた
すぐにPCを見る
すると・・・
画面の向こうに立つYさんに白い靄(もや)が掛かり
その白い靄は、次第に遠目のYさんに向かって小さくなっていく
いや、3人はそれが、靄ではなく、半透明の物体が、Yさんに近付いて行ってるのだと気付いて血の気が引いた
と、R嬢がすぐ自分のスマホを掴み、タタタタタと何やら打ち始める
そして着信音
ウチの娘、Kさん、画面向こうのYさんが同時にスマホを見る
R嬢からのLINE
「そっち行った逃げて!」
画面の向こうでYさんが慌てて部屋を出る気配
こちらではKさんが急いでZOOMを切り、PCを閉じた
その後
3人とYさんは連絡を取り合い、Yさんの無事を確認したのち、落ち着いて状況を整理する
Yさんが部屋に戻ってPCからZOOMに入るとすぐ
画面向こうのテーブルを囲んで座る3人の背後に
黄色いブラウスを着た黒髪の女性が、同じく座った状態でこちらを見ていたそうだ
ギョッとしたYさんだったが、その女性は明らかに「呼ばれていない4人目」だと悟り
その女性に気付かないフリをして、3人に危険を知らせねばとLINEを送ったのだが
画面の向こうで3人それぞれがスマホを確認する背後から、その女性が覗き込もうとしているので
「置いて!」と再度LINEを送ったそうだ
ところがそれに気付かれたのか、黄色い女性が画面越しにスッとYさんを見つめてきた
あ・・・と硬直していると、今度は自分のLINEに着信
「そっち行った」と文面を読んだYさんは、慌てて部屋を飛び出したのだ
「父さん信じてくれないかもだけど、本当なのよ。」
後日、娘が話してくれた
K嬢はまだ同じ部屋に住んでいるが
Y嬢はその日を境に恐怖で部屋に戻れなくなり、直ぐに引っ越したそうだ
4人ともその後、特に異変は無いそうだが
その事件の数日前にもZOOMでやりとりしたKさんとYさん
その時にはそんな女性は現れなかった
では一体その日、誰が女性を連れてきたのか
うちの娘? R嬢? Kさん?
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