第144話 引継ぐ

Sさん(45)は高校生になったころから


「うわっ?!・・・あ、お前か」


父親が、いちいち自分を見て驚くようになったという


別に柱の影からヒョイと顔を出したわけではないし


お互い勝手知ったる家だ、知らない街で偶然鉢合わせしたわけでもない


なのに事あるごとに「うおっ?!・・・あ、お前か」と驚くので


ある日、聞いてみた


「どうしていちいち驚くわけ?」


「ああ・・・ん〜親父に見えてな」


「じいちゃんに?」


そう言われてSさんは、小6の頃に亡くなった父方の祖父の顔をアルバムで見返してみた


全然似てない・・・

てか自分は母親似だと言われてきた


洗面台の鏡の前で角度を変えてみるが、見間違える要素が見当たらない


「ということが昔、ありまして。・・・で、金曜ですよ」


夜8時に仕事から帰ってきたSさんが玄関土間から式台に上がろうとして


『ガチャッ』


背後で玄関ドアの開く音がしたので振り向くと


「うわっ?!」


入ってきたのは、5年前に亡くなったSさんの父親だ


「な?そうなるだろ?」


そう父親に言われて瞬きすると、そこには部活帰りの高校生の息子


「・・・なに?」


「あっ、いや」


息子は母親似なので、Sさんの親父と見間違えるはずなどないのに。


「・・・とまあ、そんなことがありまして」


俺「え〜っ不思議ですね。伝統みたいなもの?笑」


Sさん「余談ですが、じいちゃん亡くなった時68で、親父が40、私が12だったんです。親父が亡くなった時68で、私が40、息子が12だったんです。てことは私が56の時に孫ができて、私は68で死ぬのでしょうか?笑」

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