第112話 insane
島田さん(仮名・38)は枕元に携帯を置くと、0時半に就寝した
直ぐに寝付いたが
ブッブッ、ブッブッ、ブッブッ、ブッブッ、ブッブッ、ブッブッ、ブッブッ、ブッブッ、ブッブッ、ブッブッ
何かを連続で受信した音で目が開く
何だ?
電話?LINEか?
携帯を手に取り、開く
明るく照らされた画面にしかめ面で目を凝らすと
LINEのアイコンに「10」と数字が付いている
何だよ・・・
時刻は1時20分
LINEを開く
送信者は会社の同僚の横山(32)だ
『助けて』
『助けて』
『助けて』
『助けて』
『助けて』
『助けて』
『助けて』
『助けて』
『助けて』
『助けて』
うわっ何だこれは?!
一気に目の覚めた島田さんは『どうした?』と直ぐに返信する
瞬時に既読になる
そして返信がきた
『大丈夫です』
は?
なんだそれは?
『いや本当に大丈夫?』
『大丈夫です』
なんだ?
怖い夢でも見たか?
正直、こんな時間に何かに巻き込まれるのは迷惑だ
意味が分からないが横山が大丈夫というなら大丈夫なんだろう
何だよ全く・・・
携帯を枕元に置いた島田さんは再び目を閉じる
と、その時
ブッブッ、ブッブッ、ブッブッ、ブッブッ、ブッブッ、ブッブッ、ブッブッ、ブッブッ、ブッブッ、ブッブッ
またLINEの連続投稿のようだ
なんだあいつ?!
「だあっ!」声を発しながら再び携帯を手に取った島田さんは画面を開く
LINEのアイコンに10の表示
横山の奴・・・!!
LINEを開く
ちがう、弟(34)からだ
『時間がない』
『時間がない』
『時間がない』
『時間がない』
『時間がない』
『時間がない』
『時間がない』
『時間がない』
『時間がない』
『時間がない』
えっ何で弟から?
時間がないとは??
ゾワゾワと気味が悪くなった島田さんはすぐさま『意味分からん』と返信する
瞬時に既読になり、返信がきた
『大丈夫です』
なんだそれは・・・
『お前なに言ってるの?』
『大丈夫です』
『は?』
とそこに別のLINEがきた
戻って受信を確認すると、半年前に別れた彼女からだ
『選んで?』
ただ「選んで?」とだけの言葉
"ちょっとまて俺、寝惚けてる?"
島田さんは布団からムクっと上半身を起こし、部屋を見渡す
いや、これは現実だ
再び画面を見る
選んで?
何を選べというのか?
ちなみに別れを切り出したのは彼女からで、島田さんはまだ未練があった
『ごめん、意味が分からない』
そう彼女に返信したが既読にならない
先ほどからの一連のLINE・・・全く繋がりのない3人からではあるが、何かしら関連性があるはずだ
いや待て・・・
知人を語った悪戯か?
同僚の横山、弟、別れた彼女のLINEを見直す
だがどう見てもそれぞれ、本人から送られたとしか思えない
何故ならそれ以前の会話が3人とも残っているからだ
と、彼女が既読になった
そして
『選んで?』
再び同じ言葉が入ってきた
島田さんは『お前を選ぶ、お前を選ぶから』と入力したところで・・・
携帯の電源を切った
馬鹿らしい。
どうしてこんな意味不明なことに振り回されなきゃならん?
もう、寝る。
翌朝。
6時に目の覚めた島田さんは、やおら携帯を取り上げる
あの夜中の3人からのLINEは形跡すら無い
やはり何らかの幻覚だったか
ただ、別れた彼女に入力しかけた文言だけは残っていた
危ない危ない
『お前を選ぶ』なんて送っていたらストーカー呼ばわりされていたかもしれないな
島田さんは着替えを済ませると家を出た
仕事場は、部屋と同じ構内にある建物だ
まずは朝イチ、横山との作業打ち合わせだ
そのあと弟と現場で落ち合い、指示を受ける
昼は別れた彼女の働く食堂で定食を食べるのだ
午後からはあの冷徹な医師によるカウンセリングなんだが・・・
そうだ、昨夜の意味不明なLINEの文句でもぶちまけてやろう。
担当医「島田さんは28歳まで普通の営業マンだったんだけどね。上司の裏切りで人身御供にされた挙句、職を失い同棲していた彼女も去ってしまった。引きこもり中に精神異常をきたして、僕が担当した時には完全に精神崩壊していたよ」
まるでシャッターアイランドのディカプリオだ
島田さんには、今の精神病棟での単調な生活が1番幸せなのかも知れない
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます