第64話 乗ってきたもの
小料理屋の女将と、ペットの話で盛り上がっていた
女将「そういえば常連さんのお連れの女の子から、こんな話聞かせてもらったわよ」
某不動産会社で事務をしているYさん(28)
Yさんはその夜、布団に入ってスマホを眺めていたが、そのうち寝落ちした
どれぐらい経っただろうか、騒がしい鳴き声で眠りから引き戻された
どうやらリビングの方から聞こえてくる
えっ・・・真夜中だよ?
何でウチのインコたち、あんなギャーギャー騒いでるの?
両親は2階で就寝中だし、私が見に行かなきゃいけないかなぁ・・・
うわ~、一段と激しく鳴いてるじゃん
一体どうしたのよ・・・あれ?
・・・あれ??
布団から出られない・・・なんで?
えっ・・・なんで??
あんなに鳴いてる・・・早く様子を見に行ってあげないと・・・だめだわ、体がいうことを聞かない!
あっ2階で両親の起きた気配がする・・・
2人、何か喋ってる・・・
下が騒がしいからお父さん見てきて・・・母親のくぐもった声が天井から漏れてくる
いや、私の方が近いんだから、早く私が見に行かなきゃ・・・
早く見に行かなきゃ・・・見に行かなきゃ!!
そこで目が覚めた
あれだけ騒がしかった鳥たちの鳴き声がしない
一人暮らしする1Kのマンション。
"なぁんだ夢か・・・凄くリアルな実家の夢だったなぁ・・・"
少しの間、布団の中でボーッと考えていると
右向きになって寝ている自分の背後(背中側)から、とても軽い何かが、床を歩いてくる気配がする
"えっ?!"
Yさんの全身に寒気が走る
そしてそれは、Yさんのパジャマを噛み・足で掴みながら、体の上によじ登ってきた
Yさんは恐怖で身動きできない
登ってきたそれは、Yさんの腰の辺りに移動すると、足を畳んでしゃがみ込んだ
・・・そう、昔よく、そうしていたように。
コザクラインコのキーちゃん。
私がうたた寝してると必ず登ってきて、そこがお気に入りの場所だったんだよね・・・
だから私はいつも10分ほど身動きせず、あなたが次に動くまで、待ってたんだよね・・・
だけどそれはもう、5年前の話
キーちゃんはとうに死んじゃった
じゃあ今、私の上で寛(くつろ)いでいるのは何なのだろう・・・
そこまで考えたところでYさんは気が遠くなった
その数日後からYさんは、左腰のあたりに鈍痛を感じるようになった
昼間のデスクワークが煩わしい
人の手を借りるまでではないが、立ったり寝たりの動作にも痛みが伴う
これは、あの夢か現実か分からない経験と関係があるのだろうか・・・
1週間後、思い切って婦人科へ行ってみた
結果、軽度の子宮内膜症だった
「放っておくと手術などの処置も必要になってきますが、今ならホルモン投与で良くなりますよ」
結びつけたくないが・・・あの夜、あの何かは
これに気付かせるためにやってきたのか
これを発症させるためにやってきたのか
ただ、腰の痛みに幻覚を見ただけなのか
それからというもの夜中に目が覚めると
50グラムの何かがちょこんとおなかに乗っているような気がして
むやみに寝返りを打てなくなったのだという
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