第82話 隠蔽
もう午前0時を回ったというのに何処かで非常ベルが鳴り始めた
辺りにはマンションが3棟、隣接しているが
2棟は新築、1棟は耐震補強含め大幅改修された物件なので
ジリジリジリジリと、いかにも古めかしいベル音を発する旧式の自動火災報知器は使用されていないはずだ
皆が寝入りばなの時間というのもあり、窓を開けてまで野次馬になる住人はいなかったが
全く鳴り止まないベルに業を煮やしたどこかの住人が通報したのだろうか、そのうち消防車がやってきた
しかしベルが止まるまでにはかなりの時間を要した
数日後には、当該マンションの住人から詳細が漏れてきた
非常ベルが鳴ったのは、改修されたマンションの地下室だったそうだ
ところがその地下室、マンション住人のほとんどが存在を知らなかったらしい
そのマンションが建てられた頃にあった旧電気室で
マンションの給水方式が貯水槽方式だった頃に、屋上の高架水槽まで水を上げる増圧ポンプの、動力として使われていたのだという
改修後は直結給水方式となったため、不要となった屋上の高架水槽は撤去された
が、地下電気室(及びポンプ室)は、共用部階段から地下室に続く階段手前の、踊り場に鉄扉を取り付けただけで
当時の住人には「取り壊さず閉鎖します」と説明がなされた
改修後に入居した住人達には、何故か地下室の存在が知らされず
「鉄扉の奥は物置です」と簡単な説明を受けただけだったという
今回「雨漏り等による誤作動」と処理されたらしいが
改修後に入居した住人達を中心に、問題提起がなされた
何故地下電気室の存在が隠され、更に電気まで生きているのかを管理会社に問い正した
ところが管理会社側は「初代自治会長及び自治会役員との取り決めによって、地下室のみ我々の管理外となりました」と回答してきたという
そんなことあるだろうか?
現自治会役員は、そんな取り決めを知らず引き継いだ者ばかりで
今回、非常ベルが鳴った事で、地下室がまだ残されていたことを知ったのだという
なぜ地下室だけ、住人自ら管理しようとしたのか
なぜ改修時に取り壊さず(触れさせず)、未だ電気が生きているのか
近々、元施工のゼネコンの調査が入るそうだ
俺「それって元からの住人が共謀して地下室で"何か"やったんじゃないの?」
友人M「そんなオリエント急行殺人事件みたいなことにはならんだろうが・・・」
https://kakuyomu.jp/works/16816927861385549272/episodes/16816927861409378054
※消防隊が地下室の発見と侵入に遅れたのは、鉄扉には鍵も鍵穴もなく、ただ埋め込まれていたからだそうだ
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