第10話 その正体

戸建て住宅の密集する一車線の道路や生活道路を、平気で5~60キロで走り抜けていく車がいるが


あれは怖い


30キロでも咄嗟の飛び出しに対応できるかどうか、俺も自信がない


数日前。


民家の並ぶ、歩道との区別もないような細い道路を歩いていると


遠目から、かなりのスピードで走ってくるミニバンを発見


それと同時に、こちらに向かって右手を歩いてくる小学生らしき2人にも気付いた


ミニバンはスピードを落とさず走ってくるが


結構な至近距離になって、ようやく子供の存在に気付いたのだろう


キュッ!と子供を避けたは良いが、左手の俺、ミニバンから見て右車線を歩く俺に突っ込んできた


パパパパパァン!!


凄まじくクラクションを鳴らしてきたので、慌てて道路脇の民家の壁に張り付く


その脇をシュン!と走り過ぎてゆくミニバン


殺す気かぁ!!!


俺は振り向いてナンバーを確認する


どんな奴が運転していたのか確認出来なかったが、自分が凶器を転がしているという自覚がないのだろう


世の中から交通事故など、減るわけがないわな


走り去ったミニバンは視界から消える


全く・・・


気を取り直して前を向き、再び歩こうとして


あれ?

小学生がいない・・・


えっ?

どこ行った?


ぐるぐると辺りを見渡すが、横に逸れる道はない


右手に一件、民家の門扉はあるが、開いた形跡もない


いや確かに、先ほどまで仲良く喋りながら歩いてくる小学生が2人いたのだが・・・?


あのミニバンも避けたよな・・・??


まさかとは思ったが、俺はまた"何か"に遭遇したのかと思い


今、自分のいる番地をスマホで調べてみたが、特に何かいわくのある土地でもなさそうだ


事務所に戻ってその話をすると


「そういうのは全部、キジムナーじゃないかな」事務のM嬢が言う


たとえ精霊であったとしても


人間界の交通事情、モラルの無さには顔をしかめているだろうな・・・

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