第172話 今の君のように。
1人、川で遊んでいると、あの子が現れた
緑色の子
緑色の服を着ていたのか、皮膚が緑だったかは覚えていない
男の子か女の子かも分からない、目の大きな綺麗な子だった
その子は、喋ることができなかった
後を付いていくと、先ほどとは比べ物にならない、とても綺麗な河原に出た
そこで、ずっと2人で、河原の石を積んで遊んでいた
ある日、僕は、突然、意地悪になった
とても仲良く遊んでいたのに、急に、隣で石を積んでいたあの子を突き飛ばした
何も言えず驚いているあの子に、「なにかいえっ!」大声で怒鳴った
あの子は、大きな目を更に丸くして驚いていたけど
そのうち寂しそうな顔になると、川に入り、向こう岸に消えていった
どうして僕は、あんな酷い事をしたんだろう
その後、何度も、川に行ったけど
あの緑の子は2度と現れなかった
僕が高校生の頃、地元は開発されニュータウンが拡がっていった
川は無機質なコンクリートで固められ、昔の面影は全く無くなってしまった
山を抜けてあの河原に行きたくても、その山自体が無くなってしまった
僕は何度も、あの子に謝る機会を与えてくださいと願い続けてきたけど
もう、遠い記憶の奥でしか、会えなくなってしまった
この話をすると皆「それ河童だよ」と言う
いや、あの子はそんなものじゃない
子供の頃に見えていたものが、大人になって見えなくなるという話をよく聞くけど
僕は、僕の残酷な本性のせいで会えなくなってしまった
・・・そんな風に見えない?
それは、僕が、僕より弱い者と2人きりになった時にしか、本当の自分を見せないからだよ
つまり
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