第162話 心霊スポットになった日

実家に帰ってきたAさん(35)


山に囲まれた、終点となる電車の駅を降りる


1時間半待って、ようやく1日に7本だけのバスがやってきた


乗り込むと、平日の日中の暑い最中、乗客は自分だけだ


バスが出発する


6つ先の停留所まで乗るのだが、これまた1時間ほど掛かる


だが久しぶりの田舎道だ、のんびり景色を眺めていると心身ともに癒される


ボーっと田園風景を眺めながら揺られていると、左手の山に古い石の鳥居が見えてきた


あ〜、あんなところに神社あったっけか・・・


するとその鳥居から、白い狩衣(神主の常装)を着た男性が手を振っているのに気付く


運転手もそれに気付いたらしい、バスが止まる


「お客さん、少し待っててくださいね」


そう言って運転手はバスを降り、農道を通って鳥居の方に歩いていく


こういう事、よくあるのかな?


Aさんが見つめていると、運転手は神主と共に鳥居を潜って山に入って行った


ところが、それから20分経っても運転手が戻ってこない


バスのエンジンは掛かったままだ


さすがに待たせ過ぎだろう・・・Aさんは席を立ち、運転席までやってくる


開いたままの左手ドアを降りたAさんは、農道を通り、鳥居に向かって歩く


古めかしい石の鳥居の正面までやってきたAさんは


「えっ?どういうこと??」


思わず声を上げる


鳥居の先には道がなく、鬱蒼と茂る木々があるだけだ


バスに戻り、スマホで調べてバス会社に連絡、警察にも連絡する


15分ほどしてバス会社、警察それぞれが到着


その後、警察から増員が到着


鳥居周辺の散策が始まった


運転手は山川さん(57)という方だそうだ


神社については、確かに山中に廃神社はあるが、もう20年以上無人だという


警官「神主を見たのですよね?」


Aさん「はい、確かに。運転手さんと一緒に鳥居を潜って、山を上がって行ったように見えたのですが・・・」


1時間ほど現場にいたが、一旦お戻り戴いて結構ですと解放された


ご迷惑お掛けしました、とバス会社の車で実家まで送ってもらった


「・・・それが2年前の話です。山川さんは行方不明のまま。現場の鳥居は心霊スポットとして遠方から若者が来るようになったそうです。山道が開いて神社まで辿り着けたとか、神主の格好をした山川さんに逢ったとかいう噂もあるみたいですが・・・」

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