第104話 釣果

「めちゃくちゃ重いけど全く引かない(生体反応が無い)」


そう釣り客が言う場合、そのほとんどが岩や大きな貝や沈んだ人工物を引っ掛けている


とある遊漁船で3人の釣り客が、水深30メートルの沖で底物釣りを楽しんでいた


3人は沖釣り初心者だ


「うわうわっ?!」


昼一番、釣り客Aの竿に大きなアタリがあった


ガガッ!ガガッ!ガガッ!

竿がしなる


「大きいよそれ!ガンガン巻いて底から引き剥がしましょう!」


船頭が操舵室から指示を出す


B「やったなお前!」

C「慎重に慎重に!」


残る2人もグングングンという強烈な竿のしなりに興奮気味だ


だが


A「・・・全然引かなくなった」


船頭「巻いて巻いて!」


A「けどめちゃくちゃ重い・・・」


B「あんな引いてたのに?」


C「途中で死んだ?笑」


Aは、重くてなかなか巻けないリールを必死に巻く


「マジで重いんだけど・・・」


船頭「引かないですか?」


「全く引かないです」


全員が見つめる海中に薄っすらシルエットが浮かぶ


「な、何だこれ?!」


一部が布状のものに覆われた、白くてぶよぶよした1.5メートルくらいの塊が浮かんできた


「あっ?!ダメだ!!」


船頭はすぐさま海上保安庁に連絡する


腹部から片足までの、切断された人体の一部だった

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