第37話 耳

事務のM嬢が、いつの頃からか耳の調子が悪いという


「ほら今の、聞こえませんでした?ブンブンブンって」


「いや?何も聞こえんけど」


「ほらまた・・・車のエンジンみたいな」


「どっちから聞こえる?」


「左から」


「ちょっと反対向いてみ?どっちから聞こえる?」


「・・・こっち(と先程まで右だった方向を指差す)」


「それ、左耳がおかしいぞ。すぐ耳鼻科行っといでよ」


耳は疲れによって突発性難聴になったり、厄介な器官だ


「すみません、じゃあちょっと午後から行ってきます」


15時頃に戻ってきたM嬢にどうだったか訊くと


特に何か異物が入っていたわけでもなく、中耳炎などの症状も見られず


とりあえず血流改善の錠剤を貰ってきたとのこと


そういえば俺も昔、殴られすぎて耳が聞こえなくなったことがある(三途の公園)


彼女もすぐに改善すれば良いのだが・・・


そこにやってきた若手社員の宮里くん


「姐さん、耳に虫入ってなくて良かったですね」


「ホントだよ。前にアンタから聞いたリンチ、思い出したわよ」


「ああ、アーマン?」


宮里くんが中学・高校の頃、不良どもがやっていた喧嘩相手への"仕置き"のことだ


浜にいる大きめのヤドカリ(アーマン)を捕まえ、チャッカマンで貝殻のてっぺんを炙ると


熱くてヤドカリ本体が逃げ出てくる


それを相手の耳に潜らせる、というものだ


「でもまだまだ甘いよ。私の頃は真っ赤に炙ったドライバー、耳にぶっ刺して☆$%*〆\〒・・・」


なんか・・・一瞬でも貴女を心配した俺の思い遣りを返してほしい( ̄O ̄;)


※M嬢は元レディースの副長です

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