第166話 30センチ先
先日スナックで子供の頃の恐怖体験を披露していると
https://kakuyomu.jp/works/16816927861385549272/episodes/16817330669660544511
「あっ、僕も似たような事があって」と、常連客のFさん(32)が体験談を聞かせてくれた
似たような・・・どころではない話に、その場の全員が言葉を失った
小学4年生の頃、学校から2キロほど離れた土手にコンクリートのトンネルを見つけたFさん達は
改めて土曜日、学校帰りに仲間6人で探検に行ってみようという事になった
小4の子供が少し屈んで潜れるくらいのトンネルだったという
正直、Fさんを含めた仲間5人は行きたくなかった
だが、当時ガキ大将的存在だったBくんの「探検するぞ」の一声で
Fさん達は、半ば強制的に同行させられた
現地に着くとBくんが先頭を歩き、薄暗いトンネルに入っていく
ところがトンネルを数メートルも進むと真っ暗になり、辺りがよく見えない
足元も濡れて滑りやすくなってきた
そのうち耳元で、蚊なのか何なのか分からない羽虫がプンプン飛び回りだした
それでも暗闇に手を伸ばして進もうとしたBくんだったが
「うわっ蜘蛛の巣だらけ?!だめだ戻ろ!!」全員入口へと引き返す
「懐中電灯持ってこないとダメだ。また出直そう」頭や体をはらいながらBくんが言う
で、改めて翌週の土曜日にリベンジすることになり、その日はそれで解散したのだが
Fさんたち5人は、そんな不気味で汚いところに2度と行きたくなかった
各々が、土曜日は用事ができたことにして行けないと言うか、Bくん自身が約束を忘れてくれることを願った
月曜日になった
Bくんが学校に来ていない
翌火曜日もBくんは来なかった
担任の先生が険しい顔で、日曜からBくんが家に帰っていないことを皆に伝える
「誰か行き場所に心当たりはないか?あれば先生に教えてほしい」
Fさん達は、Bくんは1人であのトンネルに行ったのでは・・・と意見が一致した
もともと誘ったのはBくんだし、Fさん達5人は怒られ覚悟でトンネルのこと先生に話した
そして2日後
Bくんは、あのトンネルの奥を流れる下水路の底・・・15メートルほど先にある鉄柵に
汚物と絡まった状態で沈んでいるのが発見された
あの日「うわっ蜘蛛の巣だらけ?!」と引き返した、ほんの30センチ先から
何の仕切りもなく突然、深さ1メートルの下水路が横断して流れていたそうだ
そんな不用心なトンネルなど現在では考えられないが
子供の頃の探検の幾つかは、誰にとっても、死と背中合わせだった可能性がある。
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