第86話 密閉

前にさわりを載せた気がしないでもないのだが・・・


トンネル工事をしていると、たまにあるらしい


かたい岩盤を掘り進めていると、岩盤の中に空洞が見つかる事があるというのだ


その空洞には、祠があったり磨崖仏が彫られていたりするという


不思議な事にその空洞には、そこにつながる穴(道)が見当たらないそうだ


いったいどうやってこんな地中深く、通り道もないところに人工物を作れたのか


何万年も前のものではないし、最近、土砂崩れがあって閉じ込められたようなものでもない


更には何かを供えた形跡があったり、まだ生気を失っていない花が手向けられていたりすることがあるという


まるでつい最近、誰かが訪れたかのように。



お食事処&簡単な遊園地だったところを、裏山ごと買った開発業者が


山の一部を切り開きマンションを建てる目的で、1年前から造成を始めた


そしてトンネルほどの深部ではないが2箇所から、閉ざされた空洞が現れたために現在工事が中断しているのだという


空洞にはそれぞれ「中城(なかぐすく)高原ホテルの雷岩※」に似た岩があり


注連縄ようなもので二重三重に装飾され、明らかに何らかの目的で祀られたもののようだ


現在、埋蔵文化財の観点から行政と協議中だそうだ


岩を除けねば計画通りの延床面積を確保することは難しい


かと言って岩を除けて建てられたマンションだと噂が立てば、厄災を恐れてなかなか買い手がつかないだろう


今回の空洞にも外に通じる道らしきものが全く見当たらないのに、岩の周りには大量の10円玉・5円玉・1円玉が散らばっているという


※ 中城(なかぐすく)高原ホテル

1972年の沖縄の本土復帰前後に数ヶ月だけ営業されていた。

本土復帰と同時に中城城跡(世界遺産)周辺の景観に手を加えてはならないことになり、同ホテルも最終完成に至らず営業断念。

約50年間、廃虚のまま残されていたが2022年に解体が完了した。

雷岩と呼ばれる霊石が、ホテル内の不自然な場所に残された。

子どもたちや米兵の霊が集まる、という心霊スポットとして知られた。

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