第68話 相手

イシくん(38)「前の車・・・いまそこのホテルから出てきた。見ました?」


俺「いや?」


「助手席の女の子が、じわ〜っと消えていったの見ませんでした?笑」


「いや見てなかった。消えたとは?」


「ゆっくりシート倒したんだと思います」


「見られたくないから?」


「一瞬だったけど何処かで見た気がするんだよなぁ・・・」


「おっ!何処の子だぁ?笑」


そうこうしているとその車、左手に現れたコンビニに入っていく


続けてイシくんもコンビニに入る


「何してんの笑」


「だって気になるじゃないですか」


「お前なぁー笑」


その車とは数台離れたスペースに車を停めたイシくん


向こうの車の運転席から丸っこい40代男性が降りてきた


が、助手席からは誰も降りてこない・・・というかシートを倒しているから誰も居ないように見える


「なんか要ります?」


「ん〜じゃあブラック。何でもええわ」


イシくんが車を降り、その車に近付いていく


かなり不自然に助手席に近付いたイシくん、「あっ」という顔で一度離れたあと、再度覗きこむ


そのあとコンビニに入って行った


先に例の車の男性が戻ってきて車に乗り込む


寝転んでいる?助手席の誰かに笑顔で話し掛けながらコンビニ袋を渡している


その後エンジンが掛かり、車はコンビニを出て行った


それを横目に見ながらイシくんが戻ってきた


「どうやったん?」


「すみません、勘違いでした。助手席、アニメの水着の女の子の全身シートカバーでした」


「えっ?でもなんか笑顔で話し掛けてたで?」


「そうなんすよねー」


「そうなんすよねー、とは?」


「だってさっきのホテルもラブホだったじゃないですか」

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