第110話 事件現場

Kさん(23)と友人が、訪れていた某ライブハウスで休憩に入ったためトイレに向かった


このライブハウスのトイレの個室は、入っているのかいないのか押して確認しなければならない、古めかしい作りだ


だがどうやら運良く1番2番でトイレに入ってきたようで、Kさんが個室のドアを押すとギィィと開いた


とそこに、横から白いワンピースを着た黒髪の女性がスッと割り込み、個室に入ってしまった


Kさん「えっ、ちょっと?!」

友人「なに今の?!」


だが後ろから次々と人が入ってきて、すぐに行列ができる


文句を言う暇もなくKさんは、そのトイレの前に立って待つことにしたが、友人は「ごめんねお先に」と隣の個室に入っていった


それから数分経ったが、割り込んだ女性が一向にトイレから出てこない


その場面を見ていない後列の女性たちが、何の気配もないKさん前の個室を訝り始めた


「ホントに入ってるの?」背後からヒソヒソ声が聞こえてくる


その少し前に隣の個室から出てきた友人から"えっ、まだ並んでるの?"みたいな顔をされる


痺れを切らした後列の1人が「そのトイレ、入ってるんですか?」とKさんに声を掛けてきた


仕方なくKさんはコンコンとトイレを叩く


だが反応がない

Kさんは扉を押してみる


ギィィ・・・

えっ?開いた??


誰も居ない


えっ?

ええっ??


パニックになりかけたKさんだったが、背後の冷たい視線もあり、すぐ個室に入った


確かに白い服の女性が割り込んでトイレに入り、それは友人も見ていた


いったい何処に消えたというのか・・・


そこで気付いたのだがトイレ内には、排泄後の臭いとは違う別の異臭が漂っている


放置した生ゴミというか腐敗臭というのか


個室をキョロキョロと見渡しながらKさんは


座った洋式便器から何かが出てこないだろうかとビクビクしながら、急ぎ用を済ませる


トイレの外で待っていた友人に、割り込んで個室に入った女性が消えたことを伝えると


「えっ?入って行ったよ白いワンピースの人?いないの??何で??」


やはりKさんの見間違いではなかった


このライブハウスは6年前に『胎児産み落とし事件』があり改装されたにも関わらず


肝心のトイレは、何故かそのまま残されたという。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る