第43話 401号室

月曜22時、マンションに戻ってきた。


先ほどまで釣り客用コンドミニアムの掃除・ベッドメイクをした後、部屋で軽く飲むつもりが


ベランダで海を見ていると、いつの間にか泡盛ボトルが空いてしまった


いい感じの酔いでタクシーから降りる


ふと見上げると、マンションの自室に灯りが付いている


今見ている側からは全部で10室ほど確認できるのだが、灯りが付いているのは俺の部屋だけだ


えっ?

まさか消し忘れたか?


下から階を数える


いち、にー、さん・・・

301、う〜ん俺の部屋だよな・・・


几帳面なつもりだが消し忘れなんてするだろうか・・・?


と次の瞬間、窓際カーテン越しにショートボブの女性が立った


うわ!

だ、だれやねん?!


その女性はどうやら眼下のこちら(通り)を眺めている


が、次の瞬間、身を引いたようにスッと姿が消え、次いで部屋の明かりが消えて真っ暗になる


俺が見上げている側のマンションの一面は、全て真っ暗な壁になった


いやいや怖い怖い!!(ll゚д゚)


すぐさま上の娘、下の娘に立て続けに電話


「今もしかして父さんの部屋にいる?!」


ところが2人とも今は自宅に居て、今日は俺の部屋には来ていないという


娘「だれ連れこんだの?笑」


いやいやいや・・・


部屋に戻るのが怖い

合鍵は娘にしか渡していない


部屋の見間違いか?

あれこれ考えながら玄関ロビーに入ろうとして


ガン!!

痛った!!


『マンション公開中 17時まで』と書かれた看板にぶつかる


空き部屋が出来たのか?

いやそれよりも今は自分の部屋だよ


正面玄関の左手には資材が積んであるのか、ブルーシートをかけた山がある


エレベーターに乗り、3階に到着


部屋の前まで来た


う〜ん・・・

開けるのが怖い・・・


がちゃ。

ぎぃぃぃ・・・


部屋に入り、玄関の照明を付ける


身構えながら一部屋一部屋、順番に灯りを付けて確認していく


風呂場・トイレも覗くが、誰もいない


部屋全てを煌々とさせたままベランダに出る


スマホのライトで照らしてみるが、植込みの隅にも人気はない


収納棚やら何やら、人が隠れそうな空間は全て確認したが、誰もいなかった


娘2人からも『どうだった?』とLINEが来たので「誰も居ないわ」と返す


『そういえば一階にパン屋さんができるらしいよ』下の娘から続けてLINEがきた


あ~、あのエントランス横のブルーシートは内装工事の資材か何かだったのか


結局その夜は、電気を消すと不気味なので全室灯りをつけたまま就寝した


翌朝、特段何事もなく目が覚める

昨夜のあれは俺の見間違いだったか・・・


あっそういえば一階にパン屋ができるとか言ってたな


部屋を出て一階ロビーに降りると、確かにパン屋が入るらしく工事中のようだ・・・ん?


この部屋、昨夜外から見た壁側だ・・・あれ?


玄関を出る

マンションの壁を見る


パン屋に改装中の部屋の外には、埃が舞わぬよう立板が敷き詰められ、窓が隠れている


あ!

そういうことか?


玄関を出て、昨日タクシーを降りた辺りまで歩いて行き、マンションを振り返ってみる


あ~なるほど1階がない

ないというか立板によって隠され、無いように見える


いち、にー、さん・・・


昨晩、暗い壁を見上げた際に俺は、酔っていたこともあって2階から数えたのか


だとしたら昨日のあれは4階?


・・・の?

奥さんか誰かが立っていたってこと?


なんだそれ、しょーもな笑


しょーもなさ過ぎて苦笑いしながら玄関ロビーに戻ってきた


『マンション公開中 17時まで』

あ、これ昨日ぶつかった看板だ・・・どの部屋が公開中なんだ?


401?

なんやウチの上やないか


看板の下に『月曜は公開しておりません』と注釈がある


ウチの上・・・

17時まで・・・

月曜は公開していない・・・

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