第185話 シンクロ
急に古い記憶が甦り、連鎖してあれやこれやと懐かしく思い出す時
実は我が身に危険が迫っているサインかも知れない
夜20時。
客先での打合せを終え、帰路に着いたNさん(55)
夜の県道をのんびり走らせながら、子供のころ基地にしていた裏山の洞窟を思い出していた
ある日クラスの仲間と洞窟でキャンプしようってことになって
お互いの親には友達の家に泊まるとか言って、一晩過ごしたんだよなぁ・・・
だけどあれ、実は防空壕の跡で、山の地形が変わるほど爆撃を受けて沢山の人が亡くなったんよね・・・
更に身体じゅう血だらけの3姉妹の幽霊が出るという噂を聞いてからは、2度と行かなくなったなぁ・・・
戦争か・・・
戦争なあ・・・
ピンとこないけど、俺が生きてるうちに、どうなんだろ?
起こるかね・・・
まあその時はその時で、臨機応
ドオオオオン!!!
ズガガガガガガーーーガンッ!
ガンッ!ゴンッ!
ガランガラン・・・ガラン
・・・気がつくと薄暗い中、青空を見上げている
その青空を、超低空飛行の旅客機?が飛んでいく
ぶるるるるるるる〜〜〜
爆音を発しながら飛び去るあれは、プロペラ機か?
「大丈夫。ここは見つからないから」
真横で若い女性の声がする
"えっ?"
どうやら数人に囲まれているみたいだ
そしていまさら気が付いたが、体がフワフワ浮いている
時折り耳元でピチャッ、パシャッという音がする
「もう少し我慢してね」
「大丈夫よ」
別の女性たちの声がする
あっ、自分はどうやら水面に浮かんでいるらしい
浮かんでいる自分の側で3人の女性が立っている
見上げている空は明るいのに周囲は真っ暗だ・・・あ、ここは森の中?池?
ぶるるるるるるる〜〜〜
また大きなプロペラ音を響かせ、上空を飛行機が飛ぶ
と、飛行機の胴体の真ん中から何かが分離した
音もなくこちらに落ちてくる
あ・・・
ぶつかる・・・
その瞬間、カッ!!と目の前が明るくなり、凄まじい爆風で体が宙を舞う・・・
腹部が猛烈に痛い
意識が朦朧としている分、耐えているが、おそらく相当のダメージを受けているのだろう
「大丈夫ですか?!聞こえますか!!」
ぼんやり目を開くと、鉄のフレーム越しにこちらを覗き込むオレンジ色の人たち
「もう大丈夫ですよ!!」
Nさんは微かに頷くと、また意識が遠のいた
前方不注意で起こした単独事故
ガードレールを突き破り、腹部に刺さった鉄パイプで内蔵を激しく損傷
それでもなんとか生還した
死の直前に人生がフラッシュバックするというが
「あれは俺の記憶じゃない。あの森で実際に起こったことだよ」
話すNさんの手が震える
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