第184話 謎の家
知り合いの警察関係者に聞かせてもらった事件
いや事件かどうかも、未だ不明だという
早朝ランニング中の男性が、コース途中にある戸建ての道の前に
茶色い人のようなものが横たわっているのに気付き、ギョッとして立ち止まる
その物体の周りには黒い液体が水溜りのように拡がっていて
家の門の中からその物体まで、ポタポタと何かが滴り落ちたような跡が付いている
男性が恐る恐る近付こうとして、耐えられないほどの異臭が漂ってきた
男性はすぐさま110番通報する
警察が到着し、早朝6時の住宅街は一気に騒がしくなった
その家には半年ほど、4人家族が住んでいた"らしい"が、いつの間にか生活感が消えていたという
何故かその家の前後左右が空き家になっていて
ご近所付き合いもなく、近隣の住人も「らしい」としか答えようがなかった
道に落ちていたのは150センチほどの木製の如来像で
どうやら家から運び出す途中で道に落としたようだ
中が空洞の如来像に入っていた液体が、割れて流れたらしい
そしてその液体はどうやら、人の血液だという
更には如来像の内側には人の皮膚組織らしきものが貼られ
像の底から、これも人の内臓と思われるものが数人分、出てきたという
像の頭部には蓋がついていて
その後の調べで血や内臓物は、定期的に入れ替えたり継ぎ足されたかのような形跡があったという
凄まじい異臭はそれが原因だった
住んでいたのは40代夫婦と男の子・女の子らしかったが
仕事に行く様子もなく
買い物に出掛ける風でもなく
学校に通うでもなく
気付けば気配が無くなっていたという
その土地・建物の所有者は他県に住む90代の男性だそうで
まともに会話ができないほど、認知症が進行しているという
その後の警察の捜査では偽装家族の疑いがあるとのことだが
仏像の中身が誰のもので、誰が運び出そうとしたのか
家族が誰で、何処に消えたのか
何一つ解明できていないという
これが宮部みゆき作品なら明確なラストがあるのだが・・・
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