第157話 ベランダ
マンションの6階に住む一人暮らしのUさん(31・女性)
つい先日の話
マンションの外部ポストに無記名の封筒が入っているのを発見し
部屋に持ち帰り開封してみると二つ折のA5用紙が入っていて、そこには
『虐待はよくないですよ。世間の目はいつも見ています』
そう印字されていた
はあ?
誰かと間違えてない?
その2日後、マンションの管理人から電話が掛かってきた
『すみませんUさん、つかぬことをお伺いするのですが、いまそちらにお住まいはUさんだけですよね?』
「はい?そうですが」
『あの〜、小学生くらいの男の子は居られませんよね?』
「わたし1人住まいですが?」
『あっそうですよね、いや確認して欲しいと他の・・・いやあの、失礼しました』
電話が切れる
何それ?
完全に誰かと間違われてる?
まあいいわ、管理人さんから誰かさんに伝えてくれるでしょ。
その翌日。
ポストにまた無記名の封筒が入っているので、その場で開封して確認してみた
『忠告を無視するなら警察に連絡します』
そう二つ折用紙に印字されている
さすがに頭にきたUさん、その足で管理人室に向かう
「あっUさん、お疲れ様です」
「すみませんこれ見てくれます?」
Uさんは60代の男性管理人にその手紙を見せる
「それ2回目なんです。最初のは虐待がどうとか。昨日管理人さんからも電話戴いたじゃないですか。誰がこんなことしてるんですか?何だって言うのですか?」
「あっ、これは、手紙はちょっと存じ上げないのですが、あの〜・・・こちらの住人の方から数名、ご連絡戴きまして」
「どんな連絡ですか?」
「それが、Uさんのお部屋と思われるベランダに、夜、男の子が出されていると」
「はあぁ?わたし独身ですけど笑」
「いや、あの〜皆さんが言うには、この熱帯夜に子供がベランダに出されているのは異常だと・・・」
「それ完全に部屋を間違えてますよ!ちょっと来てくださいよ」
Uさんは管理人と連れ立ってマンションの表面に出た
振り返ってマンションを見上げる
「私の部屋、あの緑の大きなプランターのある部屋の右隣ですよ?」
「あっそうですよね。そうなんですよね・・・」
「あの部屋だって言ってるんですか?」
「ん〜夜だし、皆さんの見間違えなんでしょうか・・・」
「管理人さんは見てないのですか?」
「あっ私が見た時は、はい。何も異常は、はい」
Uさんは管理人に、警察に届けるからマンションの誰と誰が言ってきたのか教えてくれと迫った
渋っていた管理人だったが、3名の部屋番号を教えてもらう
管理人と共にそれぞれの部屋に赴いたUさんは
できるだけ穏やかに自分には身に覚えがないことを説明し、男の子を見た時の状況を聞かせてもらった
話を総合するとそれぞれ別日、直近5日間に渡り
Uさんの部屋のベランダに小学校高学年くらいの男の子が立っていて
泣いているような仕草で右往左往していたという
目撃時刻は19時から21時の間らしい
間違いなくそれはUさんの部屋だったようだ
だからそれが向かいのマンションあたりからも見えていて、誰かが手紙をよこしたのではないか、という推測を逆に言われた
その時刻にはUさんも部屋に帰って電気を付けていたが、特に何も異変を感じなかった
ところが、聞き込みをした日を境に男の子は目撃されなくなったようだ
手紙も来なくなった
Uさん「ただそれ以来、怖くてベランダに出られなくなりました・・・笑」
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