第129話 裏の顔
Oくん(23・協業の営業マン)「僕が中2の時、隣の教室で蛇が出た!って騒ぎになったんですよ」
「蛇?」
「はい。それが真っ赤な奴らしくて。絶対毒蛇だから気を付けるようにって校内放送も流れたんです」
「真っ赤な蛇なんているのかなぁ?」
「そうしたら休み時間に女子トイレに蛇がいる!って騒ぎになって。僕らちょうど通り掛かったところだったから、友達と数人で『俺らが捕まえてやる!』ってトイレに乗り込んだんです」
そしてOくんたちはトイレ個室の隅にいた赤い蛇(※)を発見し、掃除用のモップでバンバン叩いたところ、グッタリしたので捕まえたそうだ
「まあ残酷っちゃ残酷なんですけど、校内放送まで流れてたし、ちょっとしたヒーロー気取りで。グッタリした赤い蛇をバケツに入れてフタをして、『捕まえた!捕まえた!』って廊下歩いてたんです。そうしたら突然『やめろ!』ってバケツ突き飛ばしてきた奴がいて」
「えっ?」
「それがEって奴で。いつも1人でいるような暗い奴ですよ。そいつがいきなりバケツ突き飛ばしてきたんです」
「えっ、なんで?」
「『それ俺の蛇!』って。『返せ!』って」
「どういうこと?学校で飼ってたってこと?」
「じゃなくてそいつ、家で飼ってた蛇を学校に持って来て、女子の机に入れて驚かそうとしたらしくて」
「はぁぁ?」
「意味分からないでしょ?もちろんEは怒られたけど、僕らも『男子が女子トイレ入るな!』って怒られて笑」
「とばっちりやな」
「まあそんなことがあって。で、この前、中学時代の友人が『このYouTube見てみ?』ってURL送ってきて。それ見たんですよ」
海外訪問系YouTuberというのかな?
男性が、アフリカの水不足で苦しむ貧しい村を訪れ
そこで農業支援活動を行う、海外協力隊の青年に密着取材している内容だったそうだ
その村では今まで、ほぼ不可能だった耕作が、雨季・乾期問わず可能になったという
村人からは、画期的な貯水システムを作ってくれた協力隊に感謝しかない、と持て囃されているみたいだ
その中心となる青年に、YouTuberがインタビューしている
「子供のころはどんな少年だったのですか?」
「う〜んまあ、小・中は正直、引きこもってましたね。なんていうか、皆に良かれと思ってやったことが理解されなかったり。環境というか、当時は友達にも恵まれなかったですし。もちろん、自分のせいでもありますけど笑」
Oくん「そのインタビュー受けてる男、Eだったんですよ。苗字は変わってたけど。自分を棚に上げて言いたいこと言ってて。村では崇められてるらしいけど、本当に純粋な心で協力隊やってるんだろうか?って」
Eさんは大人になり、経験を経て成長したのかも知れないが
子供の頃の異常性というものは、大人になってそう簡単に解消されるものだろうか?
大なり小なり、誰にでもあることだが。
※コーンスネークのブラッドレッドという品種だったそうです
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます