第56話 そして消えた
客先に、評判の悪い52歳の営業部長がいた
何故評判が悪かったのかというと、彼にはあまり良くない癖(へき)があって
住所を知り得た女性について、グーグルアースのストリートビューで家までのルートを探るらしいのだ
更には相手先の家の周辺までストリートビューで調べ上げ
斜向かいには青い屋根の一軒家があって左手角には駐車場があって・・・みたいなことを情報収集するのだという
「◯◯さんのマンションの近くにスーパーあるでしょ?あそこ僕もたまに寄るんだよ」
そんな事を当の本人(女性)に言ってくるそうだ
言われたほうは気味が悪い
流石に会社でも問題になり注意もされたらしいが
それでもグーグルアースで相手の家を探る癖は治らなかったようで
1カ月ほど前、関係先の受付女性の住所を知り得たその部長
同僚に「◯◯社の受付のFさんって今風な女性だが、家は意外と山あいにあって近くにコンビニもない田舎」だと話していたらしい
ところが1週間後
その同僚に「黒いオバーが俺を捕まえにくる」と電話があり、会社に来なくなったという
連絡も取れなくなったため、人事部の社員が彼の住むマンションを訪れたが
物音ひとつしないので家族に連絡をとり消防署にも連絡をとり
救急隊が部屋の鍵を開け中に入ると部屋は無人
だが室内にはつい先程まで生活していたかのような痕跡があり、スマホも無造作に置かれたまま
奥の寝室では、ストリートビューをプリントアウトして綴じたアルバムが多数みつかり
それぞれに、特定の女性の自宅近辺の画像が綴じられていたそうだ
そして十数枚、綴じられずテーブルに積んであった画像に「F自宅」と付箋が貼ってあり
どうやらそれが「◯◯社の受付のFさん家」らしかったが
そこにはボロボロの民家が写っており、その門扉の前に背を向けた老婆らしき黒い人物が立っていて
次の一枚、次の一枚とめくるたびに
背景は変わらないのに、徐々に老婆がこちらに振り向き、だんだんと近付いてくる連続写真のようになっていたという
その後、部長の捜索願いが出され、警察の調べるところとなったが
◯◯社には受付がなく、Fさんという受付嬢も在籍していなかったそうだ
ただ、古い社歴を誇るその会社は移転した新社屋であり
旧社屋時代には受付があり、Fさんという女性も在籍していたらしいという
また、部屋にあった部長のスマホのメモに残っていたFさん家と思しき番地には
そもそもグーグル調査チームも入れないであろう、山原(やんばる)の深い森があるだけだった
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