第92話 時空

調理師専門学校に通う真奈美さん(18)は、市の職員をされている父親と2人暮らしだ


2023年12月19日(火)15時。


父親から真奈美さん(18)にLINEが届く


父『怒涛の6連勤が終わりました。お弁当は冷蔵庫。食べる前に少し出しといたほうがいいと思う。だし巻きの店のやつ。父さんは19時半に出ます。◯◯ちゃん(犬)宜しく』


真奈美『それ昨日の話でしょ笑』


父『明日から名古屋に研修です』


真『えっ?それ1週間前だよね?笑』


父『そういえばロシアがウクライナに攻め込んだらしいよ(,,゚Д゚)』


真『さっきからなに?過去にさかのぼってるってこと?』


父『父さんは大丈夫だったけど、2人は?』


真『なにが?』


父『あ、ちょっとダメだ。やっぱり』


真『な・に・が?笑』


父『○○神社は気を付けないと』


真『こわいよ〜どこそれ?LINE乗っ取られたの?笑』


父『あっ休憩おわるから』


やりとりはそこで終わった


普段、父はふざけるキャラではないし、小さいころから怖がりの真奈美さんには一切、そんなことをしない


少し心配になったので『今日は何時に帰る?』とLINEを入れると


『21時ごろかな?』普通に返事が返ってきた


その日の夕方、父は予定通り21時に帰宅した


「ねえ、あのLINEなんだったの?」


「あ~・・・時空でも歪んだかな?ボーっと打ってたからよくわからん笑」


「なにそれ」


そのまま父は風呂に行ってしまった



新年が明けた


真奈美さんは友人に誘われ初詣に来ていたが、あの能登の地震の影響で境内は大きく揺れ、灯篭が倒れ


それを避けた際に転けて捻挫した


「それが、その◯◯神社です」


俺は今、アテンドしている真奈美さんのスマホから、12月19日のやり取りを見せてもらっている


「ええっ!こんなことってある?!・・・お父様は何て仰ってるの?」


真奈美さんの父親はその日(12月19日)、某市博物館の展示場がリニューアルされるため、年表や事件簿のコーナーを整理していた


休憩に入り、ベンチでボーっとしながら "あ、そういえば・・・" と、真奈美さんに伝言を入れたのだという


「ただ、内容については自分でも入れた覚えがないって驚いてました」



過去の資料を整理するうち、まだ存在しないはずの未来の資料を見たのだろうか。

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