第24話 林間学校

先祖の墓は兵庫県氷上(ひかみ)郡、現在の丹波市にある


かなり山奥にあるため、レンタカーは4駆のSUVにした


約1時間かけ、不義理な子孫は久々に田舎の地を訪れた


土地は15年前に売り、今は普通に住宅が建ち並んでいる


・・・はずなのだが、広範囲に山が削られているため、全く地理感が掴めない


まあ、他人の家を眺めても仕様がないのだが。


朝から寺に挨拶を済ませ、墓を掃除して、気がつけば午後3時。


そろそろ帰り支度をせねば、夕食前のひとっ風呂が浴びられない


しかし折角ここまで来たついでに、1箇所寄りたい所があった


丹波少年自然の家。


小5・小6の2回、林間学校で宿泊した場所だ


小5の時に新築だったから、もう43年も経つのだなぁ


なぜ新築だったと憶えているかというと・・・まあ、それがイコール寄りたくなった理由でもあるのだが。


林間学校あるある。

消灯後の怪談。



・・・レクリエーションが終わり部屋割り表が出され、夕飯まで待機と告げられた


「ちなみに部屋には電気のスイッチ無いからな。時間になったら強制消灯だからな」


部屋に入ると2段ベッドがあり、誰が上だ誰が下だと揉めていると


「おい、外見てみろや」誰かが窓を指差す


まだ夕暮れ時ではあったが森の中だ、窓の外では鬱蒼と木々が生い茂っている


「これ、真っ暗になって外見たらめっちゃ怖いやろな」



確かにこれは怖い!って大騒ぎになったんだよなぁ・・・


そこまでを何となく回想しながら、車に乗りナビ検索する


自然の家は、今居る墓から更に15分くらい奥だ


寄り道する時間はあるな・・・


というわけで、更に山奥に車を走らせると、そのうち左手の道に曲がるよう、ナビから指示が出された


数分山奥に入って行くと、丹波少年自然の家に着く


ああ、こんなところだったのかぁ〜結構広いな!


ほう・・・一般向けのログハウスもあるらしい


敷地の中には入れないが、俺らが泊まった建物はおそらくアレだな・・・道から目星をつける



あの日、夕食後に夜の部のレクリエーションがあり


それが終わるとクラスごとに風呂に入り


後は消灯の21時だか22時まで、部屋で自由時間になった


そのうち隣の部屋の奴らがやってきて


「なあ、お前らの部屋、誰か外に出てる?」と聞いてきた


「えっ?皆部屋におるで?」


「じゃあ他の部屋かな・・・」


「何?どうしたん?」


「いや、外を歩いてる生徒を見たって。こいつが」


こいつが、と言われたA君は、クラスでもおとなしめの男子だ


皆を怖がらせようと演出するような子ではない


「えっ、どこで見たん?」


A「・・・僕らの部屋の、その窓の外。歩いて横切って、こっちの部屋に来たから・・・」


「怖いこと言うなよぉ。じゃあ隣の部屋ちゃうか?」


我々は先の部屋の奴らと一緒に、更に隣の部屋に向かう


「なあ、お前らの部屋、誰か外に出てる?」


さっき我々が聞かれた質問を、その部屋の奴らに投げかける


「えっ?皆いるで?」


これをあと3部屋、端まで繰り返していった結果


全員部屋にいた


Aくんは「嘘とちがうよ、嘘ついてないよ?!」と青ざめているが


我々も全員、鳥肌が立っている


そうしてクラス30人ほどの男子が、端の部屋と廊下でたむろしていると、学年主任の教師がやってきた


「何だ?お前ら何してる?」


誰か説明しろよ・・・と顔を見合わせているとその教師が


「お前ら今、居ない奴いるか?」と聞いてきた


「えっ?ウチのクラスの男子ここに全員いますよ?やっぱり誰か、出てるんですか?!」


「やっぱり出てるってどういう事や?」


皆、堰を切ったように一斉に説明を始める


「いや・・・生徒が外に出てないかと問い合わせがあったんやけどな・・・出てないなら良い。ほら、もうすぐ消灯やからお前ら部屋に戻れ!」


それから10分も経たず、部屋は矯正消灯された


「うっわ!こわぁ・・・」


「外歩いてるやつ、見つかったんやろか・・・」


その夜、少なくとも我々のクラスの男子は皆、窓の外が気になり過ぎて眠れなかった


トイレに行きたくとも、部屋を出て暗い廊下を歩くのが怖くて命懸けだった記憶がある


翌朝の全クラス集会では


光った目を見た!とか

四足歩行で山に消えた!とか


「さまよう少年」の話で持ちきりだった


あれはいったい何やったんかな。

意外と、盛り上げたい教師側の演出だったとか?


まさかなぁ(´皿`)

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