第31話 実家にて
同い年で親友のJ社長
その社長の部下のI課長(49)
先日、御両親から「いずれ私たちが死んだ時の事を話しておきたいから家に寄って欲しい」
そう言われて土曜日、実家に戻った時の話
Iくんの父親は86、母親は83。
父母それぞれの生命保険はこれ
家の権利書はこれ
死んだら入れて欲しいものはこれ
・・・etc
うんうん分かった、まだ先の話として承ったから、と
すぐ帰るのも素気ないので、その晩は実家に泊まることにした
翌、日曜の朝
Iくんは6時から目が覚めていたので、1階リビングでテレビを観ていた
7時半、リビング横の階段から父親が降りてきた
「早いなお前」
10分ほどのち母親も降りてきてリビングを覗く
「パンでも焼こうか?」
「あ、食べる」
母親がダイニングに消える
「あの子に引き継いだら何だかホッとして疲れた〜」
「ふふ、日曜だし後で2度寝すればいいさー」
カチャカチャと食器の触れる音と共に父母の会話が聞こえてくる
まだまだ2人、元気そうだな・・・
ぼんやりそんな事を考えながら何気に、リビングの開け放したままの入口に目をやると
まさに今しがた階段から降りてきてリビングを覗き込んだ、といったテイで
寝巻き姿の母親がじっとこちらを見ている
えっ?
奥のダイニングではまだ2人の会話が聞こえている
「ええっ?!」
2回目は声に出して母親に言う
すると母親は
まるで後ろから強引に引っ張られたかのように姿を消した
呆然とリビング入口を見つめたままのIくん
そこに「ブレクファスト〜」と言いながら、パンやサラダの乗ったお盆を持った"部屋着姿"の母親が入ってきた
「ん?どうしたの〜?」
「いや何でも・・・」
J社長「俺、『寝惚けてたんだろ〜』としか言わなかったけどさ」
それを俺の横で聞いていた宮里くんが難しい顔をしている
J「なんだミヤ〜ン、何かあるの?」
「いえ・・・」
俺「何やねん言えよ」
「ん〜あの〜、Iさんのオカァ(母親)後ろから強引に引っ張られたように消えたって・・・」
J「そうだけど、どうした?」
「出番間違えたんじゃないですか・・・」
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