第六話 赤白鳥の奏鳴(6)
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数的不利を抱えたことで守備意識は図らずも上がるが、今日に限っては怪我の
この試合、唯一の決定機を生み出した
そして、ゲームは誰もが想像出来なかった形で、再び大きく動く。
出来ることと出来ないことを見極め、自分の願望を殺してでも、チームのためにベストな選択をする知性。それを
その時、天馬が選んだプレーは、チームのため以外の何物でもなかった。ところが、そんな天馬の自己犠牲が、最悪のシーンを生む。
キックオフ直後こそ決定機を作ったものの、それ以降、エースのクラウディウスは
クラウディウスはラフプレーでレッドスワンのキープレイヤーを二人、負傷退場に追いやっている。接触プレーに対する負い目があるからか、最前線の中央で力を発揮するプレイヤーなのに、伊織の圧力に負け、いつの間にかペナルティエリアの外へと追いやられていた。
積もりに積もったフラストレーションを発散でもするかのように、クラウディウスはゴール左からミドルシュートのモーションに入る。
いち早く気付いたのは、サイドの守備に走っていた天馬だった。
天馬は中央へ切り返すと、シュートコースを消すためにスライディングを試みる。
クラウディウスのシュートは早かった。スライディングは完全に間に合っていない。
しかし、次の瞬間、予期せぬ光景が生まれる。
シュートがゴールマウスを大きく外して蹴られたために、遅れてスライディングに入った天馬の
冗談みたいにボールが宙に浮き、ニアサイドでシュートに備えていた
咄嗟に後ろにステップを踏み、央二朗は手を伸ばしたが、彼のリーチでは届かない逆サイドへとボールは吸い込まれていく。
まるで覚めない悪夢でも見ているような、そんな軌道だった。
アディショナルタイムに突入する直前、後半四十四分。
最悪の形で先制点が生まれる。
天馬が触っていなければ、シュートはゴールマウスから大きく外れていた。
得点者は
僕らはオウンゴールによって、翔督にリードを許してしまったのだ。
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