第一話 年満月の月天心
第一話 年満月の月天心(1)ー1
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十二月一日、火曜日。
「先生。俺、昨日の話、マジで考えてみようと思ってる」
「そっか。私も悪い話じゃないと思うよ。ただ、
副キャプテンを務める鬼武慎之介は、五十人以上が入部した学年にあってナンバーワンの実力を誇り、一年生の夏からレギュラー
「昨日の話? マスコミに何か言われたのか?」
手鏡で自分を見つめながら
葉月先輩は鬼武先輩に勝るとも劣らない実力者だが、病的なほどにナルシストである。世界中の誰よりも自分が大好きという、真性の痛い人間ではあるものの、貴重なレフティであり、緩急自在なドリブル、正確な長短のキックと、多くの武器を持つ左SBだ。
「慎之介に東京の大学から推薦の
「へー。そりゃ、良いな。ティーチャー、俺に
「今のところは慎之介だけだよ」
インターハイ予選で
高校選手権に全力を尽くすなら、受験勉強を犠牲にすることは避けられない。
スポーツ推薦で入学した葉月先輩は、赤点追試組の常連であり、僕らの学年の問題児、あの三馬鹿トリオに匹敵するほど学力は低いらしい。部に残るかどうかを聞かれた時も、
『俺に努力と勉強は似合わない。サッカーで
などと宣言していた。
「正直、俺は浪人を覚悟していた」
鬼武先輩が
「レッドスワンを守って夢の舞台に立てるなら、浪人なんて犠牲でも何でもない。そう思ってたんだけどな。こうやって推薦がもらえたのは、先生と仲間のお陰だ。感謝してる」
新生レッドスワンが立ち上がった時、実績を持たない世怜奈先生の監督就任に誰よりも
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