第一話 赤白鳥の絶命
第一話 赤白鳥の絶命(1)
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私立
赤羽高校は二学期制を採用しており、短い秋休みがある代わりに、夏休みは八月の後半に終わってしまう。平常授業は選手権予選の数日前から再開されていた。
「
お昼休み、クラスメイトの
「もう
「大会が近いから、うちは昨日も練習があったの。夕方に顧問の先生が話していたよ」
真扶由さんが所属する吹奏楽部も、赤羽高校が力を入れている部活動の一つである。音楽室が第一グラウンドに面する校舎の四階にあるため、彼女たちの演奏は練習中のBGMだ。
「一年生は成績上位者をサッカー部が独占しているでしょ。二年生も文系の一位がサッカー部らしいし、何でこんなに両極端なんだって、うちの顧問も嘆いていたよ」
圭士朗さんは一般入試以来、常に首席の地位をキープしている俊才だ。シャープな眼鏡の下にいつも涼しげな眼差しが覗いており、理知的という言葉がよく似合う。アレルギー性
常に冷静さを失わない性格
「二年生もトップってサッカー部だったんだ。圭士朗さん、誰のことか分かる?」
「
それはベンチにも入ったことがない先輩だった。プレーの印象もほとんど思い出せない。
一年生の成績上位者は入学以来、上から圭士朗さん、
「圭士朗さんや優雅君は何か特別な勉強をしてる? サッカー部ってテスト前も部活が休みにならないよね。毎日、あんなに遅くまで練習しているのに、いつ勉強しているの?」
部員には塾に通う時間なんてないし、僕ら三人は誰も特別なことはしていない気がする。
「前にうちに集まったことがあったけど、結局、映画を観ちゃって意味なかったよね」
「それは伊織のせいだろ。あいつは人が集まると必ずDVDを持ってくるからな」
「男子って面白いね。それであの成績なんだもんな。羨ましいよ」
ゴールデンウィークの合宿で、夜に一年生で集まって映画を観た後、物語の流れから好きな女子の話になったことがある。僕や伊織は初恋というものをまだ経験していない。女子に告白される機会は小学生の頃から何度かあったが、恋愛なる
一方、圭士朗さんは
恋愛感情を心の異変と理解していた僕にとって、常に冷静な彼が誰かに想いを寄せているという事実は、単純に驚きだった。真扶由さんを前にしても、圭士朗さんの態度が変わる瞬間を見たことがなかったからだ。
「……そうだ。監督も倒れたんでしょ? 容体も心配だけど、部員の皆も残念だよね。名物監督に教えてもらいたくて、赤羽高校に入学して来る生徒もいるって聞いたことがある」
「監督に
圭士朗さんの回答は含みのあるものだった。
「ベンチ外の人間が言っても説得力がないけど、俺は監督の指導法に疑問を感じることがあった。むしろチームが変わるきっかけになったら良いって思ってる」
「そんなこと考えてたんだ。初耳だよ」
「優雅は練習メニューに疑問を感じたことがないのか?」
「言われたことを忠実にやっていただけだしね。そんなこと考えたこともなかった」
圭士朗さんは他の同級生とは質の違う知性を持っている。興味深い話でもあるし、今度、もう少し掘り下げて聞いてみよう。
「サッカー部、活動は問題なく続けられるの?」
「正式な処分は今日の放課後に決まるみたい。視聴覚室に五時に集まれって言われてる。引退する先輩の
多分、今日まで、大半の部員は似たようなことを考えていたように思う。先輩の他校との小競り合いなんて、後輩にとっては
しかし、その日の放課後、僕らは想像もしていなかった現実と直面することになった。
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