第20話 お助けユニットは大体間に合わない現実
8000PVを突破しました(喜びのころころ
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今回からまたバトルイベント、はてさてどうなる事でしょうか。
今日はずっと三人称で進んでみようと思います。練習は大事。
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「っ! こんな日に限って!!」
流川が珍しく荒げた声でスマホをベッドに投げ捨てた。
今日の営業も問題なく進み、商談をまとめる事が出来たので気分良く少しお高めのビジネスホテルで休んでいた所に、御堂からの連絡が来たのだ。
御堂の性格ならば今日は仕事で忙しく連絡はあまり取れないと言う事なら、余程の事がない限り連絡をしてくることは無い。つまり、この連絡はその余程の事があったと言う事だ。
「ここで緊急ミッションかっ! まるで彼を狙い撃ちにしてるような場所で開催されるとか、それも面倒な大型モンスター討伐タイプだなんて」
参加自由と謡われている緊急ミッションだが、実はこれに関しては罠だった。確かに参加しなくてもいいのだが、その場合周辺の【参加できるプレイヤー】が参加していない場合、ディザスター側でチェックが入るのだ。それが何回も続いた場合、「積極性無し」と判断されてしまい、絶対に巻き込まれて回避不能な緊急ミッションが開催され、ほぼ確実に死ぬ事になる。
とはいえ、1~2回ならばまだ猶予がある為、逃げてもらおうと考えるも開催場所が逃げようにも逃げ場がない自分の住んでいる場所を含めた地域。これまで普通の生活をしていた御堂にとっては他の知人等も近場に住んでいる以上、人質を取られた状況で戦うか逃げるか好きな方を選べと言われたようなものだ。
御堂の性格ならば確実に戦う方を選ぶ。そして予想通りに戦いを彼は選んだ。
レベル2でこのタイプの緊急ミッションに参加するのはほぼ自殺行為だ、流川がその場に残っていても不参加を推しただろう。彼のソウルギアのテルクシノエーはその辺りをよく理解してくれていたが、基本的にソウルギアはマスターのイエスマンの様なものだ、強く言われれば否とは言えない。
逃げるにしても問題がある。既にミッションは開催されているのもあるせいで彼の住んでいる場所は既に結界で隔離されている。逃げ出すにも車で直ぐにとは行かないし、全部終わった後で自分の家や知人が亡くなっていたら彼は取り乱してしまうだろう。流川もそれが分かっているため、消極的にだが認めるしか出来なかった。
「今からじゃあ間に合わない。御堂君・・・」
流川にとって御堂は数少ない友人、いや親友だ。
高校の時に初めて出会い、虐めを受けていた流川を御堂は何度も助けてくれた。その頃から既に荒っぽい性格もあり、虐めていた人間を物理的に伸したりや、あぁ見えて頭が回り、レコーダーや映像を取っての証拠集めなどやりたい放題して、力づくで流川を助けてくれたことがある。
全部終わった後に彼が自作したケーキは涙が出るほど美味しかった。いずれはケーキ屋になりたいと夢を語っていた姿が、流川にはとてもまぶしく見えた。
「どうか、死なないで下さいよ?」
そう祈らずには居られなかった―――
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──────────────────────────────────────□ミッション情報
討伐対象【イレギュラーナンバー】
獰猛性が極端に高い巨大な肉食獣。
肉、特に人間の肉を好んでおりプレイヤーの肉を狙う事が多い。
嗅覚がとても鋭く近場にプレイヤーが居ない場合は
結界を破り周辺の人間を満足するまで食い荒らす事になるだろう。
【討伐】でミッション成功。
【結界外にイレギュラーナンバーが1時間滞在】でミッション失敗となる。
それ迄の間に結界外で起きた事実はなかった事になるので
プレイヤーの皆さんには安心して討伐を楽しんでもらいたい。
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アプリに掲載されている記事の通りに、今回の討伐モンスターである、
【イレギュラーナンバー】が荒れ狂っていた。
周囲の家屋を薙ぎ払い踏みつぶし餌になりそうな人間を探し続けている。このままではすぐに結界の外に出てしまい甚大な被害が出る事は想像に難くないだろう。
既にイレギュラーナンバーの周りには複数人のプレイヤーが揃っていた。
一番遅れてやってきた御堂を周りのプレイヤーが一斉に見る。
「俺が最後か。てか、なんだよあれティラノサウルスか何かか?」
咆哮を上げながら周りを荒らしているイレギュラーナンバーを見て背筋が寒くなる御堂。やっぱり逃げてたら良かったかなと少しばかり後悔していた。
「あ、あわわわわ。さ、参加しなきゃよかったよぉ!?」
「この化け物が・・・!」
女子高生位の年齢に見えるプレイヤーがひきつった顔で震えている。
すぐ横にいるのは前回御堂と一緒に参加していた、高速移動を得意とするプレイヤーだ。既にソウルギアを展開しイレギュラーナンバーを睨みつけているが、流石にあの状態のモンスターに近寄るのは難しいらしく、この場にまだ留まっている。
「あ! 貴方はこの前の! 今日もお願いします!」
後ろから駆け寄ってきたのはパイルバンカー少年と御堂が呼んでいた中学生の男子と40代位だろうか、態度も口調も横柄な男も同時にやってきた。
「くそが、ゾロゾロで出てきやがって! 俺の取り分が減るじゃねぇか! とっとと逃げるか死ねっ!」
到着するやいなや、直ぐにいちゃもんを付けてくる男に先ほどから震えているプレイヤーが更に泣きそうな顔になっていた。既に半分青くなっている。
「これで全員か。兄さん達、わりぃがレベル聞いていいか?」
全員ソウルギアを展開したり防具を身に着けている中、一人ラフな格好でイレギュラーナンバーを見ていた少年が、全員にそう問いかける。
見た目的には中学生か高校生になる前程度の年齢の少年だったが、その気配は御堂でもわかるほど堂々としており、高レベルを伺わせる。
「俺は装備型。レベルは3だ。ソウルギアは【リアリティアクセル】ネームはアクセルとでも呼べばいい。高速移動で敵をかく乱するのが得意だ」
「ぼ、僕も装備型でレベルは2です! ソウルギアは【マキシマムバンカー】チャージが必要ですが破壊力と制圧力は高いと思います! バンカーって呼んでください!」
「はへ、あ、わ、私もかなっ!? え、えーと召喚型でレベルは2なんだけど、そソウルギアは【フェアリーズ】って言って、し、支援型って言うか面倒くさいタイプって言うか、あ、あはは」
怯えていた女性を含め全員がそれぞれレベルとソウルギアを全員に伝えるが、一人だけ、因縁をつけていた男だけはそれを断った。
「貴様ぁ!? PKじゃなかろうなぁ!? 人のレベルとソウルギアを聞いて! 後から俺等を殺す気だろう!? てめぇらも何素直に教えてるんだ!? 俺は言わんからな!!」
「おっちゃん。作戦も何もなしで無策であれに勝てるって言うのかい? それなら勝手にやってくれ。で、そっちの兄さんはどうする?」
今も尚叫んでいる男を尻目に少年は強い目つきで御堂を見る。
「俺もレベル2だ。ソウルギアは【サイレーン】と【テルクシノエー】どっちも召喚型で支援タイプだ。俺は一人じゃ勝てる気がしないんでな、坊主、いやお前さんレベル高いだろ? そっちに賭けた方が生き残れそうだ」
「召喚タイプで2種・・・? 驚いたな、初めて聞いたよ。情報ありがとさん」
そういうと少年は懐から1本のナイフを取りだし、告げる。
「俺はレベル4。ソウルギアは特殊型で【エヴォリューション】一応は特殊型なんだが、やってる事は装備型と似たようなもんだ。だが、この中なら多分一番戦闘力は高いと思うぜ」
「れ、れべる4!? や、やった! これなら私生き残れるかも! 既に来てて後悔してたよぉ」
「嘘だろ!? こんなガキがレベル4だぁ!? 冗談も大概に!? いやテメェPKだな!? PKだからポイントも高いんだろう! このクソガキが!」
「っ! いい加減にしてください! 今はここで言い争ってる場合じゃない筈です!!」
「だな。あんたが叫ぶのは勝手だが討伐の邪魔になるなら一人で勝手にやってくれ」
「が、ガキどもぉ!? 大人を舐め腐ってると痛い目にっ!?」
ソウルギア【リアリティアクセル】の刃が男の首筋に伸びている。と言うか少し斬れており、そのまま振れば男の首は物理的に落ちるだろう。
「物理的に首を落としてやろうか? PKなんざなるつもりはないが、俺達があの化け物を殺す邪魔をするなら、まずあんたから切り捨ててもいいんだぞ」
「ヒッ!? ~~~~! か、勝手にしろ!!」
「あ、あわわわわ。本当に参加しなきゃよかったよぉ、近場だからってなんで参加しちゃったかな私ぃ」
「助かったよアクセルの兄さんだったかな? これで話を進められる。ただ問題はレベルがほぼ2なのが痛いな。倒す方法は思いついたんだが、この中で耐久出来るやつはいるかい?」
「俺は回避に専念すればある程度は行けるが、直撃すれば間違いなく死ぬな」
「ぼ、僕は攻撃特化で、難しいですごめんなさい」
そういうと彼等は御堂と女性【フェアリーズ】を見る。
「むっ!? 無理ぃ!? 私支援オンリーなんです!?」
「寧ろそれでどうやってレベル2になったんだよ姉ちゃん」
「し、支援続けて、運よく生き残ってポイントを手に入れて~かなぁ」
「あー、生き残れたら貰えるタイプもあるからなぁ」
どちらにしても既に怯えて震えている【フェアリーズ】ではイレギュラーナンバーを相手に立ち向かえるかと言えば全員首を振るだろう。
「俺は・・・ソウルギアが支援系だが、戦闘は俺自身が強化を受けて戦ってる。全員で協力するのなら俺が前衛で逃げ回る役をやってもいいぞ? 二人とも、それでいいか?」
「ん、了解マスター」
「了解しましたご主人様」
御堂が乗ってきた車から様子見をしていた二人が御堂の傍に歩いてくる。二人とも戦闘用のデフォルトの姿に簡易的な防具と武器を持った状態でいつでも動けるようにしていた。どちらもこれ以上ないほどの見た目の為か、先ほどから騒いでいたプレイヤーの男が野卑た目で見ているのが分かる。
直ぐに視線に気づいたサイレーンとテルクシノエーが射殺す様な目で男を見るが、気にしたものではないという態度で近寄ってきた。
「かーっ! 最近ソウルギアは美女に美少女も出てくるとはなぁ! ひひっ!」
厭らしい目つきでにやにやしながらサイレーン達に近づこうとするのを御堂が物理的に手を伸ばして阻止した。
「何だよこの空気の読めないテンプレチンピラは。こういうのリアルでいるのかよ?
居ちゃっていいのかよ? ありえんだろ?」
「んだとテメェ!?」
「んだとテメェは俺のセリフだよ。おいおっさん? やる気がないなら消えてくれ? さもないと――」
御堂が指で首を掻っ切るジェスチャーを取りつつ言った。
「ここにいる全員でぼこぼこにした挙句、肉壁としてあの化け物に投げつけるぞ?」
「ふざけんな!? 一人でやるんじゃねぇのかよ!?」
「寧ろふざけてんのあんただろ? 見ろよあのモンスターそろそろこっち来そうなんだぞ?」
色々会話している中、イレギュラーナンバーが律義に止まってくれている訳ではない。既にモンスターは此方の気配に気づいたようで、ゆっくりと獲物を追う動物のように近づいてきていた。
「~~~!? 来てるぅ!? 作戦会議とか出来てないよぉ!?」
「そりゃあれだけ叫んだら聞こえるよなぁ。あのおっさん戦犯かよ」
「だが、こちらにゆっくりと向かってるな。まだ完全には気づかれてないのか?」
「遅いなら遅いで何とかなる。兄さん達聞いてくれ、俺のソウルギアは準備に結構時間がかかる。あれだけの図体の奴を倒すなら早くても20分位は必要だ。悪いけどその間あいつの足止めを頼めるかい?」
ナイフを構えてソウルギアを発動させながら言う少年。彼のソウルギアは力を込めれば込めるほどに強化されていくタイプで、その上限はレベルによって限界はあるが、破壊力は同レベル帯の最大攻撃力を軽く凌駕する。
レベル4というそれなりの高レベルならば完全に準備が整えば、イレギュラーナンバーレベルのモンスターでも確殺できる自信があるようだった。
「わかった。俺は足止めに徹する。お前達はどうする?」
「ぼ、僕も行きます! 一人でも増えればあいつも攻撃が分散されると思いますから!」
「わ、私はここで支援し、しようかなーって。ほ、ほら私じゃ役に立てないし」
しゅばっと勢いよく不参加を表明するフェアリーズに、アクセルとバンカーも流石に目が白くなる。お前何しに来たんだよと言わんばかりの視線に泣きそうな表情のフェアリーズだが、死ぬよりはマシと手をプルプルさせてその場に残る事にしたようだ。
「サイレーン、テルクシノエー。こっちであの坊主じゃねぇ、あいつの援護を頼む。もしかしたらPKが居るかもしれんし、何かあれば連絡してやってくれ」
「ん、こっちは任せてマスター。絶対に死なないで」
既に【ブレイブシャウト】は使用しているので改めて強化の必要はない。後はテルクシノエーが支援をするだけなのだが、彼女は奥の方から向かってくるモンスターをじっと見つめている。
そして何かに思い至ったようだ――
「ご主人様、もしかしたらそこまで苦戦せずに行けるかもしれません」
妖艶な笑みを浮かべるテルクシノエーが確信したように御堂に告げたのだった。
―20話了
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【プレイヤー:アクセル】※HNの様なもの
【LEVEL:3】
【ステータス:パワー:3 マジック:0 ガード:2 レジスト:2】
【スキル:ソウルギア:装備型:リアリティアクセルLv3】
―パワー:7 マジック:0 ガード:3 レジスト:3
―腕輪型の高速戦闘が出来るようになるソウルギア。
―本体は腕輪の為、召喚している武器はクローン製品の様なものなので
―破壊されても無限に生み出すことが出来る。但し武器自体はかなり脆い
―展開中は移動によるGを一切受けなくなり、アクロバティックな動きが可能
―レアスキル【高速移動】と同等の効果が常に発動
―Sレアスキル【超高速移動】と同等の効果が常に発動
―SSレアスキル【絶対回避】と同等の効果を1日に1回だけ発動可能
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テンプレに出てきそうな、ダメなキャラが登場しましたね。
どうしましょうね、ここまでテンプレ過ぎると逆に面白いです(ナニ
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