第166話 情報は見つかれど、本人が居ないんですが??

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 ID:kGO19aaA


 プレイヤーキラーのみが閲覧する事が出来る掲示板で名無しの一人をやっているプレイヤー。


 レベルは4になったばかりで、プレイヤーキラー歴は浅い。


 というよりはなし崩し的にプレイヤーを殺しただけで、PKとしては半人前も良い所だ。その時に殺した相手がPKだったという理由から、一応PKを名乗っているに過ぎない。


 この掲示板を見つけたのは返り討ちにしたPKが持っていたスマホからデータを貰っている所で掲示板への情報を手に入れた為、利用しているに過ぎない。


 スレでは大口を叩き、プレイヤーキルを楽しんでいるそぶりを見せているがそれはブラフであり、本当の目的はこの掲示板を閲覧し、血に酔ったPKを演じる事で、他のPKから狙われないようにする事だ。不文律という訳でもないが、PKは基本他のPKと敵対はあまりしない。


 PK同士の連帯感がある、という訳ではない。寧ろ仲間意識なぞほとんどないのと同じだ、そこだけは掲示板でもどこでも同じだなと感じている。


 PKがあまりPKを狙わない理由は、それをやれば他のPKから狙われるからだ。


 やり過ぎればスレに下手すれば顔写真付きであげられる。そうなれば最早袋の鼠だろう、その状態で生きてられるような強いPKなどそうそういない。


 どれだけ巧妙に自分の情報を隠しても、本気をだしたPK達ならばあっという間に特定にまで至り、最後はやり過ぎた報復を受ける事になる。


 だが、それはPK同士の話、イキって一般のプレイヤーを殺す程度などはやじられたり、馬鹿にされたりすることはあれど、特に問題はない。寧ろよくやるものだと呆れたり感心するPKもいるだろう。


 故に今回のPKも実の所やる気はない。


 調べれば調べる程、敵の総数がやばいのだ。アクセルの事は実はよく知っている。スレでは知らない風に通していたが実の所同じ地区のプレイヤーだったのだ。


 更に言えば前回のシーズンのラストミッションの時に同じく参加していた。


 その時にかなりの人数が居たのも知っているのだ。あれは下手に手を出せば返り討ちにあうだけ、それならばとりあえず手を出さず「とりあえずやった」感を出すだけである。


 PCを閉じ、時計を見れば既に18時を回っていた。


 そろそろ大切な家族が帰ってくる時間だ。最近少しだけ元気がなくなっていたが、時間も経ちようやく立ち直ってくれたのが嬉しいと感じている。


 ドアの方から気配、立ち上がって玄関まで向かうと家族が帰ってきていた。


「お帰り、今日は早かったね?」


「あぁ、今日はやる事少なかったからなぁ。てか寒い寒い・・・」


「お風呂は沸かしてあるから、早く入ってきた方がいいよ?」


「あぁ、そうするよ、うう、さむさむ」


 帰ってきたのはツナギ姿の男性。


 プレイヤーの大切な家族であり、将来を誓い合った男だ。


 彼は自身がプレイヤーである事も知らない、ただの一般人。土木作業員として日々汗水たらして二人の生活のために働いている好青年だ。


 最近は慕っていた職場の先輩が急遽仕事を辞めてしまった事で少しの間ふさぎ込んでいたが、今はなんとか立ち直っている。仕事の覚えも早く、それらは先輩と呼んでいた彼から懇切丁寧に教えてもらったお陰だと言っていた。


 その人物に出会った事はないが、それでも長く彼と一緒に暮らしていた事でそれなりに相手の事は知っている。


 御堂という名前の30台の男性で、会社の中では上役でもある。時々プロ顔負けのスイーツ、というよりケーキを彼にプレゼントしてくれたのだ、それを二人で食べるのが密かな楽しみともなっていた。


 ショートケーキからショコラケーキ、フルーツケーキや見た事も無いフルーツロール等と、甘いものが好きな自身にとってそれはとても嬉しいサプライズだったものだ。


 風呂に入っていった恋人を笑顔で見送り、彼には絶対見せないような能面の様な顔になる。


 いつも自問自答している。


 彼と出会ったのはプレイヤーとなった後、暫くの話。初めてプレイヤーキラーに襲われ返り討ちにしたが、かなりの怪我と疲労困憊になり倒れていたのを助けてもらった所から始まった。


 何も知らないただの一般人。プレイヤーとなってそこそこの自分とは何もかもが違う、明るい世界を歩いている存在だった。助けてもらったも尚、いやだからこそ頑なに突き放そうとしたが、彼は人一倍責任感や正義感が強く、そして弱っている人を見捨てられない男だった。


 そんな彼の強い言葉に、救われてしまったのだ。


 気が付けばなし崩し的に一緒に暮らし、あれよあれよと言う間に恋人同士になった。逢瀬を交わし、更に愛しくなった彼から離れる事は出来なくなっていた。


 元々不仲だった家族から離れ、プレイヤーとしての稼ぎだけで一人生きていた所に甘露のような優しさが沁み込んでいったのだ。


 だからこそ思う、プレイヤーとして戦っている以上彼が必死に働かずとも一生遊んで暮らせるだけの金はある。だが・・・これを表に出してしまったらどうなるだろう。


 彼の誇りを汚してしまうかもしれない。初めの時ならばいざ知らず、今では彼が居ない生活は考えられない。単純に金があるからと喜んで、自堕落になる程度なら問題はない。ヒモとか割と嫌いではないのだ。


 だが、彼はそれを良しとしないだろう。最近の若者ではあるが、そういう所はとてもまじめな青年なのだ。きっと自分の隠している事も話さなくてはならない。


 そうすれば・・・


 デスゲームに参加し、自分の命を守るために人を殺したという事実が明るみになってしまったら。優しい彼はどうするか・・・考えなくてもわかってしまう。


 だからこそ、この事実は墓場まで持っていく。


 プレイヤーとしてミッションに行く時は、彼に催眠魔法などを使う事でなんとか誤魔化している。これからもきっとそうするだろう。


 差し当たっての問題は、今回狙う相手・・・実際にどうにかする訳ではないが――アクセルの情報とその仲間の情報を手に入れつつ、プレイヤーキラーとして活動していると思わせるために行動しなくてはならない。


 それも全ては自分と彼の為に。


 彼はこれからも何も知らず、平穏で退屈な日常を暮らしてもらわなくてはならないのだから。


 いつかは自分も子供を産み、平和な世界で家族を・・・と。




―166話了 


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忘れていた(あさねこが)御堂君の会社の後輩・・・の恋人さんが登場です

まさかのプレイヤーキラーとして。







 

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