第167話 貴方の笑顔が眩しくて、それが辛くなる。

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派遣先の人がコロナ疑いになってました、うつらないといいな・・・

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―視点 プレイヤーキラー



「はぁぁぁ。良い風呂だった」


「ほら、身体を冷やさない様に。このタイミングが一番風邪をひきやすいからね」


「お、ココアありがとな」


 風呂から上がってきた彼にホットココアを手渡すと、美味そうに飲んでいく。


 甘党な彼はコーヒーよりもココアの方をよく好むのだ、土木作業の現場で働いていると、暖かい飲み物を配布したり同僚や上司が買ってきたりするが、大体が微糖のコーヒーばかりであまりうれしくないらしい。


 時々カフェオレや甘酒があったらその日は一日気分が良いと言っていた。可愛いものである。ココアなども買えばいいのではと思うが、飲み物を買ってくる人がわざわざ相手の好みを聞いたりなんてあまりしないらしい。


 自分で買いに行く時には確定して甘い物を買ってくるとは言っていたが。


 どうやらそういう飲み物代は必要経費みたいなもので、自腹を切るのが割と普通らしい。会社から飲み物代を支給されたりもするけど、そんなのは半月持たないから結局は自分達で買ってくるのが普通との事。


 これも円滑なコミュニケーションには必要だと彼の辞めた先輩からそういう細かい所を色々と学んだようで、彼は会社内で割と好かれているらしい。あぁいう土木関係は大体縦社会と聞くから、下っ端はひどい目にあっているんじゃないかと、ついソウルギアに手が伸びてしまうが抑えている。


 話を聞く限りでは、他の土木会社が羨ましがるレベルでホワイトなので此方としてもホッと一安心だ。いやな奴がいたら、退職してしまうかもしれないし。そうなると会社が迷惑を被りそうだ。


「ふぅ・・・やっぱり先輩が居ないと進みが遅いなぁ」


「そんなに違うものなの?」


「あぁ、他の人も重機は動かせるんだけど、先輩みたいに器用には動かせねぇんだよな。寧ろ掘ってる時に水道管ぶったぎって面倒な事になったぞ。1日で3回位、ほら、先週の大残業の時だ」


「あれね・・・心配したよ?」


「スマホの充電切れてて連絡いられらなくてすまんかった」


 先週のあの日、20時過ぎても21時過ぎても彼が帰ってこなくて心配になった。普段なら絶対にメールや電話が来るのに何も来ず、22時過ぎても帰ってこなくて、もしかしたら事故か何かに巻き込まれたかと胸が張り裂けそうになったのを覚えている。電話をしても通じないし、もしかしたら自分のせいで他のプレイヤーキラーに狙われたかと戦闘準備を整えようとしたら急に帰ってきて、疲れたと言って倒れ込んだをの抱きしめた。


 連絡できなかった理由が、スマホを昼にアプリで使い過ぎて充電忘れて、そのまま仕事してたら残業になってしまい、連絡しようとしたら電源切れてて充電しに行く余裕もなく忙しかったからというしょうもない理由。


 あまりにもしょうもない理由だけれど、自分にとってはその1分1秒が何よりも怖かった。


「あれが先輩だったら水道管も切らずに定時で終わってたんだろうなぁ・・・」


「つくづく惜しい人がやめてしまったんだね」


「ほんとだよ。俺の事も色々可愛がってくれてさ、俺がここまで仕事出来るようになったのも先輩のお陰だ。後ケーキ美味かった、また食いたいなぁ」


「確かに、もう市販のケーキじゃ物足りなくなったものね」


 本当にその人の事を慕ったんだなと思う。


 だけど親類の不幸での都合じゃ流石に仕方ない。彼が慕い尊敬する人だったのであれば、何かあれば陰ながら助けるのも吝かではなかったけど、どこかで息災であればいいけどね。


「今日の夕飯は食べたい言ってた唐揚げ弁当を頼んであるよ。多分もう少ししたら届くと思う」


「よっしゃ! たまにあぁいうの食べたくなるんだよなぁ。最近弁当も高くてそうそう買えなくなったけど、こういう日位はごちそうみたいに食べたくなるよな」


「安さが売りの弁当屋さんのお弁当が御馳走になってしまうのが今の世の中の世知辛さを語っているよね」  


「給料上がっても物価も高くなるからなぁ・・・お前を養うのが限界でごめんな?」


「そんなことはないよ、こういう二人だけの時間が一番嬉しいから」


 彼との子供も欲しいとは思うけど、基本的にずれてる自分は子供を愛せる自信があまりない。子供も可愛いとは思うが、それよりも自分にとっての一番は彼だからだ。


 彼が子供を望めば産むのも考えるけど、出来ればずっと二人だけがいいなんて考えてしまうのは、やはりどこかおかしいからだろうか。


 昔から他人と色々馴染めずにいた自分。彼の前では普通の女性としてふるまっているけれどそれがどこまで振舞えているかも怪しい。


「ばっ、恥ずかしい事言うなっての」


「ごめんごめん。でもま・・・そういう性格なのは分かってるよね?」


「はいはい御馳走様」


「膨れている君も可愛いよ」 


 仕事に向かう時のきりっとした表情も、普段の優しい表情も、疲れている時の表情も、ふてくされている時の表情も、自分を抱いている時の表情も全てが愛おしく、可愛らしい。


 人を好きになった事がない自分が、ここまで誰かを愛しく感じるなんてあの頃は思ってもいなかった。誰に対しても無関心で、自分以外はどうでもよくて、自分を守る為ならばどんな事でもしてきた自分が、彼にだけはとても弱い。


 彼が居ない世界が来た時、それは自分の人生が終わる時だ。


 もとよりこの世界に興味も何もない。今世界が明るく見えているのは隣に彼が居るからだ。彼が一緒の未来を歩いていてくれるから、自分はこうまで笑えるようになった。


 誰かを愛せるようになった。彼が慕う他人に優しい言葉を掛けられるようになった。


 彼を護る為ならば、自分は何でもしよう。


 プレイヤーキラーと偽る事も、いいや、プレイヤーキラーになったとしても。この小さな楽園を護る為ならば、一切合切邪魔なものを切り捨てる。


 自分しかいなかった世界に彼が現れて、自分は生まれて初めて幸せというものを知った。同時にそれが儚いものだと言う事も知ってしまった。


 プレイヤーとして存在する以上、彼が一般人という現実的な問題、何れ何かが破綻する時が来るかもしれない。だが、それを越させない為になら自分はきっと何でもできる。邪魔するものを殺す事も何ら問題あるものか。


「あー・・・早く来ないかなぁ、腹減ったぁぁぁ~~」


「軽くつまめるものでも食べるかい? チーズとかあるよ?」


「いや、唐揚げ弁当はな? これ以上無いほどの空腹の時に食うのが一番美味いんだよ! 程よく冷めた米と一緒にかっこむ至福! いつも作ってくれてるメシとは違った良さがあるんだ!」 


「今度唐揚げ弁当でも作るかい? 弁当屋に負けない自信はあるよ?」


「違うんだよ、これはな? 美味ければいいってもんじゃないんだ・・! あの弁当にしかない良さを食べてるんだよ!」


 唐突に語りだす彼に苦笑する。


 基本何を食べてもおいしいとしか言わない彼だからこそ、これだけ好むからあげ弁当が本当に大好きなんだなと思う。同時にちょっと悔しい、それ以上においしい弁当は作る自信があるけど、それじゃあダメと言うのがもうね。


 思い出補正と好物補正が合わさったそれには勝てる気がしない。


 ある意味では、彼の先輩のケーキに勝てないのと同じか。


 いつかはそれよりもおいしいと言わせて見せたいね。出来れば彼が食べるのは自分が作ったものだけであってほしいから。


 さて・・・そろそろ弁当も届く。それを食べたらのんびりとして、今日はちょっと悔しいから夜は虐めようと思う。


 そしてそれがおわったら・・・プレイヤーとして動かないとな。


 本当に・・・彼と出会ったのがプレイヤーだったからとはいえ、最近本当に疎ましいよ、この力が・・・ばれてしまった時が怖い。


 彼は・・・怯えないで自分を見てくれるだろうか・・・人を殺している自分を恐れないでいてくれるだろうか。それが・・・それだけが本当に怖い。


―167話了


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日々寒さと戦っているあさねこ・・・

今日は昨日よりましでしたが、明日はどうでしょうね。

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