第220話 だんじょんだんじょんだんじょんじょん


 それから御堂達は周辺に見える幾つかの民家を探索していった。


 途中民家内部に居たモンスターと戦闘になるも、レベル1~2程度のモンスターだったので直ぐに排除に成功し、怪我等は無く問題なく探索できている。


 一部罠が設置された場所があるものの、そちらは【神の右手】を手に入れたショコラとクレアの二人の前には児戯も同然であり、尚且つ1層目だからなのか出てくるトラップもそこまで脅威の高い物ではなかった為、危険は一切なかった。


 強いて言えば――


「【身体転身】の罠かぁ・・・ごしゅがかかったら美少女になるんかな?」


「絶対お断りだ!?」


「美少女のマスター、マスターおぶざ美少女・・・同性だからお風呂も一緒、着替えも一緒・・・マスター!!」


「いやだよっ!?」


 ドアにセットされていた罠【身体転身】で、わいわいと賑わっている。


 効果は一時的に肉体が性転換するという効果で、何故かおまけで女性ならば美少年~美青年、男性ならば美少女~美女に確定して変化するという、そういう願望をお持ちの方には寧ろご褒美ではないかと思われるトラップだ。


 肉体が変化するだけで、内面などに一切の変化はなく尚且つ効果が一時的なので、ここぞとばかりにカオス陣営が喜んでいた。特にサイレーンとショコラ辺りが喜んでいた。御堂であるならば、例え同性になってしまったとしてもそれはそれで御馳走様と言えるのが二人。寧ろ一時的なら二度美味しいと言わんばかりに、一生懸命にこのトラップの有能さについて語られておられる。


「まーちゃん! このトラップ程一度かかってみてもいいわなはないよ! トラップにかかる体験が出来て尚且つ絶対に死なないし、時間制限で元に戻れて、女性にもなるから、ショコラ達と一緒にお風呂とかも全然いけてしまうというこのお買い得さ!!」


「マスターが美少女に・・・! いや、普段のマスターの渋格好良さが女性になっても反映されたら、包容力のある女傑みたいな姿に・・・! どうしよう私ノーマルだけど、マスターならば行けてしまう気がする、ピリオドの向こうに行けてしまう気がする・・・! さ、マスター逝こう!!」


「助けてテルクシノエー」


「アホ二人、そこになおりなさい」


「「ヒィッ!?」」


 恐怖で正座したサイレーンとショコラに、テルクシノエーの愛のハリセンが全力で放たれた。


 その様子を見て爆笑しているディーヴァと片桐。まさか1層目でこれ以上ないコントが繰り広げられているのだから、笑ってしまうのも仕方ないだろう。これには多分どこかで見ているディザスターもにっこりしているかもしれない。


「っ~~~~~! 僕、ミッションに来てこんなに大爆笑したの初めてかもしれません・・・!!」


「なんでトラップ一つでこんなコント出来るんだよ、実は芸人だろ」


「違うわ!?」


 突っ込んだ後、ふと隣を見れば謎の格好で踊っているハトメヒトを目撃していまい、あながち芸人とか言われても反論できにくい状態になっていたが、認めてしまうとこれからはケーキ屋ではなくお笑い屋になってしまいそうだったので押し通した。


 終始緩い雰囲気の探索だったが、見える限りの民家を調べても特に使えそうなものは見当たらず、次の階層に向かうための入り口も見当たらない。


 やはり次の階層は奥に見える城にあるのだろうという結論になった。


「んじゃ、行きたくはないが次は城だな。開幕ボスモンスターとかいたら嫌なんだが」


「今回の追加ルールで低階層は難易度が下がっているようですので、それはないと思いたいですが、それこそがディザスターの罠と言う可能性もあります。万が一を常に考えながら行動しないとですね」


「んじゃ、まずは私の出番かねぇ。流石に民家一つ一つは面倒だったけど、城とかなら私のドローンで調べに行けるし」


 そう言ってマジックバッグから強化ドローンを複数取り出す片桐。既にソウルギアとリンクさせてあるので、これらすべてのドローンは、彼女にしか見えないモニターによって操作できるようになっている。


 スキルと元々の才能によって、最大6台~8台位迄ならドローン1台につき展開されるモニターの全ての情報を認識、確認出来る様になっている。


「それがいいかもだな。悪いが城の周辺、出来れば内部を見てもらえるか?」


「任せろって・・・♪」


 御堂としては普段通りに頼りになる片桐に、軽く言った言葉であるが基本頼られる事などなく、信頼される事もなかった彼女にとって、その言葉は何よりもほしい言葉だ。だからこそやる気が溢れるし、普段以上のスペックが出せる。


 彼女にとってリアルの目線で見る世界は未だに恐怖が溢れている場所ではあるが、モニター越しに見る世界は自分が最も得意とするゲームの様な世界。


 そしてゲーム世界と同じように動かせるドローン達、その状況においてならばこのミッションをゲームと認識してならば、片桐はレベル以上の強者になりうる。


 一瞬で動き出す複数台のドローン達。一台も動きがぶれることなく、まるで踊るように城に向かっていくその姿を見てディーヴァは片桐に対する認証を少しだけ改める。


 どう考えても一部の支援しか出来ない上に、引き籠って防衛ミッションの対象にされてしまう様なプレイヤーだ。実力もないだろうし、事実彼女の戦闘力は著しく低い。それに加えてミッションには悲観的な以上、ディーヴァの片桐に対する感情は【ケーキ屋】に寄生する底辺プレイヤーだった。


 人の好い御堂だからこそ、この状況が成り立っているのだろうと思っていたが、まさかのまさか、あれだけの戦闘用ドローンを1台の不調もなく、完全に操作するそのテクニックは驚嘆すべきものだ。


 あれらが全部攻撃してきたとしてもディーヴァなら物の数ではないが、セットしている武装によっては、負けはしないものの消耗するのは否めないだろう。


 目の前のこれは、有象無象ではなく、敵に回った場合は確かな脅威になりうると再認識するには十分な能力の持ち主だった。


【初めからこれだけ出来るならあんな事になってないでしょうし、ケーキ屋さんかジェミニさんのどちらかが開花させたんでしょうねぇ】 


 ますます敵対するには脅威だと感じるディーヴァ。そもそもの話、出来る限りケーキ屋とは敵対したくもないので、そのような事を考える意味もないのだが、それはそれとして、今まで培ってきた戦闘経験が冷静な判断をしてしまうのは仕方のない事だ。


 更に言えば、御堂のソウルギアのどれ1人をとって油断出来る存在ではない。あのようなコントを繰り広げている中でも、誰か一人は必ずと言っていいほど、ディーヴァの動きを監視しているのだから。


 特に一番の脅威はあそこの小さな少女―ハトメヒトだ。


 ことある毎に意味不明な行動をとっている彼女だが、いつどんな時でもディーヴァの動きに注視している。それは偶にディーヴァが気づけないレベルで。


【ますます敵対したくないですね~】


 少しだけ汗が出てしまうのは仕方のない事だろうか。


「よーし、そろそろ入り口が見え・・・・うわぁ・・・」


「どうした? やばいもんでもあったか??」


「・・・うん、違う意味でやばい・・・」


「え? ハトメヒト関連?」


「うん、ハトメヒト関連」


「え? 我そういう扱いなの?? ショック! 限りなくショック! 大体の場合において自業自得ではあるが、それはそれとしてショック! いやすまないただショックと言いたかっただけなのであるが。リバティ殿、何が見えたのか?」


「セーラー服を身にまとったガチムチ型のお相撲さんみたいなモンスターが2体入り口を守ってる」


 なにをいってるんだこいつ・・・とその場にいた全員が片桐を見るのも仕方のない事だろうか。


―220話了


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4時過ぎに帰ってきて7時に起きて執筆してました。

カオスなのはきっと眠いからですね。

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