第221話 絶対運営は遊んでる。斜め上の方向に
片桐の話した通り、そこには2体の変態が仁王立ちで立ちはだかっていた。
頭部には力士らしくちょんまげを結い、その体型には絶対に似合わないだろうアニメなどで出てくるだろうお嬢様が着ているようなフリフリのセーラー服を身にまとい、最後の抵抗なのか、足は素足だ。
悪夢に出てきそうなそんなモンスターというか、違う意味である意味モンスターと言うか、警察に連行したらワンチャン連れて行ってくれないかなと頭が痛くなる様な存在が高らかに宣言してきた。
【またれいまたれい!! ここより先は通す訳にはゆかぬ!!】
【然り然り!! ここを通りたくば小生等を認めさせてみせるがよい!!】
悔しくなるくらい声が可愛らしかった。その見た目の存在から出してよい様な萌えボイスではなかった。
ふと何故か全員してハトメヒトを見る。
「あれ、お前さんの同類か?」
「実は・・・あれは生き別れの親戚の兄の嫁の友達の従弟のハトコの孫の姉の妹の友人にライバル心を燃やしている隣町の少年の父の祖父の姉弟の兄の妹の嫁の孫の親戚の孫のひ孫だったのだ・・・!」
「つまり関係ないと」
「うむ」
【同類じゃないのか】という視線が再びハトメヒトに集まったのは仕方のない事だろう。何せ目の前の謎の物体は、ハトメヒトですか? と言わんばかりに謎の動きをし続けているのだから。時々四股を踏んだり、張りてして見たり、何故かスカートのすそをつまんで一回転してみたりと、色々と精神が削れていくその姿は正にモンスターと言えるだろう。
そしてディーヴァも片桐も御堂も、「ディザスターってもうよくわかんねぇ」と心の中で一致してしまうが、それは仕方のない事だろう。これを理解しようものならその精神性はハトメヒトの様なものになりそうだからだ。
「とりあえずは・・・倒せばいいんだな」
「ですねー。それじゃ最初は僕からいか――」
【またれい! 小生等は暴力反対派推進協会である!!】
【暴力はいけない! 世界はラブアンドピース! ジャン・ダニエル・シュヴァルツバッハ57世も言っていた!!】
ついに戦いディーヴァがまず役に立とうとした所で二体の謎物体は両手を目の前で振ってディーヴァ達を止める。これがもう悲痛な萌えキャラの様なボイスなので更に頭が痛くなってしまう。
だが、そんな言葉でディーヴァが止まる訳もなく、小手調べと言わんばかりに衝撃破を繰り出す、が・・・!
「えー・・・」
放ったはずの衝撃破がいとも簡単にかき消されてしまった。目の前のモンスターが防いだようにはとても見えない、なぜなら目の前の存在達は、暴力反対と言い続けてるのだから、汗を流しながら顔を引きつらせているので多分あの見た目から反して戦闘力はないのかもしれない。
【なんて恐ろしい、きょうびのプレイヤーは落ち着いて話も出来ないというのか、嘆かわしい】
【うむうむ。攻撃はやめるのだ、何故ならば無意味だから!!】
「なぁ、とも・・・ケーキ屋、私もう帰りたい」
「奇遇だな。俺も帰りたいよ」
二人の心が重なった瞬間だった。とても嬉しくない状況でだが。
隣では人の話を聞いてくれないディーヴァやサイレーン、ショコラ辺りが銃などを連射してたりするが、目の前のモンスター達はあわあわしてるだけなのに、攻撃は見えない壁みたいなもので防がれている。
恐らくは、モンスターとは関係のない防御フィールドが張られているのだろうとテルクシノエーが睨む。ならばそれを解除しなければ戦い以前の問題だが、そういうトラップや違和感を探せるスキルを持つはずの、クレアとショコラが見つけられない時点でここは【目の前の存在に対し攻撃が禁止されてる場所】なのかもしれないと考えた。
そしてその予想は当たる。
【我等は次の階層へ進む者を阻む門番!! ここを通りたくば我等が試練を乗り越えるしかここを進む方法はないとしれ!!】
「うわぁ、そういう面倒臭い系のギミックですかー。力ずくで行けないのは面倒ですよねぇ」
見た目のアイドルそのものの様な雰囲気からは考えにくい物騒な思考回路は正に見習いとはいえプレイヤーキラーだろうか。
【うむ、漸く理解したようでなによりだ! では試練を伝える!!】
【心して聞くが良い! ここが1回層目だからと侮れば汝等はこの部屋を脱出できないままミッションが終了する事になるであろう!!】
【試練内容はこのフィールドの何処かの民家にある各種材料を用いて】
【美味しいデザートを作る事だあああああああああ!!】
「だあああああああああ!!」という声がこのフィールド内に木霊した。
誰もが「なんでだよ」と叫ぶよりも「なんで??????」と意識が宇宙の果てに飛びそうになるような内容だった。
何が悲しくてダンジョアタックミッション。それも人が容赦なく死ぬこの世界で、そこらの民家から各種材料を集めてデザートを作らねばならないのかと、彼等の心は一つになり、ディザスターの運営部に凸りに行きたくなっていた。
【無論! 出来たデザートの味が悪ければやりなおしである!】
【更に言えば、24時間ここで過ぎれば、死神がやってくる! 命を懸けて我等を唸らせるような美味しいデザートを作るのだな!!】
【はははははははは!!】
【あはははははははははは!!】
可愛い萌え声の盛大な無駄使いだった。だが内容はともかくとして、この二体を満足させられずに時間が過ぎてしまえば、高レベルの存在でも容赦なく圧殺できるモンスターが出現する。
内容はともかく、命は確かに掛けられていた。これが何の知識もない普通のプレイヤーだったならば割と致命的な内容だったかもしれないが・・・
彼女達は一斉に御堂を見る。
「・・・・ケーキでもいいか?」
【デザートに種類は問わぬ!】
【だが我等を満足させられるかな!?】
そこにはプロ顔負けというか、ステータス上昇と彼自身の努力の結果、多種多様な人たちのニーズにこたえ続けてきた結果、ケーキ屋でひと稼ぎ余裕で出来てしまうケーキ作りのお兄さんがいた。
「・・・僕、今日ほどケーキ屋さんと一緒に来て良かったと思いました」
「私デザートなんて無理だからな、作れても蕎麦だぞ?」
「ダンジョン内でケーキを作れ等と・・・正直前代未聞ですね・・・ですが此方にはご主人様と、一応私もいますので」
「だからあれだけ民家とか食材とかあったのか・・・牛乳とかもあったし、その気になれば何でも作れるって事だね」
「なんでかは分からんが・・・ここは俺の独壇場の様だな!!!」
ケーキ作りに妥協できない自称お兄さん、御堂の孤独でもない戦いが始まった。
明らかに勝負が見えていたが、目の前の二人は小生たちを唸らせるものが作れるわけがないと盛大にフラグを立て続けているのだった。
―221話了
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何故かダンジョンアタックに来てまでケーキ作りを始める主人公でした。
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