第2話 テンプレの様に知り合いが関係者はやめてほしい

時間が出来たのでほそぼそと修正中です。

少しでも見やすくなっていると嬉しいのですが。

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 夜道をほくほく顔で帰宅中。


 今日は久しぶりにパチンコで大勝利出来た。


 ケーキ作り以外にあまり趣味の無い俺だが、パチンコなどの軽いギャンブルは良く楽しんでいる。競馬や競輪等は面倒なので最初の数回で行かなくなったが。


 スロットの方が時間的な効率で当たればデカいし早いのだが、俺としてはパチンコの玉を眺めているのが楽しい方である。

 

 リール回転で確変モードになればそれはもう脳汁が溢れるほどだ。まぁ「それならスロットでよくね?」となるがそれはそれだ。人間よくわからないこだわりがあるってものだろう。


 換金した金で欲しかったケーキ作りの機材や材料を買い込んできた。


 給料は俺等の年齢としてはかなり良いが、色々削ってまでやりたいとは思っていないので無理はしない。こうやってたまに儲かった時のあぶく銭でついでに買うのが丁度いいのだ。


 次は何を作ろうかと思案する。


 この前は「ブッシュ・ド・ノエル」なんていう凝ったもの作ったし、次は簡単で美味しいものにするのもいいかもだな。ショートケーキもシンプルでいいが最近チーズにはまっているしチーズケーキ3種を一度に作るのもいいかもな。


 スフレチーズケーキ


 レアチーズケーキ


 ベイクドチーズケーキ


 どれも美味いが俺が好きなのはベイクド>レア>スフレの順だ勿論異論は認める。寧ろこういうケーキ談義をさせてほしい。


 女性の知り合いが居ないので、俺レベルでケーキが好きな奴、語れる奴がまったくいないのだ。お陰で作るケーキも俺の独り善がりが入ってしまう。


 別にもうプロは目指していないし、それでもあいつらは美味い美味いと喜んで食べてくれるのだが、できればお互いにケーキについて語りあって今まで以上にうまいケーキを作りたい、そう考えても仕方ないよな。


 とはいえ、見た目いかついスキンヘッドのおっさんがにこやかに話し掛けた所で何も知らないお嬢さんやおばさんは悲鳴を上げて逃げていくことだろう。


 それが可愛らしい包みにケーキを入れていればなおさら恐怖が煽られるに違いない。警察を呼ばれて物理的に御用になりそうだ。


 なんとなく考えていたら口寂しくなったので煙草を吸う。


 俺は意外に思われるのだが、高校卒業するまで、いや20歳を超える迄は煙草も酒もやらなかった。


 興味自体はあったし、素行の悪い知人には良く誘われたが、それでも俺はすべて断ってきた。


 それをやるという事は祖父母に迷惑がかかるかもしれない。両親に捨てられ親戚をたらい回しにされ、頼るものもなくなった俺を迎えてくれた祖父母の事を考えると、こんなくだらない事であの二人を悲しませたくはなかった。


 じいちゃんはまるで父親のように俺に接してくれて、厳しくも優しかった。


 余りわがままを言わない、いや言えずにいた俺に色々良くしてくれた。年齢の割に結構感性が若くて、スマホやPCなどでアイドルの推し活とかやってたな・・・


 スパチャしまくってばあちゃんにひどい目に合わされてたが。スマホやPCを買ってくれたのもじいちゃんだ。何も望まなかった俺にじいちゃんは目線を合わせてこう言ってくれた。


「我慢なんて、若い内からやり過ぎることは無い。両親がどうだとか俺等がどうだとかはどうでもいい。甘えてほしくないなら、関わってほしくないならそもそもお前を迎え入れたりはしない」


 厳しくも優しい声でじいちゃんは続ける。


「それで根性が曲がってしまったら無意味だろう? 甘えてこい、強請ってこい。

出来る限り、それが常識の範囲内でお前がちゃんと頑張るのなら俺も母さんもちゃんと受け入れる。それがお前を辛い目に合わせたあいつらの親として俺達が出来る事だ」


 俺は祖父母がいなかったら絶対ろくでもない人間になっていただろう。


 今の俺が曲がりなりにも仕事について警察のお世話にならず、いっぱしの社会人として表の世界を堂々と歩けるのは、あの二人のお陰だ。


 だから俺は決めた、両親のようになるつもりはない。祖父母の様な立派な人間になってやる、と。


「ふぅ・・・」


 煙草を吹かせ一息。


 いつか俺がまともな大人になって今みたいに酒も煙草も行けるようになってプロのパティシエになって、じいちゃんとばあちゃんと一緒に酒を酌み交わしたり俺が作ったケーキを食べてもらったり、もう叶う事はない願いに思いを馳せる。


 俺は肝心な時に一歩を踏み出すのが遅れるな。


「ん?」


 ふと辺りが暗くなった。


 見渡せば街灯が全部消えている。それ所かあちこちの民家の明かり迄消えていた。


「停電か、さっさとけぇるべ。うぅ、さむさむっ」


 季節はそろそろ11月、冬も近づいてきている。


 コートは羽織っているが吹いてくる風は結構寒い。近いうちに灯油を買ってストーブの準備をしないと等と考えていたその時。




―ドクンッ




 何か心臓の音が跳ねたような音がした―――



「な、なんだ? 空にノイズ??」


 目がおかしくなったのか、暗くなった夜道にノイズの様なものが走った。


 目が疲れているのかと目を閉じて擦り改めて見渡すがノイズは変わらず走っている。それ所か世界が黒から血の様な赤色にどんどん染まっていった。


【キヒヒヒヒヒヒヒヒ】


「!? な、なんだありゃぁ・・・!?」


 ノイズが走っている部分から「ずるり」と滴り落ちるようにナニカが落ちてきた。


 地面にべちゃりと嫌な音を立てて落ちた【ソレ】は、直ぐにブルブルと動き出しまるでスライムか何かのように蠢き始めた。


「なんだよ・・・これ・・・!?」


 よく見ればあちこちのノイズ部分からそいつらは滴り落ちてきている。


 地面に落ちて蠢いた後、それらはまるで当たり前のように浮かび上がった。


 暗くて見辛いがそれは赤い球形、いや卵みたいな形になっている。


 ぼこぼこと触手の様なものが飛び出て、最後には卵の中心には巨大な口が開いた。そこから巨大で長い舌の様なものが飛び出して、気色の悪い笑い声を上げていく。


【イヒヒヒヒヒ】


【キャハハハハハハ】


【オヒョヒョヒョヒョ】


 異物。


 余りにも現実世界ではありえない異物。


 例えるならばホラーゲームやファンタジー世界にならそれなりにいそうな【バケモノ】としか言いようのない存在が俺を取り囲んでいた。


 そいつらが周囲を奇声を上げながら動き回っている。


「俺まだ酒飲んでねぇぞ・・・うおぁっ!?」


 それを避けられたのは運が良かった。


 正面に飛んできたバケモノが動かしていた触手を俺に叩きつけてきたのだ。


 間一髪避けられたが、よく見れば叩きつけられた道路のアスファルトが凹んでいる。


 夜中の冷たくなって硬くなっているアスファルトを数センチとは言え凹ませる威力。俺に直撃すれば骨折程度ではすまないだろう。


(やばい、なんだあれっ!? いや逃げろ・・・どこにっ!?)


 あまりの光景にまともな思考が出来ない。


 恐怖が背筋を寒くし、体が震えているのが分かる。


 逃げなくちゃいけないのに逃げ道もなく、どうしていいか冷静な判断すら出来ない。そんな俺の葛藤などバケモノは知る由も無く、今度はあちこちから容赦なく

触手の一撃が飛んできた。


「しまっ!? があああああああっ!!!」


 薙ぎ払われた触手の一撃をまともに横っ腹に受け俺は簡単に吹き飛んだ。


 同時に感じる背中の激痛と息が詰まる衝撃。たったの一撃で俺は壁に吹き飛ばされたらしい。


 耐え切れず咳き込みその場で蹲ってしまう、頭から生ぬるいものが滴ってきた。頭も打ったのだろう、血が流れてきていた。


(まずい、息が・・・にげ・・・あぁ、こりゃ・・・死ぬな・・・)


 確かに俺は小さい頃ファンタジー世界に憧れた。


 俺が望んでいたファンタジーはこれほどまで恐ろしい世界だったんだな。


 そんな取り留めのない事を考えて、ゆっくりと意識を手放し掛けていく。残っている力でゆっくりと目を開ければ、俺の周りにはあのバケモノが笑いながら触手を揺らしているのが見えた。


 はた目から見ても俺を甚振っているのを楽しんでいるのが分かる。


「はは・・・訳わかんねぇ・・・・」


 じいちゃん、ばあちゃん。俺もどうやら直ぐにそっちに行きそうだ。だけどせめて、少しくらい格好つけて死んでもいいよな。


「クソ化け物共が、雑魚しか甚振れないんだろうよ・・・! あぁん!? げほっ・・・!」


 盛大に罵って死んでやる。


 負け犬の遠吠えとも言うがな。


 だが効果があったみたいで、あれだけ笑っていたバケモノが途端に動きを止め

口をガシガシと動かし始めた。雑魚と呼ばれて怒っているのか、それなりに知能があるんだな。

 

 なんて死ぬ直前なのに下らない事を考えた。


「あぁ、死にたくねぇな・・・」


「だから、言ったじゃないですか、夜は危険だと」


「はっ・・・?」


 最後に零したつもりの言葉に返事が返ってきた。


 そこにはいつの間にか俺の前に立っていた流川が立っていた。


「る・・・流川・・・??」


「いやまぁ、これでポイントもらえるんですけどね。友達助けてポイント貰うのって、凄くもにょるんですよ」


 何時ものように平静に振舞う流川に、今の状況がもしかして幻想なのではないかと考えるが、あいつの奥にいるバケモノ達は変わらずそこにいる。


 脇腹が折れただろう腹は激痛で泣きそうだし打ち付けた背中はとてつもなく痛い。


 頭から流れてくる血に至っては気持ち悪いと来ている。だからこれは現実だと嫌でも頭が訴えかける。だから直ぐに俺は喋る事が出来た。


「だ、だめだ! 逃げろ! 殺されるぞ!?」


「何より先に出る言葉がそれ・・・本当に貴方らしい」


 そういう流川の顔はいつも通りに分かりづらい笑顔をしていた。


「御堂君位ですよ、普段の僕を心配してくれるような人は・・・」


 くるりと流川はあいつらに振り向き、言葉を紡いだ。


「だからこそ・・・打算に塗れていますが、僕は君を助けます」


 その言葉と同時にバケモノ達は流川に向かって触手を放つ――


「は・・・?」


 流川が軽く右手を払うと四方八方から襲い掛かる触手がすべて薙ぎ払われた。


 どう見ても触れてもいない触手すら跳ね飛ばされ、衝撃を受けたバケモノ達がその場に落ちていく。


「我が魂よ、震えよ、奮えよ、揮えよ! 敵を切り裂く刃となれ!!」


 流川の体が発光する―――


「敵を塵殺しろ!! 僕の【ソウルギア】!!」








―2話了




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皆さんはどんなケーキが好きですか?

私はショートケーキとチーズケーキですね。

最近はりくろーさんのチーズケーキを食べました。とても美味しかったです。

問題は最近値上がりしてて手が届かない所でしょうか。

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