第3話 テンプレが続くと渇いた笑いしかでない。

副題に特に意味はありません(何


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 流川がこんな状況でなければ痛くて転がりそうな詠唱を唱え終わる。


 それと同時に流川の目の前の地面が光り輝き始めた。同時に目も開けられないほどの光が俺の目を焼きそうになり咄嗟に目を覆う。


「OK! マスター!」


「オーケー♪ パパっ♪」


 目を閉じている俺の耳にはっきりと聞こえてきた場違いな声に戸惑うが、

直ぐに目を開ける――


「は・・・?? 何もない所から子供が・・・??」


 そこには流川を護るようにして中学生。下手したら小学生位の少年と少女が

不釣り合いな銃器を引っ提げて立っていた。思わず息を呑むほどに少年も少女も現実離れした雰囲気と魅力を放っている。何処かの子供モデルと言われても信じられそうなほどだ。


 そんな二人が酷薄な笑みを浮かべながら銃器を構えていなければ、だが。


「手加減はいりません、ポイントはガンガン使いなさい。たかがミッションからあぶれた程度の雑魚が僕の親友を殺し掛けた。万死に値します」


「ふふっ♪ パパってば意外と人情家?」


「まさか、彼に対してだけですよ」


「そう。それじゃ・・・雑魚さん達♪ パパのポイントになりなさいっ♪」


 その言葉と同時に少女が両手に持っていたマシンガンらしき銃を乱射した。


 映画などでしか見た事がないレベルの銃弾の雨がバケモノ達に突き刺さる。近くにいた数体は全身を弾丸に貫かれて甲高い叫び声を上げて地面に落ちた。


【ギィギィイイイイイイ!!】


 だが、それ以外の無事なバケモノが少女に向かって触手を叩きつけ―


「おっそぃ」


 ―る前に触手が銃撃されて吹き飛んだ。


【!?>!?!はすいgyhs?!?!】


【アヒイイイイイイ!!】


【ギャアアアアアアイイイイ!!】


 生き残っているバケモノ達が示し合わせたように彼女を取り囲んで無数の触手を叩き込もうとするが、その全てを寸分違わず銃弾の雨ですり潰してしまう。


「あはははははっ! どこまで楽しませてくれるのかしらっ!」


 まるで遊んでいるかのように少女は楽しそうに笑いながら一方的に虐殺していく。


 あの華奢の体のどこにあんな銃器を両手に適当に持ったまま撃ちまくっても耐えきれる力があるのだろうか。


 あんなもの実際に俺が撃ったら腕が吹き飛びそうなもんだ。


 そして爆音と共にばら撒かれた銃弾は周囲のバケモノ達をハチの巣に変えていく。


【ヒイイイイイイ!?】


「遅い♪ ポイント3消費。【デスペラード】!!」


 弾丸を受けつつも生き延びた複数のバケモノが踵を返すように逃げ出していく。


 彼女が言葉を紡ぐと同時に両手に持っていた銃器が物理的にありえないほど増えていく。


 どうやって持っていると言うのか、片手に軽く数丁以上のマシンガンを構えると同時に跳んだ――


「うそだろ・・・おい」


 まるで彼女自身が、弾丸のようにバケモノ達に向かってくるくると回転しながらとびかかる。


 両手に構えた数えるのも馬鹿らしい数のマシンガンから弾丸を雨あられのようにばら撒いて行く。


【ギャアアアアアアア!?】


【ギギヒヒヒヒヒイイイ!?】


【アギャアアアアアア!!】


 蹂躙。


 その言葉がこれ以上なく似合うほどの蹂躙が繰り広げられる。


 バケモノ達はもはや完全に戦意を失い散り散りに逃げ出していくが、彼女の弾丸はそれを許しはしない。一匹残らず弾丸の雨で消し飛ばすのだ。


 俺はそんな非現実な現実を見続ける事しか出来ずにいた。夢だと思いたかったが、全身に走る鋭い痛みがこれ以上ないほど、これが現実だと嫌でも俺に認識させた。


「んー、もうポップ終了? もう少し出てこないとパパのポイント稼げないじゃない」


 ガシャガシャと使い切った銃器をその場に捨てて新しい銃器を両手に構える少女。


 いつの間にかあれほど居たバケモノがほとんどいなくなっていた。


 一応まだノイズ部分からいくつか湧いて出てきてはいるのだが、それらがちゃんとした姿を取る前に彼女が銃で撃ち殺していく。


「雑魚を倒してもポイントなんて少ないんだから適当でいいのにねぇ」


「っ・・・」


 いつの間にか俺の目の前にもう一人の少年が立っていた。双子なのだろうか見た目がほとんどそっくりだ。


 声が少し男性のように聞こえるから少年だとは思うが、はた目には何方も少女にしか見えない感じに見える。


 彼がズボンではなくスカートを履いていたらわからないな。


「ま、僕はこのおじさんを護っていればいいかな。もう大丈夫だとは思うけどあいつら油断するとどこにでも湧くからね」


【ギャアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!】


「っ!?」


 真横でバケモノが叫び声を上げて倒れていた。


 即死したのだろう、そいつはピクリとも動かない。


 よく見ると口の部分に複数本のナイフが刺さっていた。


 思わず少年を見るとバケモノの口に刺さっていたナイフを何本も握っている。あの一瞬で投げつけて倒したというのだろうか。


「これで1匹。あーあ、見えてないから仕方ないとはいえ、助けたんだからお礼の一つくらい欲しいよねぇ」


「え、あ。悪い、助かった」


「うんうん気にしなくていい・・・よ・・・? え?」


 俺が助けてくれた礼を言うと彼は一瞬呆けた後、驚いたように俺を凝視する。


「もしかして・・・僕達の事、見えてる??」


「あ、あぁ。見えてるが??」


「うわぁ・・・やばいよマスター。この人【プレイヤー】になってる。殺した方がいいんじゃない??」


「なんてことだ・・・!? いや、それはだめです、彼に殺意を向けないように」


「んー、後々考えれば殺した方が良いと思うけど、マスターがそういうなら」


 一瞬死んだと勘違いするような殺気が俺を襲ったが、一瞬で霧散した。


 もしかしなくてもあの少女と少年が見えているってのがヤバイって事なのだろう。本来なら見えていないとかそういう感じなのかもしれない。何せあの流川があまり見せない困ったような表情で俺を見ているのだから。


「る、流川・・・」


「御堂君。すみませんが「助けてはい終わり」は出来なくなりました。放置しておくと貴方が死ぬ事になりますので」


「ま、まじかよ・・・」


「マジです。今は混乱して何もわからないと思いますので、ここの掃討が終わったら御堂君の家で詳しい説明をさせてもらいます。ここのクリアポイントは、「2000」か。このポイントを彼に渡すしかないな、とはいえまだ何も出せてないか」


 ぶつぶつと顎に指を当て考え込む流川。


 俺はやはりとんでもない何かに巻き込まれてしまったのだろう。そしておそらくそれには逃げ道がないって奴なんだろう。


 漫画とか小説とかで似たようなパターンは何度も見たが、自分が実際に体験すると「勘弁してくれ」としか考えつかない。


「暫くは付き添いですね。これは報酬はケーキになりそうだ」


「パパっ♪ ミッションクリアーしたよっ!!」


「あぁ、ありがとう「ジェミニ」達。助かりましたよ」


「んふ~♪ それじゃ今日は沢山撫でてね!」


「あっ! ずるい! 今日は僕もマスターとゲームで遊びたいんだからね!!」


 いつの間にか戻ってきていた少女が流川に抱きついて甘えている。


 その様子からは先ほどまでバケモノ相手に一方的な虐殺をしていた姿は欠片ほども見えない。隣では頬をぷくりと膨らませて反対側から抱きつく少年の姿もある。まるで父親に甘えている子供たちにしか見えないな。


「どうなってんだよ・・・マジでさ」


 俺は流川が二人の子供たちにじゃれつかれているという様子を痛む身体を抑えて見守るしかなかった。










―3話了

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