第4話 もうお腹いっぱいです。

のんびりと修正中です。

少しでも見やすくなっていたら嬉しいです。

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―自宅


 軽く応急手当を受けた後、俺達は自宅に戻ってきていた。


 「軽く応急手当」とは言うが、【ジェミニ】と呼ばれた子供たちが行う手当はゲームか何かの回復魔法かと言わんばかりの効果を齎してくれた。


 恐らく折れていたと思われる、わき腹の激痛も今では殆ど痛みを感じていない。彼等が用意してくれた応急キットを使ってもらっての簡単な処置でこれだ。


 流川曰く「魔法みたいなものだと考えてください」と詳しい説明を避けた。多分、流川自身分からないんだろう。後実際魔法みたいなものもあるらしい。SFから魔法まで何でもありますよとは流川の弁。


 家で少し休むとかなり思考もクリアになってきた。


 まだ完全に冷静とは言えないが、これから聞かされるだろうトンチキ話もある程度は理解して聞くことが出来そうだ。


 ちなみにあの二人の子供は流川のスマホで動画を見ている。子供っぽいとはいえ、自由なもんだ。


「さて。どこから話せば良いものか。そうですね、簡単に言えば僕と御堂君は

所謂デスゲームに巻き込まれました」


「デスゲームかよ、確かにあれはデスゲームって言われて納得出来るけどな」


「えぇ。一応こちらにも利益がある分、必死に生き残るだけのデスゲームよりはまだマシな可能性もありますけどね。だからと言ってやりたいかと言われれば僕も出来れば御免被りたいです」


「だよな、俺も勘弁してほしかった」


 この年齢になって今更非現実とか要らないんだよな。


 人生詰んでる訳でもない、普通に働いてれば満足に食う事も出来るし遊ぶ時間もある。


 趣味もあるし今更そういうファンタジーを持ってこられても困るとしか言えない。


「で、だ・・・流川。お前が・・・あー、その。呼び出したあの子供達ってやっぱり超能力とかそういうのなんだよな?」


「そうですね、超能力とは違いますけど」


 そういうと流川はガチャを回して一喜一憂してる二人を困ったような笑顔で見る。


「あの子達は僕の【魂】から生み出された、口さがない感じで言えば【兵器】です。」


「兵器・・・か。」


「えぇ。あの子達は【ソウルギア】僕達の様な【プレイヤー】が呼び出すことのできるこのゲームを生き残るための異能。唯一の手段です」


「異能・・・ソウルギア、か」


「えぇ。これに巻き込まれた者達は【ディザスター】と呼ばれる主催者が繰り広げている【ゲーム】をクリアしなくてはなりません。 参加は拒否できず、資格者は生き残るか死ぬか、廃人になるか」


「廃人て、いや・・・!?」


 その言葉で思い出す。


 最近情報アプリやテレビなどであちこちで【廃人化】した人間が発生しているというニュースを見た事がある。


 意思疎通も出来ずに、ただ生きているだけ。意識はあり反応はするがそれ以外はほぼ植物人間と同じになっているらしい。新手の病気か何かかと気にもしていなかったが―


「もしかしてそれって、テレビとかでやってる」


「その通りです。彼等はゲームのミッションで魂を砕かれ廃人になった人達ですよ。ディザスターは権力者と通じている可能性もあり、こういうことが起きても警察も何も動きません。動けても彼等じゃ何もできないでしょうけどね」


 あのバケモノ達を警察が倒せるかと言われれば、確かに難しいだろうな。


 銃弾は効くみたいだが、余裕で倒していたとは言え少女が何十発も撃ち込んで漸く倒せる感じなのだ。


 護身用に持ってる拳銃じゃあまともに当てられるかも分からないし、構えてる間に殺される方が早そうだ。自衛隊なら武器を準備してて情報も行き渡ってるなら倒せるかもしれないが。


「何にせよ僕達はディザスターが死ぬか、ゲームに飽きるまで戦い続けるしかないのでしょう。僕自身そこまで昔から関わっている訳ではないので細部に関しては分からない事ばかりです」


「成程な・・・で、俺もそのプレイヤーになった、と。生き残れる気がしないんだが? というか俺等はどうすればいいんだよ?」


「ゲームのミッションに参加することですね。ミッションにはいくつかのルールとクリア条件があります。それをソウルギアを用いてクリアしていくんです。モンスターを倒す簡単な物から、何かを護れと言うタワーディフェンスの様なものまで様々なものがありますよ」


「まんまゲームだな」


「えぇ、ゲームです。何せモンスターを倒したりミッションをクリアすれば

【ポイント】がもらえて、これを使ってソウルギアを強化したり、様々な物資を購入したり、ポイントを現金に換金することもできますからね。」


「遊んでるのかその主催者様はよ?」


「遊んでいるのでしょう。だからゲームなんですよ」


 人間を駒みたいに扱って主催者側として遊んでるか。


 本当にふざけた理由だな。


 「ディザスター」確か英語で【災害】とかそういう意味だった筈。確かにまさしく災害だ。巻き込まれたら逃げられないって意味でもな。


「念押しになりますが、このゲームのプレイヤーになった以上、御堂君は死ぬか、廃人になるかゲームクリアするまでやめることは出来ません。そしてこのゲームの参加資格は【ソウルギア】が見える事なんですよ」


「マジかよ・・・」


 つまり俺はあの子達が見えてしまったからゲームに巻き込まれたって事か。


 思わず畜生と叫びたくなったが、流川とあの子供達がいなかったらそれ以前に死んでいたのだ。俺は流川達に感謝こそすれ、文句なんて言える訳が無い。


 寧ろ巻き込まれた時点で参加が決定しているようなもんだろうし、こいつらは何も悪くないんだからな。


「これから御堂君はあらゆることに気を付けて生きて行かなくてはなりません。あまり誰かを信用しすぎる事の無いように。特に同じプレイヤーには細心の注意を払ってくださいね? 勿論それは僕に対してもです」


「な、なんでだよ!? 他の奴等はともかく流川までか!?」


「参加者が全員、仲良しこよしのいい子ちゃんじゃないって事だよ」


「っ、き、君はジェミニ、だったな」


「そう僕達はジェミニ。二人でジェミニさ。ソウルギアでマスターの武器でマスターの理解者で、それ以外はどうでもいいっていう、ね」


「プレイヤーが仲良し云々ってのは―」


 俺の問いに答えたのはもう一人の少女だった。


「いい事教えてあげる。プレイヤーがポイントを稼ぐ方法はいくつかあるの。モンスターを倒したり、ミッションをクリアしたり――」


 一拍置いて彼女は続けた。


「他のプレイヤーを殺したり、ね♪」


「なっ・・・!?」


「モンスターからもらえるポイントは意外と少ないのよね、ミッションクリアのポイントは貢献度による争奪戦。この中で一番多くのポイントを貰えるのが、他のプレイヤーを殺して、そいつのポイントを根こそぎ貰う事」


「そしてディザスターはプレイヤー同士の殺し合いを推奨してるんだ。何せ殺せば追加でポイントももらえるからね」


「なんだよ、それ」


 だからプレイヤーをあまり信じるなって事か。


 確かにそんな情報を聞いたら他の誰かを無条件で信じるなんてのは難しい。


 流川は、ここまであの二人に話させている以上心配する必要はないと信じたい。寧ろ俺を殺してもそんなポイントなんてないだろうしな。


「そういう人達をゲーム風に【PK】プレイヤーキラーって言うのさ。これに自身やソウルギアを破壊されたら全てを奪われて、同時に魂も死ぬからもれなく廃人さ。おめでとうある意味ゲームクリアだね。もうこれ以上苦しまなくなる」


「どれだけふざけてるんだよ、このゲームって奴は」


「僕達が巻き込まれてしまったのはそれが横行する現実です。あぁ、それと人型のソウルギアに対して戦って勝てると思わないで下さいね。たとえ見た目が儚い子供とかに見えても、ソウルギアは基本的に人間より強いんです」


「あの子を見て戦って勝てるなんて口が裂けても言えねぇよ」


「ひっどーい! パパの前では可愛い娘なのに!!」


 腰に手を当てて私怒ってますと言わんばかりに文句を言う少女。


 この姿だけ見れば騙される奴も多いんだろうな。


 実際俺も普通に騙されそうだし。


「最後に言い忘れてましたが、ソウルギアにはいくつかの種類があります。僕の様な【召喚型】何処かの特撮ヒーローのようにソウルギアを身にまとって戦う【変身型】最後に武器や防具、乗り物などを呼び出して戦う【装備型】です」


「必ず人が出てくるって訳じゃあないのか」


「召喚型は強いのですが色々大変ですよ。何せ本人はあまり強くなりませんし、あの子達には自我もあるので付き合い方も大切です」


「あー、俺の苦手分野だな」


「どれになるかはわかりませんが御堂君もプレイヤーになった以上ソウルギアを展開出来るようになっているでしょう。本来なら、助けて放置か、早めに芽を潰すか。ですが御堂君は僕の親友です、君が望むなら、暫くの間手伝いますよ」


「芽を潰すって、流川お前・・・」


「どうしようもない相手というのは、やはりどこにでもいるのですよ。出来るだけやりたくありませんけどね」


 疲れたように笑うその姿に、俺も流石に察した。


 そう言う人間がいて、そいつがプレイヤーになってどうしようもなかったんだろう。俺だったらどうだろうか、冷静にそいつを殺すことが出来るだろうか。


 恐らく、いや今の俺にはそんな芸当とてもできる気がしない。現実の世界に生きていた俺にはきっと出来ないだろう。


 情や云々と言った事ではなく、単純に恐怖と躊躇いで間違えてしまうかもしれない。


 だけど、流川はそれが出来たんだろうな。


 それはきっと殺人なんだろう。だけど、そうしなければそいつがほかの誰かを

欲望のままに殺してしまう可能性があった。もしくはそれをやっていたのならそいつを止めた流川を責める事は俺には出来そうもない。


「とりあえずは、御堂君もソウルギアを出してみましょうか。あぁ、下手すると巨大なタイプな可能性があるので外で出すけどね。前に家で巨大ロボ型のソウルギアを出して家を半壊させて自分も大怪我してリタイアになった人もいるらしいです」


「そ、そいつは最悪だな」


 巨大ロボなんて夢あふれるものだせたのにそのせいで人生終わったとか泣くに泣けないだろそいつ。


「でもソウルギアを出したら誰かに見られないのか?」


「この辺りにプレイヤーはいませんからね。プレイヤー以外にソウルギアは基本的に見えません。なのでここでは僕達しか見えないから大丈夫ですよ」


 促されるままに俺達は外に出てソウルギアを展開する事になった。


 俺のソウルギアは一体何になるんだろうか?


 チート云々は望まないので、せめて安心してミッションとやらをクリアできるような奴にしてもらいたいもんだ――




―4話了

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