第5話 等価値かと言われたら微妙ではある。
おいしいけーきだけたべていきていきたい(撃沈
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家の近くにある人気のない川にやってきた。
夏なら子供が良く花火などをしているらしいが、この時期にここに来るような子供はそうそういない。
今の時間もそろそろ日が回りそうなので辺りには誰もいなかった。明日が休日じゃあなかったらもうとっくに寝てるんだがな。あいにくと今の俺は嫌でも目が冴えていた。
――【ソウルギア】
魂の具現化した力か。
漫画や小説の定番と言えば定番に思える。他には血を触媒にしてとか魔力を固定化させて~云々だろうか?
最近なら異世界転生チートの方が便利で強そうではある。
無限の魔力とか地球のアイテム買えるとか持ち込めるとかそういうのあれば無双出来そうだな。このゲームで役に立つかと言われれば首をかしげるが。
俺も柄にもなくわくわくして・・・・いない。
正直な所、この後待っているのが生きるか死ぬかのゲームと言われて新しい力云々で喜べるほど色々と若くない。
誰か俺の代わりにゲームを引き受けてくれないだろうか?
ソウルギアとかいう力も明け渡すので誰か代わりに主人公をやってほしい。
こう言うのは見るから楽しいのであって、実際自分がやるのは罰ゲームでしかないだろう? 強くなれると言われても日本で強くなって何かいい事でもあるのか、と。
ポイントを使えば金が貰えるらしいが、普通に働いてもそれなりの給料が貰えてるしんな数千万とか数億とか手に入るって言われても、その後どうしていいかわからんよ。どうせ大したことにも使えないだろうしな。
「はぁ、今ならドッキリとか言われても笑って許せる気がするぞ」
「僕も同じ事思いましたよ、初めの時は。御堂君以上に慌てふためいて、泣き叫んだものです」
「俺だってお前が来てくれなかったら泣き叫んでただろうさ。その前に死んでたかもだが」
「という事は僕は命の恩人という事で。あれですねチーズケーキまた作ってください。スフレも良かったんですが僕的にはベイクドチーズケーキが好きでしたね。あのどっしりとした味がいいです」
「ケーキ!? パパっこのおじさんケーキ作れるの!?」
にゅっと頭を流川の前に割り込ませてきたジェミニの少女の方。
名前はちゃんとあるのだが、大切な名前なので俺に教えるにはまだ信頼度が
足りないとのことだ。少年の方も同じなのでどうやって呼べばいいか悩み所だ。
少年と少女でいいか。
「えぇ、彼の作るケーキは絶品です。一度食べたらその辺のケーキ屋のケーキなんて食べられませんよ? 前に高級店のケーキを食べましたが、それに勝るとも劣りませんでした」
「買い被り過ぎだって。俺はパティシエを諦めた男だぜ?」
「パティシエでなくても、美味しいものは美味しいと言う事ですよ」
「へー、見た目はガテン系のいかついおっさんだから似合わないね」
「よく言われる」
「どちらかといえばヤクザとかチンピラに見えるよね~」
やかましいわガキンチョと、心の中で毒づく。
口に出したらリアルできりもみ回転しながら吹き飛びそうなので。
俺は無駄なケガはしたくない人種なのだ。喧嘩とかやりたいとも思わん。
「パパ、辺りに人はいないよ。やるなら今かなぁ」
「見回りありがとうございます。では御堂君、ソウルギアを呼び出してみましょうか」
「お、おう・・・」
流石にドキドキしてきたな。
出来れば生き残れる強い奴が良いんだが・・・やめてくれよ?
俺がケーキ作りが趣味だからって【ケーキ作成キット】とか出てきたら俺は絶望する自信がある。
いや別にそれ自体は嬉しいが、生き残れるかって言われたら俺は全力で否定するわ。
「どんなタイプだろうね。変身系は本人が強かったら手が付けられないんだよなぁ」
「何戦う前提で話してるのよ」
全くだ、ジェミニの少女の方もっと言ってくれ。俺は友人に殺されたくないぞ。ついでに言うと全く勝てる自信がないぞ? 普通の人間が銃弾雨のように巻き散らす超人に素手で勝てるとかありえないからな?
「マスターにとっては親友でも、僕等が大事なのはマスターだからね、最悪はいつでも考えるよ」
「んー、そう言われたらそうね。でもおじさん見た目に反して人が好さそうって言うか、おかし作りおじさんみたいだし少しだけ好印象かな~」
「お菓子につられたか」
「つられましたがなにか?」
冗談を言い合っている二人。
流川はあの子達は武器みたいなものだと言っていたが――
「なんかこう、あれだな。こうしてみると本当にただの子供だな父親大好きな」
少女の方は後でケーキを振舞ってやろう。ケーキ大好きな奴には俺は基本的に優しいのだ。
「召喚型は自我を持つのが大半らしいですからね」
自我を持たないタイプもいるのか。それはそれでやり辛そうだな、自我がはっきりしてるのも難しいが。
「後、召喚型は基本的にマスター第一主義です。この歳でもう子供がいる感じですよ」
「よっ、パパさん♪」
「ははは、どつきますよ♪」
流川の目が据わっておられた。意外と冗談通じないんだよなこいつは。
「しかし召喚型だったか。女性が出てきても同じなのか? こう、好印象持たれるっていうか」
「そこです。召喚型で異性タイプが出てきた場合は【重い】ので気を付けて下さいね」
「重いのか・・・」
「えぇ、ヤンデレが可愛いレベルらしいですよ? マスターを害することはありませんが、それ以外に対しては容赦が一切ないですからね。他相手に色目など向けようものなら――」
「俺、変身型とか装備型でいいや。で、どうやればいいんだ? お前がジェミニを呼んだみたいな心にダメージが来る詠唱をすればいいのか?」
いざ呼び出すとなると何をどうしていいかさっぱりなので改めて流川に聞く。
あの時は半分意識が朦朧としていて半分位聞き取れてなかったが、何かこう右目が疼くとか左手の封印が、とか言いたくなる言葉を唱えていた筈だ。
「中二病ではないので安心してください。あれは僕がポイントを消費して手に入れた強化召喚のスキルなんです。ステータスにバフが・・・あぁ、後でアプリを入れておかないとですね」
「え? アプリとかあんの?」
ディザスターって何なんだよ。
そういう所手厚いのかよ、それならもう少し安全なゲームにしてくれねぇかな。
「ありますね。これがゲームだというのが改めてよくわかりますよ。ポイントの管理や自分やソウルギアのステータスも見れるようになりますし、オンラインショップもポイントで利用できるようになりますから。あとでポイントを渡しますのでソウルギアを出し終わったら導入しましょう」
ステータスと来たか。
どういう理屈で自分たちの能力を数値化してるのかしらんが、陳腐過ぎて笑えてくるな。全く笑えないけど。
「では改めてやりましょうか。やり方は単純です、ソウルギアが出るように強く念じてください。下手に力を籠める必要もありません。プレイヤーになった時点でソウルギアを展開できる力が自動的に付与されていますから」
「至れり尽くせりで嬉しいねほんと」
俺は言われるままに力を抜いて手を前に出して念じ始める。
手を前に出したのは特に意味はない、こっちの方がなんとなくやりやすい気がしただけだ。
「・・・・出てこい! 俺の【ソウルギア】!!」
体中が熱くなるのを感じる。
今まで感じた事のない力というのが体中を渦巻いているのが分かる。
俺はそれを外に、腕の先に押し出すような感覚を念じながら大きな声で叫んだ。同時に身体の熱が一気に放出されるような脱力感を感じて目を開いた――
開いた目に映ったのは、流川がジェミニを呼び出した時の様な光。
ひと際強く発光すると、「それ」は現れた―――
「・・・あれが、俺の、ソウルギア・・・・」
「フラグだったみたいですね。召喚型、それも異性タイプのソウルギアですか」
光が収まり、それ―ソウルギア―はゆっくりと地面に降り立った。
暗闇の中、月の光が彼女の腰にまで届いている髪の毛を銀色に照らしている。
センスのない俺ではわからないが、黒と白で彩った衣服を身に纏う姿は、思わず息を呑む美しさを感じた。
「・・・」
彼女はゆっくりと目を開いて直ぐに俺の胸に飛び込んできた。
「ちょっ!? お前っ!?」
「【ソウルギア:サイレーン】会えてうれしいよマスター。これから頑張って生き残ろ?」
サイレーンと名乗った彼女は俺の胸に顔を擦り付けながら甘えたような声で言う。
俺と言えばいきなりリアルでも滅多に見ないレベルの美人が俺に抱きついてきたと同時にそんな行為をされてしまって頭がまともに働いていない。
「は、離れろって!?」
「んー、マスターの匂いをつけるのは大事。これは仕方のない事だよ、はい論破」
「論破じゃねぇよ!? 流川!? これどうすればいいんだっ!?」
慌てて流川に助けを求めるが、あいつは悟ったような顔で無慈悲に答える。
「人のソウルギアにちょっかいかけて死にたくないので諦めてください。言ったじゃないですか、異性タイプは重いって」
「出会って秒も経たずに好感度100%とかありえねぇだろ!?」
「彼女は御堂君の魂から生まれたものですからね。秒所か存在した瞬間から好感度MAXですよ。それに僕の所のジェミニも似たようなものですし」
「そうでしたね!? ぬあああ!? 背中に腕を回すな!? 足を絡めてくるなーーー!?」
俺一人だけのトンチキ騒ぎはこの後5分位続いたのだった。
先が思いやられ過ぎる――
―5話了
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