第6話 なぜ説明回があるかと言えば説明しないとわからないからだ
説明回は割と必須ですよね。
漠然と進めるとファルシのルシがコクーンでパージみたいな感じになってしまうので
ですが事細かに説明するとそれはそれでファルシのルシがコクーンでパージ的な感じになりますから匙加減が必須です。そして読んでいるとそういう説明回は割とスルーされる事が多い現実。
──────────────────────────────────────
―自宅
「まふふぁー、んぐ、わらひ、まふらーのらめにれんりょくで、もぐ、がんばるお」
「食ってから喋ろうな?」
すったもんだの後、俺達は直ぐに家に戻ってきた。
ソウルギアとはいえ腹は減るらしいので、取っておいた残りのケーキを彼女―【サイレーン】に食べさせるとすごい勢いで食べ始めた。見る見るうちに消えていくケーキ、余程腹が空いてたのかもしれん。
それとも初めて食べる物だからなのか俺のケーキだからなのか、単純に食い意地が張ってるのかよくわからんね。
後、会話するときは食べ終わってからにしろ。折角の美貌が台無しだ。
因みにあの後すぐ、流川は仕事の呼び出し連絡が来てしまい俺にゲームのアプリの事をなどを簡単に伝えた後急いで戻る事になった。
あいつもあいつで色々忙しいのだろう。
一応メールが直ぐに送られてきて詳しい事はそこに書かれていたので、早速インストールしておいた。
アプリは簡素な作りと思いきやかなり作り込まれていて、普通のゲームアプリのように見える。
最初に登録画面が出てきてそこに指紋認証させればいいらしい。
この時プレイヤーではない人間が認証をしても絶対に失敗するそうだ。勿論俺は成功してしまった訳だが。
そこには所持ポイントや獲得スキルやステータスなどが詳しく掲載されていた。ほんと、これどういう理屈で分かってるんだろうな。
まずは俺のステータスだが。HPやMPとかそういうのは載ってないな・・・
──────────────────────────────────────
【プレイヤー:御堂友樹(ミドウトモキ)】【所持ポイント:0】
【LEVEL:1】
【ステータス:パワー:2 マジック:0 ガード:1 レジスト:0】
【スキル:ソウルギア:サイレーン】
──────────────────────────────────────
しょっぱいなぁ。
召喚型は本体は弱いと言っていたが、こんなものなんだろうか?
流川のステータスはどうなってるのか見てみたいもんだ。
そしてページをフリックしてサイレーンのステータスを確認したんだが――
──────────────────────────────────────
【ソウルギア:サイレーン】
【LEVEL:1】
【ステータス:パワー:0 マジック:0 ガード:0 レジスト:1】
【スキル:ブレイブシャウト】
【スキル:ヒーリングボイス】
──────────────────────────────────────
「ちょっと待とうぜ? え? これ、お前さん戦えるの?」
「んぐ。はふ・・・ごめんねマスター。私、完全支援タイプみたい。前衛で戦うのは厳しいかも。本当はマスターの代わりに前で戦いたいのに。ごめんなさい」
「あ、いや、それは仕方ねぇって」
先ほどまでの笑顔から一瞬で申し訳なさそうな悲しい表情になるサイレーン。
自分が戦えない支援系だと判明してかなりつらそうな表情をしている。
「それに、支援系って事は俺にそれを使えば俺が戦えるって事だろ? 十分だっての」
俺は直ぐにサイレーンを慰めた。彼女が居なきゃ俺は一人で戦わないとならんのだし、俺としては女性に前にでて戦ってほしいとはあまり思えない。
「でも、マスターが痛い思いするのは、私嫌だ・・・前衛系だったら嬉しかったな」
心の底からと言わんばかりに言う彼女。
ソウルギアにとってマスターは何よりも大切な存在だと流川は言っていた。
事実彼女は先ほど生まれたとは思えないほど俺に懐いている。俺が傷つく位なら自分が―と本気で考えているのが分かった。
「とりあえずスキルをみてみようぜ? 支援系のスキルなんだきっと俺が楽に戦えるようなスキルだと思うしな」
「そ、そうだね! マスターの役に立てるのは嬉しいよ」
まずは【ブレイブシャウト】をタップして見てみる。
直ぐに説明文が出てきた。
─────────────────────────────────────
―【ブレイブシャウト】
―自身のマスターのみに効果。
―パワー:+7 マジック+2 ガード+5 レジスト+5
―マスターの精神的恐怖を大きく緩和
―マスターの物理的な苦痛を大きく緩和
―マスターの自然治癒力を大きく上昇
―ミッションのモンスターに対し、更にパワー+3
―効果時間【24時間】または【ミッション中永続】
―この効果はソウルギアが死亡するか、効果時間までか解除するまで持続する。
―このスキルはソウルギアがレベルアップすると強化される。
─────────────────────────────────────
「クッソ強えぇ・・・」
俺のステータスのパワーが【2】だというのに単純で3倍になるってどういう事なんだよ。
それにあの化け物に対しては更に+3になるという事は合計で5倍になるんだが。
その他にも精神的恐怖を緩和って言うのがあった。これがあれば俺もあいつらに対して恐怖を感じずに戦えるって事かもしれん。
はっきり言ってあいつらとまた戦えと言われたら二の足を踏む所だった。
サイレーンが戦えないと聞いてヤバイとも思ったが、これなら俺も戦えるかもしれない。どこまで緩和してくれるのかは分からないが。
「これなら、マスターの役に立てるかな?」
「あぁ、十分以上だろうさ。それに暫くの間は流川も手伝ってくれるそうだしな、PKとかにも対処出来そうだ」
「よかった・・・あ、もう一つの方は回復能力だと思う、私自身そんな感じで使える気がするから」
「名前もヒーリングボイスだしな。俺もそうだと思うが一応調べてみるか」
─────────────────────────────────────
―【ヒーリングボイス】
―生命体にのみ効果。
―対象の怪我や疲労を回復する。
―効果範囲は声の届く範囲の使用者が望んだ対象一体のみ。
―回復効果は一瞬。
―ソウルギアのレベル×3回まで使用可能。
―レベルが高くなるほど回復効果が上昇する。
―レベル3で四肢の切断や重篤な病気も回復可能
―レベル4で瀕死なども回復可能
―このスキルはソウルギアがレベルアップすると強化される。
─────────────────────────────────────
「なんだよこれチートかよ」
「声が届くならどこでもいいってすごいなぁ」
サイレーン自身自分のスキルを詳しくは分かっていなかったらしい。
やはりこのアプリは必須なんだな。知らなかったら色々デメリットばかり抱えたまま戦う事になってたんだろう。流川様様だ。
◇◆◇◆◇◆◇◆
―1時間後
あれからアプリでステータスを詳しく調べたり、アプリについて色々見ていた。
どうやらこのアプリを入れておけば【ミッション】が近場で開始された場合連絡が来るらしい。これでうっかり参加を忘れて死亡ってのは回避できそうだ。
というかこのアプリは基本的にこれから先必須なんだろうな。スマホや携帯が使えないやつはどうすりゃいいのか。多分死ぬしかないんだろうなぁ。
ちなみにこいつは詳細な地図も見れるらしいし、相手がモンスターなら場所も検索できるのは便利だな。一々探し回らなくて済むのが良い。
「これが生き死に関係ないゲームだったら万々歳なんだがなぁ」
「だね、そしたらマスターとイチャコラだけして生きて行けるのに」
「せやな」
このぐいぐい来る感じ・・・彼女いない歴=年齢の俺には厳しいぜ。
「あー、こほん。所でなんだが。サイレーン、君はどこまで現状を理解してる?」
「ん。【ディザスター】が戯れに始めた【ゲーム】で、参加者はクリアするか廃人になるまでゲームを降りられない事。ゲームはランダムに発生して【モンスター】を倒してポイントを獲得すること。ポイントで成長したり、欲しいものを手に入れたりしてクリアまで生き残ること、だね」
「らしいな。後は、ゲームには【シーズン】があって、大体【半年】に1回開催されるらしい。そして【シーズン中のゲーム】を一定数クリア出来たソウルギアマスターは特典として【次のシーズン】だけは参加を免除してもらえるらしいな」
免除して幾許かの日常を謳歌するのもいいらしいが、それらを返上して次のシーズンも参加してもいいらしい。
何が悲しくて折角の安寧をと思うが、その場合は免除の代わりにかなりのポイントを貰えるそうだ。
というか、必ずポイントとして付与されるので【免除権利】を取っておいたまま何回かクリアして1~2年連続して免除してもらうってのは無理らしい。
素直に免除してもらうか、ポイントや成長の為に戦い続けるかのどちらかだ。
「シーズン後、つまりクリア後は大量のポイントがもらえて、次のシーズン開始までの約1~2か月は自由期間になる。ただ、ソウルギアマスターとしての力は、日常でも消えないから、他のマスターに狙われる可能性はある、だよね?」
「あぁ。寧ろPKとかはそういう期間に他のプレイヤーを狙うって話だからな。自由期間とはいえ油断はできないって事だな」
折角の戦う必要のない時間だというのに、その間も他のPKから狙われる可能性を考慮しないとならんとか、プレイヤーになったら心休まる時期なんてないのかもな。
流川はよくこんなふざけたゲームを耐えていられるもんだ。
そんな理不尽ばかりのゲームだが、一応救済措置はあった。
「【LEVEL10】になるか【1億ポイント】を稼げば【永久免除】となってゲームに参加しなくてもよくなるみたいだね。しなくてもいいだけでポイントが欲しいなら参加自体は出来るし、だからと言って永久免除は取り消されない、かぁ」
「ついでに言えばPK行為は全禁止になるそうだ。逆に他のPKから攻撃されなくなるらしいから、純粋にミッションだけに集中できるって話だが、今現在永久免除になったプレイヤーは居ないそうだぞ」
「多分レベル9とかポイント間近の時に理不尽に殺されてると見たよ?」
「あぁ俺もそう思ってる。本当にひっどいものに巻き込まれたもんだ俺も流川も・・・」
こんなゲームを開催してる奴が、素直に永久クリアなんてさせてくれるなんて考える方がアホだ。
いつまで生きてられるか分からないデスゲーム。誰を信じていいか分からないし、そんな疑心暗鬼な状態でまともに戦うってのも無理難題だ。
ディザスターさんはどれだけ性格悪いんだろうな。
「力なんて要らないからなかったことにしてもらいたいもんだ」
「わ、私・・・迷惑、かな?」
「いや? 正直滅茶苦茶タイプだし可愛すぎるから、居てもらうのは問題ありませんが何か? 寧ろ俺大勝利だな」
「か、かわっ・・・! 私も、格好いいマスターで嬉しいな・・・♪」
目に異常が? と、つい突っ込みたくなるが思いとどまる。
見た目は全身黒く焼けたスキンヘッドのくたびれたおっさ、お兄さんだ。
勿論悲しい事に容姿でモテた事はない。そりゃ醜いとは言わんがどこにでもいる普通の容姿だ。これも流川が言っていた「人型は基本マスター至上主義」って事なんだろうな。
戻る最中に流川はソウルギアについてこう言っていた――
─────────────────────────────────────
『 ソウルギアはどのようなものであれ、【マスター】にとって最高になる存在です。そして意志を持つタイプならば、なによりも【マスター】が大事な存在になります』
『同性ならば、気心の知れた相棒に』
『異性ならば、何よりも大切な存在に』
『御堂君は異性タイプのソウルギア。気を付けてくださいね? 彼女にとって貴方の敵は全て敵になる。思考パターンが【召喚者とそれ以外】になりますので』
『僕の【ジェミニ】の場合は、男性と女性タイプなのである程度融通が利くのですが、どうにも性格が子供なので結構大変です。ちなみに、召喚者以外はどうでもいいと言いましたが、召喚者同士が仲が良いなら彼等はちゃんと融通してくれます。うちの子達は性格とんがってますが』
『今回のミッションは既に終わったので、次の開始は早くても来月になるでしょう。 今回のシーズンはあと3か月。その間のミッションは全て僕と参加してもらいますよ? 勝手に知らない所で親友に死なれちゃ困るんです精神的にね』
『あぁ、後僕のレベルは4です。大先輩なので、敬う代わりにケーキ作ってくださいね?』
─────────────────────────────────────
――スター? マスター? どうしたの、ぼーっとして?」
「ん、あぁ。さっき流川から聞いた事思い出しててな。次のミッションをどうやって生き残るか考えてた」
異性のソウルギアは重い云々の話はあえて伝えずにスルーする。危機管理能力は高いのだ。
「ん、完全支援じゃなくてジェミニみたいな戦闘系だったらマスターに怪我させずに戦えたのにな。マスターが怪我のするの、嫌だ」
「おいおい、話がループしてるぞ? 大丈夫だ、その為にサイレーン、君が居るんだからな。その支援効果で俺を護ってくれ」
「っ!! うん!! 任せてマスター!!」
「あぁ、これからよろしく頼むぜ俺のパートナー」
「うんっ!」
―6話了
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます