第7話 「嫌でも続く日常」とは言うが日常が無い生活は地獄

土木作業のお仕事は知人から色々教えてもらいました。

やはり詳しい情報があると書きやすいですね。あさねこは体力が無いので

こういう力仕事は全然できないので、羨ましい限りです。

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 ユンボ。


 バックホゥや油圧ショベル、パワーショベルと呼ばれる掘削作業用建設機械の事だ。何やら色々謂れなどはあるらしいが、そんな物知らなくても動かす分には何の問題もない。


 俺の仕事はこのユンボを使っての現場の掘削作業だ。


 最初は力強く、後は繊細に機械を動かしていく。


 免許を取るまではこんなものどうやって動かせばいいんだと思っていたが、ゲームのコントローラーやパソコンのキーボード宜しく、使い続けていけばどれだけ技術がなくても使い方を覚えていく。


 それでもぎこちない操作になる奴はあまり才能がないが、才能が無いなら無いなりに毎日必死に仕事してりゃあ何時かは報われる。


 こういう機械を使えるか使えないかで俺達の給料は大きく変わるのだから必死になるというものだ。


 掘削作業は簡単そうに見えてかなり精神を消費する作業の一つだったりする。


 「ただ掘ればいいだけだろ?」と作業の事を知らない人は簡単に言うかもしれないが、俺達だってそんなただ掘ればいいだけならそんなこと言わない。


 理由は簡単で「地下にどんな管か電線」などが眠っているか分からないからだ。


 掘ってる最中に水道管などぶち破ろうものならその日1日の仕事はほぼダメになるし、修繕の為に専門業者を呼ばないといけない。


 それだけでどれだけのマイナスになるか。


 電話線とかやらかそうものなら1億とかそういう金が飛ぶこともある。


 あとユンボのアームは結構高く伸びるので、電柱の近くで使えば電線をぶった切るなんて事故もあるのだ、想像するのも恐ろしい。かくいう俺も、始めたてはよく水道管とかを壊したもんだ。


 冬も近づいているとはいえ、まだまだ日中は暑い。


 古いタイプのユンボじゃエアコンもついてないのでかなり暑くて蒸す。


 そんな汗だくの状態で意識をしっかりと保ち精神を研ぎ澄ませながら俺は作業を続けていく。掘った土をダンプに淹れ、掘った土をダンプに淹れ、たまったらクラクションを鳴らして捨ててきてもらう。


 戻ってきたら同じことの繰り返し。集中するのも大変だ。







◇◆◇◆◇◆◇◆






―昼。


 12時にはそれぞれ車や休憩所などで思い思いに休憩を取る。


 この時間が仕事の一番の安らぎの時間だ。俺は朝作ってきた弁当を広げ早速食べ始める。ガッツリ食えれば良いだけなのでおかずも肉類ばかりで占めている。焼けばいいだけだし楽だからな。後は御飯と梅干でかっこんでいく。


「あー、今日は残業せずに済みそうだな」


「そっスねぇ。あ、御堂さん、今日はケーキないんスか?」


「あー、昨日作った分は知り合いに全部食われた」


「ひでぇ!?」


 最近入ってきた後輩。


 まだ20歳になったばかりの若造だが、体力も根気もあるのでうちの奴等には気にいられている。


 この業界力自慢とか金が儲かるからって理由で結構色々人は入ってくるんだが、実際仕事となると肉体労働がきつくてやめる奴が続出する。


 下手すりゃ翌日から来なくなった奴もいるからな。


 大体不真面目な奴は一月か長くても三か月程度で辞めていく。


 こいつは18の頃、卒業と同時にウチに入ってきて予想と反して根性を見せてくれた。残業上等で色んな事を俺達から吸収して学んでいく。


 その様子はかなり真面目でそういう奴ほど俺達は将来の同僚として可愛がられる。こいつが仕事を出来るようになればそれだけ仕事が楽になるからな。それに人懐っこい点も好印象だろう。

 

 この仕事50歳や60歳を超えた人もそれなりに多いからな。


 そういう人達から見れば可愛い息子とか孫みたいな感じで接することができるのだ。そしてそいつが教えたことをちゃんと学んで仕事に活かす、これほど教え甲斐のある可愛い奴はいないだろう。


「来週あたり作ってきてやるよ」


「あざーっす! めぐみも喜ぶッスよ!!」


「彼女には普通にケーキ買ってやれよ」


「仕方ねぇっス。店で買うより美味いのが悪いんスよ」


「金取るぞテメェ」


「くっ・・・ホール3000円までなら!!」


「マジにとんなっつの。わかったわかった」


 こいつが真面目なのは結婚を誓った彼女が居るからだ。


 俺なんてこの年まで彼女なんて居た事ないのに、世の中上手く立ち回れる奴が

成功していくのかね。


 いやまぁ、今の俺は家に帰れば超絶美少女が居るんだが。


 今サイレーンは家で留守にしている。

 

 流石に仕事現場には連れていけなかった。どれだけ騒がれるかってのとデスゲームに巻き込まれた云々なんざ誰も信じないし、同僚たちを巻き込むなんて出来ないからだ。


 流川がやっていたように一時的に召喚を解除して何かあれば呼び出すってのも考えたが、今日は特に深く考えずにこうしてみたのだ。


 デスゲームに巻き込まれたからと言っても、俺の日常が急に変わる訳じゃあない。


 異世界に飛ばされたとか転生したとかなら兎も角、今回の場合は非日常が日常に割り込んできた、そういう状態だ。


 仕事をクビにされないためにも仕事には来るしかない。


 最悪は社長に話して暫く休ませてもらう手もあるが、今は仕事の追い込み時期、早々休む時間は取れるもんじゃあない。


 1日2日程度なら兎も角、1シーズン大体半年休ませてくれなんて言おうものなら、流石に信頼がそれなりにある俺でも「明日から来なくていいぞ」になる。


 ちゃんと流川にもサイレーンを置いてきても大丈夫だったかメールしておいた。


 直ぐに返信が来た。ラ〇ンとかは俺はやってないんだよな。よくわからないんだ。


【出来るなら召喚解除していつでも呼び出せるほうがいいのですが、御堂君は現在なり立てな上に、最低限のポイントしか持っていませんからPK的にも倒す危険性こそあれどメリットはほとんどないですし、運悪く見つかったとしてもスルーされる可能性は高いです。あと、僕は仕事を両立出来てますが、最悪仕事をやめた方が良いでしょうね。あぁ、生活については安心してください。ポイントはそれなりのお金になりますから】


 という有難いお言葉を頂いた。


 あの後、流川から【100】ポイントがアプリに送られてきた。


 このポイント。俺のレベルを上げるためや、スキルを獲得、物資を購入などに使える他に、この前も聞いたが金に換金できる。そしてそのレートが割ととんでもなかった。


 なんと1ポイント=1万円だった。


 つまり流川は俺に100万円ポンッと投げ込んできた訳になる。俺の魂から生まれたからか金の価値については俺と同等の認識のサイレーンと共にえらいこっちゃと騒ぐ羽目になった。


 ならばすぐ換金―――とはいかないのがこのゲーム。


 実は俺のレベルを2に上げるのに必要なポイントは【1000】だった。


 1000万円だ。生き残るために必要とは言え、1000万円使わないと俺のレベルが上がらないと言われて軽く絶望しかけたが、更にもっと恐ろしい事を流川から聞かされた。


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2レベルに必要なポイント:1000

3レベルに必要なポイント:8000

4レベルに必要なポイント:20000

5レベルに必要なポイント:100000


スキル獲得、レベルUPに必要なポイント

スキル獲得:2000 ※購入ポイントはランクによって変動する

スキルレベル2:4000

スキルレベル3:8000

スキルレベル4:16000

スキルレベル5:32000

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 3レベルになるために必要な累計ポイントが9000。9000万円です。


 ふざけるなと言いたい。そんな金があったら俺は田舎に引っ込んで好きな事をやってケーキを好きなだけ作り続ける人生を送りたいよ切実に。


 今なら可愛いサイレーンも居るから人生ハッピー間違いなしだ。出来ないのは分かり切ってるが。


 後、逆にこれ金持ちならすぐにレベル上げられるのかと思ったが、ポイントを金に変換は出来ても、逆は出来ないらしい。大金持ちが金にモノを言わせてレベルUP、永久免除とかそういうのはないそうだ。


 流川からもらった100ポイント。現金で考えれば大金だがレベルUPやスキル獲得には全く使えないという半端な感じだった。


 一応物資は買えるのでこれで武具を整えてくれと言われたから、今日帰ったらサイレーンと二人で決めようと思う。


「はぁ・・・鬱になりそうだぜ」


「どしたんスか? 困った事なら金の相談以外なら俺手伝うっスよ?」


「なんでもねぇよ。ほら、そろそろ昼も終わりだ。お前倉庫からリール持ってきておけよ?」


「うっス!!」


 大変な仕事。


 だがこれも日常と言えば日常だ。


 同僚の全てが良い奴って訳でもないが、それでも仕事をする分には何の不満もないこの場所。俺は近い内に捨てることになるんだろうか。そう考えると、陰鬱とした気分が晴れる事は無かった。



―7話了

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