第118話 一人で勝手に進化してろ
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体調がわりとあかん状態ですがいきてます(ぱたりこ
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―スピネル視点
想い馳せる。
思い馳せる。
あの日の事を―
あの時の事を―
私がまだ自分に絶望していなかった頃を。
基本的にプレイヤーは誰も彼も大体が不幸だと言う。
この表面上は平和な日本で、死ぬ心配はそこまでしなくてもいい分、それは確かに不幸なのだろう。
一歩間違えれば死ぬような世界、大体の人間は望んでいないだろう。
私にとっては天啓だったが。
そう、私は【望んで】プレイヤーになった一人だ。
だってそうだろう強さを手に入れられたのだ、そして生き残りさえすれば、ポイントが手に入る。食べ物を食べる事だって出来るのだ。それがどれだけ幸せな事か、のうのうと暮らしている奴等には分からないだろう。
望まれず生まれた人間がどんな目に合うか、どんな境遇で生きているか、そんなの実際体験しなければ分からない。
誰もが敵で、頼れる存在はいない、母親は敵で父親らしき存在は下種だった。おぞましいが私は母親に似てそれなりに見た目が良かった。子供の時から見た目が良かったようで、それが更に母親の癪に障ったらしい。
食べ物なんてほとんど食べられず、物心ついた頃には既に飢えていた。それでも飢え死にせずに済んだのは、屑の様な両親だが、ある程度の世間体と腐り果てた欲望の結果だろうか。
小学校での給食が命綱だった。給食に出るパンのあまりをこれでもかと貰ったりして変な目で見られたことがあるが、だからどうした。そんな程度で飢えずに食べられるのなら好きなだけ見るがいい。
お前達は家に帰れば、優しい両親が美味しくて暖かい料理でも出してくれるのだろう。日々の体験を話しては賑やかな時間が過ぎていくのだろう。
そんなもの私にはなかった。そんなものなかったのだ。
母親は私を疎み、父親だった男は私に下劣な感情を向けてくる。何も知らなかった私ですら恐怖を感じる程のいやらしい瞳は今でも覚えている。
思い出すのもおぞましい。嫉妬で母親が止めていなければ私は清い体ではいられなかった。あの時ばかりはあれに感謝している。例え嫉妬心から邪魔したのだとしても、一応は救われたのだから。
だが、それ以来私に対する母親のネグレクトはひどくなっていった。小学校を卒業する頃には既に満足に食事も与えて貰えず、下種は私の事があって別居、最低限の食料のあても尽き欠けた時、それは起きた―
私は飢えを凌ぐために夜遅く出て行っている。
夜中に出て行けば見つかる心配もない。そこでごみを漁り、食べられる物を探すのが日課になっていた。思考能力も落ち、常識も何も知らない私には警察や児相に助けを求めるという事すら分からなかったのだ。
そして【運よく】私はミッションに巻き込まれ、プレイヤーになった。なれたのだ。更に運よく、そこには小学校の時の同級生のプレイヤーが居た。お互いにクラスメイトだった程度に間柄だったが、良くも悪くも私達は学校では有名だったので、私も相手もお互いの事をある程度知っていた。
【
もしかしたら仲良くなれたかもしれない可能性があり、同時にそんな事は絶対にないと言い切れるそんな男。
バトルネーム【レヴォリューション】一人で勝手に進化してろ。私を巻き込むな。
匠は巻き込まれた私に最低限ではあるが、プレイヤーの事、ソウルギアの事を教えてくれた。戦い方もポイントを使って好きな物を買う事も強くなれる事も一応は教えてくれた。ただ覚えている、あいつは基本的に面倒くさがりで、私にも最低限教えたらそれでおしまいという。
結局私があいつから教わったのは1回目のミッションでの戦い方だけ。私自身ゴミの様な人生、ごみの様な両親のせいで既に今みたいな状態になっていたので、お互いがお互い、最後まで信頼もすることなく、それで別れた。
そんな奴がレベル4のプレイヤーとは中々に冗談が酷い。今でこそジェミニ様はレベル5とあんなやつよりずっと上だが、聞けばあの男ずっとレベル4だったらしい。私の大切なジェミニ様・・・流川様と同じレベルとかとことんまでむかつく奴だ。
今回ケーキ屋さんの誘いを断ったのもそれが理由の一つだ。報酬は悪くはないが、私的には流川様の為に色々やる事があるし、ケーキ作りも頑張らなくてはいけない。あいつと再会しても話す事はないし、あいつの方も下手すりゃ覚えてないだろう。それだけ適当な男だったのを覚えている。凡そ小学生、現中学生とは思えない奴なのだから。
だがまぁ、敵とは思っていない。積極的にかかわろうとは思わないが、流川様とケーキ屋さんの敵にならないのなら、事と場合によっては協力するのも吝かではない。
何にせよ、あいつのお陰で私は腐るしかなかった人生から解放されたのだから。下手すれば死ぬ? それは日々誰にも愛されずに飢えと戦う事よりも辛い事なのだろうか? 死ねば終わりなのだから寧ろそれ以上苦しまずに済んでいい筈だ。
ミッションクリアでレベル2に上がった時、私の世界は変わった。生まれて初めて美味しいものを食べて、涙は嬉しくても流れるって事を初めて知った。
母親は数日振りに戻ってきた私を心配する所か「なんだ、生きてたんだ」と言い放ち悪意ある表情で「そろそろ身体を売る事でも覚えた? よかったわね私の良い所を引き継げて」とまで言い放ってきた。
殺す価値もない、単純に力を解放し少しばかり脅し付け、慰謝料と言う事で持っていた財布を丸ごと貰って出ていってからどうなってるかは知らない。下種にはあってないし、出会ったら殺してもいいかもと思っている。
その日私は【新島愛華】という名前を捨て【スピネル】になったのだ。
そこからは好きな事を沢山覚えた。美味しいもの、ゲーム、そしてインターネット。特に掲示板は私みたいなのでも普通の人間で居られるからよく常駐している。勿論今でもだ。
誰にも頼らず、敵対する者には容赦しない。
好きな事の為に、これからの人生を楽しむために、私は積極的にミッションに参加し、戦い、敵を倒してきた。
さて、もう一度言うが、私はあの母親、いやあの女に似て、見た目だけはそれなり以上に良い。中学生になった今では高校生と間違われる時もあるほど大人びているように見えてるらしく、それで見た目も良い。
そんな私が仲間を作る事無く、たった一人でプレイヤーをやっていればどうなるか。
答えは簡単、プレイヤーの中にもあの下種の同類が多く居た。
プレイヤーキラーではないが、女性プレイヤーを数をそろえて乱暴する、そんな屑共に囲まれた。それもミッション中にだ。
ベラベラとそいつらは悪役の解説役の様に話していた。こういうタイミングだからこそ、外にはバレないし、他のプレイヤーから邪魔される事はない。ここで死んでもモンスターのせいに出来るし、やりたい放題できる。
恨むなら一人なのと見た目が良い自分を恨め――圧倒的な悪意が私を襲う、何人かは倒せたが数で結局押し切られ、ソウルギアをはがされ、服も破かれ、後はあの時の下種の再来・・・結局私はこうなる運命なのか、それならせめてこいつらが喜ばない様にと自決しようとした時にあの方は颯爽と助けてくれたのだ。
双子のソウルギアは下種共を戦闘不能にまで追い込みつつも誰一人殺さず、だがまともに戦う事も出来ない状態にしていた。
裸になっていた私に暖かいコートを羽織らせてくれた、初めて誰かに心の底から心配されて、助けてもらった。あのレヴォリューションだってそこまではしなかった。
子供だから助けてくれたのかと思ったけど、違った。あの人はこう言ったのだ。
「困っている人がいるなら、苦しんでいる人がいるなら、助けるのが人間だろう? と僕が尊敬している人の言葉です」
今ならそれを言ったのがケーキ屋さんだとわかってる。だから私は流川様の次にケーキ屋さんに信頼を置いている。あの方が信頼している人なのだから、私が信頼しない訳にはいかないだろう。
それに私の事もよくわかってくれているし、応援もしてくれているのだ。頼もしい味方が出来た気分だった。
私を助けてくれたジェミニ様・・・流川様。私が人と言う存在を好きになれた初めての人。あれ以降も何度も何度もミッションで居合わせては助けてくれた。残念な事に、あの方にとっては助けてきた大多数の一人でしかなかったけど、それでも私が恋焦がれ、このふざけた人生に漸く意味を感じられた人だった。
今の私は幸せの中にいる。
手を伸ばせば届く距離に、流川様が居る。
私が心の底から信頼できるケーキ屋さんがいる。
敵対しない仲間が一応いるし、ここなら美味しいものも沢山食べられるし、好きな事も自由に出来る。人生を悲観して終わらせなくてよかったと改めて思う。
だから私はディザスターに感謝している。
アクセルは嫌いみたいだが、私にとっては人生を切り開かせてくれた存在だ。まぁだからと言ってプレイヤーキラーになるつもりはないし、何かしらするつもりはない。強いて言えばミッションに参加して戦う事だけは続けるつもりだ。
それを考えればレヴォリューションが持ってきた今回の依頼、流川様へのケーキ作成やシーズンオフじゃあなかったら参加しても良かったが、今の私はそれよりも大事な事が沢山ある。
「・・・ケーキ屋先生がいっていた。ケーキは1日にしてならず、毎日やっても足りないからたくさんやるべき」
ケーキ屋さん先生。
私頑張ります。流川様に捧げる最高のクリスマスケーキは私が作る・・・!!
―118話了
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現在幸せ最高潮中のスピネルのでした。
この後、レヴォリューションたちを連れて帰ってきますが、ひと悶着は・・・
特になさそうですね、お互いに。
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