第216話 おはようございました
「ふぁぁ・・・はぁ」
目が覚め時計を見れば午前4時半。少しばかり早い気もするが割といつもの事だ。こればかりは外仕事で慣れてしまったからな。
土木作業員の仕事は早ければ朝6時や7時から始まる事もある。夏の場合はサマーシーズンだのなんだの言って朝早くから仕事してたもんだ。ちなみに冬になってもサマーシーズンである。サマーシーズンってなんだよ。
一人暮らししてりゃあ朝食も昼食も自分で作らないとだめだったからな。早く起きてメシを作って~とかのせいで朝は基本的に早かったのだ。ま、仕事をやめてからも朝は早いんだがな。メシ自体はテルクシノエー達が作ってくれてるが。
で、だ。
先ほどまで俺が見てた夢。朧げに覚えられて・・・なんてことはなくバッチリと全部覚えていた。謎のもやもやにアインと名付けた事も、また夢で逢おうって約束した事もだ。たまに夢の大部分を覚えてる事もあるが、今回の夢は細部まで全部覚えてたりする。
もしかしたらただの夢じゃあなかったのかもしれんな。何せ俺が前にガチャで手に入れたSSスキル【トランスブースト】も発動時に、似たような事があったからな。もしかしたら今回もそのトランスブーストが関係してるのかもしれん。
ただの夢ならただの夢でもいいが・・・たのしそうにしてたアインの事を思えば、また会って色々話やら遊んでやりたいもんだ。
「あー・・・顔洗ってくるか」
流石に二度寝するには目が冴えてしまった。今の時間ならテルクシノエーやサイレーン達が朝食の準備をしている所だろう。挨拶ついでに顔でも洗って、軽くランニングでもやってくるかね。
※
「あ、おはようマスター。今日も早いね」
「おはようございますご主人様」
「あぁ、おはようさん。いつもありがとうな」
「んふふ、マスターに褒められた。今日は朝から良い日だね」
「そうね」
「おや? 主殿ではないか、髪の毛がボサボサだ、早めに治すとよい」
キッチンには既にうまそうな匂いが漂っていた。
味噌汁の旨そうな匂いと魚の焼ける臭い。今日はハトメヒトも料理を手伝ってくれてるようだ。ショコラやクレアと違い、ハトメヒトは料理が得意な方らしく、割と高頻度でテルクシノエー達を手伝ってくれているそうだ。
とはいえその様子は初めて料理を覚えようとしてる少女みたいにしか見えないけどな。普段を知らなければとても微笑ましい光景だ。
「・・・む。主殿?」
「ん? どうした?」
「・・・・・・・・・」
ハトメヒトが持っていた包丁を置いて、俺の周りをちょこちょこ動いて俺を見ていく。左手を顎に当て、「ふむ・・・」と何度か頷き、何かをぽつりとつぶやいたが、聞こえなかった。
「いや、何でもない、すまなかったな我が主よ。お詫びに今日のサラダにはしらたきと糸こんにゃくとがんもどきを追加でいれておくことにしよう」
「うん、絶対にお断りだわ」
おでんだよそれは。
とりあえずさっさと顔を洗って歯を磨いてしまう。調理中の邪魔をしちゃいかんからな。手伝おうと思ったがどうやらテルクシノエーは俺が手伝うよりも、自分で作った料理を俺が食べるのが嬉しいらしく、余程忙しい時でもない限りは、手伝うとすこししょぼんとしてしまうのだ。なんだこのかわいいいきもの。
ちなみにサイレーンは手伝うと喜ぶ方だ。二人で作ってた時なんて「夫婦みたいだね」なんて言って来て俺の方がドギマギしてたわ。
洗顔も終わり朝食を楽しみにしつつジョギングに出かける。
セーフハウスは流川の所と同じように周辺はあえてろくに整備されてないので走るにはあまりいい場所ではないが、なんだかんだとなれたものだ。地下にはジムで使う様なランニングマシーン等も普通に揃えてあるが、朝から外を走る方が気分が快適になる。
スピードは抑えて軽く流すように走り込む。
周囲からは鳥と動物の声が・・・・・・なんも聞こえてこないな。珍しい、いつもは動物の声などがあちこちから聞こえてくるんだけどな。特に鳥の鳴き声は何もない森の中での音楽みたいなもんだ。
スマホとイヤホンでも付けて音楽を聴きながら何てのも考えてたが、あれやると少しずつ耳が悪くなりそうで、最近はあまりやってない。前は時に気にしてなかったんだが、自然の音を出来る限り聞き分ける様にしておかなければ、ミッションなどで音で何かを感知するって事が出来なくなりそうでな。
「はっはっはっはっ・・・・」
レベルが上がったおかげもあり、体力はスポーツマンにも引けを取らないというか凌駕している。全力疾走を続けるとかではなく、普通に軽いランニング程度なら、今の俺なら何時間でもペースも呼吸も崩さずに走ってられるだろう。
後、別に長々と走り続ける事はしない。ネットで聞きかじった程度の知識だが、ちゃんとしたジョギングなら10分走るだけで十分な有酸素運動が出来るらしい。
やり過ぎて体を痛めれば本末転倒。ちゃんとした運動は地下のジムスペースなどで行い、ジョギングはストレス発散などの気分転換に行う物だと俺は思っている。
プロのアスリートやボディビルダーの人には怒られそうだが、既にステータスと言うチート状態だからなぁ・・・
「にしても・・・」
今日は本当に動物の声が聞こえてこないな。もしかしたら昼くらいから雨でも降るんだろうか?
【ま、そういう事もあるかね。】
そんな事を気楽に考えながらも俺はのんびりを走り続ける。
次のミッションまではあと数日、切り札に近いスキルは手に入れたとはいえ、油断はしない・・・と言うか出来そうにない。日々をしっかりと生き、生き残る為に全力を尽くさないとな。
それにここで死んだら、夢の中のアインにもう会えなくなるかもしれんしな。なんて、夢の中の事を現実とごっちゃに考えながらも、俺は森の中を進み続けた。
今日の朝飯もすごく美味かったぞ。
―216話了
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体調がまだ回復しないので短めに・・・
来週は夜からのお仕事で14時間連続の日が来ます。
その日は恐らく投稿出来ないのでご容赦ください。
但しやる夫スレはどのような手段を用いても投下します(何
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