第26話 裏の裏はやっぱり裏だと思う日々
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本当に有難い事ですね。
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「なんだよ、あれは・・・!?」
「まさか裏切り?? ううんプレイヤーキラー!?」
ある程度離れているとはいえ御堂達の所からでもその光景は見えた。
アクセルが重症を負い、死んだと思われていた男が全身ボロボロになりながらも笑みを浮かべながら、歪な形の銃を倒れているアクセルに突き付けている。
「うっ・・・!!」
「うわ、きったね」
あまりの光景にフェアリーズが口を押えてしゃがみ込んで耐え切れずに吐いてしまう。
そんな様子を見ても妖精達は平常運転だが。
「畜生がっ、流石にこれ以上は我慢ならねぇっ。 サイレーンとテルクシノエーは彼女の護衛を!! 俺はあいつらを助けに行く!!」
このままでは倒れているアクセルの命の危険がある。敵と戦って倒されたのなら御堂も我慢は出来たかもしれないが、最初一緒に戦っていたと思っていた男が死んだと思えば、それは擬態で全員を陥れるために動いていた事に耐えがたい怒りを燃やす。
「ご主人様っ!?」
「だめだよ、テルクシノエー」
今まさに向かおうとする御堂をテルクシノエーが抑えようとするが、それをサイレーンが自らの手で物理的に遮った。
「わかったよマスター、こっちは気にせずに行ってきて!!」
「サイレーン!? 何を!?」
「マスターは守られるだけの人じゃないよ? テルクシノエー」
「・・・っ!!」
サイレーンの言葉に頭を鈍器で殴られたような衝撃を受ける。
テルクシノエーは甘えていたのだ。レヴォが言った言葉を免罪符に死地へ向かおうとする御堂を無意識にだが止めていた。もっともな理由を付けて。
だがそれでは彼は成長しない。今まさに誰かのために戦いに行こうとしている姿は、ここに向かう時の御堂の姿そのままだ。
これ以上引き留めると言う事は、彼の命を守れても、彼の心を壊す事なのだとテルクシノエーは思い至る。
ゆっくり目を瞑り大きく息を吐く。その間数秒、目を開いたテルクシノエーは辛そうな、だが理想の主人に出会えた喜びがない交ぜになった表情で見送りの言葉を送った。
「御武運を・・・・!!」
絞り出すように、だが誰かのために動く自らの最愛の主の行動を誉だと心の中で感じながら彼女は御堂を激励する。
「あぁ。美女に応援されたんだ、元気100倍ってもんだ」
「今日は帰ったら3人でお風呂入ろうねマスター♪ だから、絶対無事に戻ってきてね」
御堂の無事を祈り、戻ってきてくれるようにとお願いを立てるサイレーンに御堂も軽口で答える。
「美女に誘われるとか、それ以上を期待してしまうな!!」
「!?!?!」
御堂としてはサイレーンのいつものセリフに対する反撃みたいなものだったが、ことのほかテルクシノエーにはクリティカルだったようだ。
顔を真っ赤に火照らせ両手で口を押えている。満更ではなさそうな彼女。というか内心ではお祭り騒ぎである。
「やったねテルクシノエー! マスターが乗り気だよ!!」
我が意を得たりと言わんばかりに破顔し喜びをあらわにするサイレーン。
逆にゆでタコではないかと思うほど真っ赤になっているテルクシノエーが焦りながら言い返すがその勢いは弱かった。
「さ!? サイレーンさん!? マジでいってるの!? ちょっ!? えーーーーーー!?」
「ふふり。満更でもなさそうですのぅ。マスター今日は寝かせないよ♪」
「お、おぅ」
早まったかなと少々後悔している御堂。そしてその様子を回復したフェアリーズがガン見しつつ一言。
「爆発四散してしまへ」
「しっとおつー」
「いつかかれしもできるさー」
「かのじょでもいいぞー?」
「うわあああん! 私のソウルギアはこんなんなのにいいい! ずるいよおおおお!!」
アクセル達の下に駆けていく御堂を見送りながら滝の涙を流す、負け犬代表のフェアリーズだった。
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「銃なんてレベル2に効くと思っているのか!? やめるんだ!!」
「効くさ。そういう武器だからなぁ! おっと動くなよ? そこのガキが死ぬのが嫌ならばなぁ。おら、後ろに下がれ? 早くしろ!!」
銃の照準をアクセルに定めながらゆっくりと近づいてくる粉骨砕身。
銃をちらつかせ二人の後退させようと脅している。
二人はじりじりと後ろに後退せざるを得なかった。
「くっ、卑怯な・・・!」
悔しさを滲ませながらも言う事を聞くしかないバンカー。
アクセルはこんな場所で死んでいい存在ではない、既にそう考えていた。復讐に囚われディザスター達に計り知れない憎悪を抱くアクセルではあるが、普通のプレイヤーや自分にとってはとても頼りになる、なってくれた男なのだ。
このような場所で理不尽で死んでいい存在ではなかった。
「こんなことをしている場合じゃないだろう!!」
「はぁ?」
怒りがバンカーを突き動かす。
「ポイントが欲しいなら、協力してあのボスを斃せばいいじゃないか!? こんなことしてたらいつか自分に帰ってくるぞ!!」
このような真似をしなくても全員で頑張ればポイントが貰える、振り分けでのポイント配布になるが、それは各自貢献度によって分ければいいだけ、こんな事をしてまでポイントを独り占めしたいのかと、気炎を吐いた。
だが、男はそれを軽く笑い飛ばす。
「若い、わかいなぁ」
粉骨砕身を肩たたきのように動かしながら男は続けた。
「世の中そんな甘ちゃんな言葉が通じる程優しくねぇんだよ? わかるか? どんな手を使ってでも勝てばいい。この世界はそういうもんなんだ」
「そんなの・・・っ! お前達だけの持論だ!!」
「それを言うなら、甘っちょいそれもてめぇの持論だろう?」
「っ!!」
マキシマムバンカーを装備した腕が持ち上がる、が。
「おっと動くなよ? それより早く俺の攻撃がこのガキを殺すぜ?」
気が付けば男は倒れているアクセルの傍まで来ていた。
髪の毛ごと頭を掴みこめかみに銃を押し当てる。
「馬鹿な奴らだなぁ。こんな死にかけの人質を取っただけで動けなくなるかよ。けけっ、こりゃうまくいけばお前等のポイントも奪えそうだなぁ」
「外道・・・! あんたは外道だ!!」
耐えがたい怒りに我慢できなくなったバンカーは男を罵る。
その間一度も口を開かなかったレヴォがここで初めて口を開いた。
「確かに、あんたの言う通りかもな」
「レヴォ君!?」
「ほぅ・・・♪」
驚いたようにレヴォを見つめるバンカーと、面白いと言った表情で見る粉骨砕身。
気にせずにレヴォは続ける。
「結局最後まで生き残れば勝ちだ。それは何も間違ってねぇ」
「ガキの癖に一丁前に分かってるじゃあねぇか、しかたね―」
「それを言えば・・・あんたはとうに負けてるよな」
「あ?」
小剣を粉骨砕身に向かって突きつけ、更に彼は言う。
それはバンカーを混乱させるに十分な言葉だった。
「あんた・・・・「ナニモノ」だ? そのおっさんの死体操って、それがあんたのソウルギアかい?」
「・・・・」
「え・・・!? し、死体!?」
「バンカー。あんたは見てなかったのか? そのおっさん、完璧に死んでたんだよ。頭部も割れて脳が飛びててるほどにな」
「・・・・・」
「なぁ? あんたの頭、よく見るとずれてるな」
先ほどまで笑っていた男の顔が途端に無表情になった。それと同時に頭部が何かが抑えていたのが外れたと言わんばかりに頭から崩れる。そこからは大量の血液と共に、脳の一部が溶けて滴り落ちていた。
男はやはり死んでいたのだ。それを何かが動かしているに過ぎない。
男、いや男の死体は崩れた顔でたどたどしい口調のまま語りだした。
「ちぃ、これだからつよいやつはよぉ。わかってんならきにすんなや?」
「ま、まさか本当にし、死体・・・!? じゃあこの人がアクセルさんをやったんじゃあなくて」
「死んでた死体が突然動き出したら流石にアクセルの兄さんでも油断するだろうよ」
ゆっくりと隙を伺うようにレヴォは会話を続ける。もし一瞬でも油断すればアクセルを助けつつ死体をどうにかできる筈と、慎重に動くが男の死体はそれに牽制してきた。
「おっとおまえにはてをださねぇからあんしんしろや」
「どういう風の吹き回しだい? PKにしては随分と生温い」
「あほぬかせ、れべる4になんかかてるか。それにまぁ、すぐにおれにかまってるひまもなくなるがなぁ。ほれみてみろ、あれがうごきだすぞぉ!!」
「っ!? おいおい、マジかよ」
立て続けの出来事に驚愕するレヴォ。
【ゴギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!】
それはイレギュラーナンバーの咆哮。
なんと、もう死亡寸前だった筈のイレギュラーナンバーが起き上がっていた。動きは相変わらずおかしいがそれでも立ち上がりレヴォ達の方を向いて今まさに動こうとしている。
「あいつは・・・!? もう立ち上がれない筈なのに!?」
「生命力はほとんど感じない。あんた、俺を止める為だけにそのおっさんみたいにこいつも動かしたか!!」
崩れた顔がさらに歪む。どうやら笑っているようだった。
「おれをころしてこいつをたすけるじかんが、いまのおまえにあるかねぇ?」
動く死体は叫び続ける。
「ほら、うごきだすぞ!! ちゃんとたおさねぇとおまえらぜんいんしんじまうなぁ!! がんばれよぉ!? おれはおまえがうごけないあいだに、そこのあまちゃんとこのしにかけのぽいんとをいただくよ」
「さ、させるかぁ! 僕がそんな事を―」
「バンカー! アクセルの兄さんは諦めろ!! 死にたくないなら俺と一緒にモンスターを倒す方に回れ!!」
「だ、だけど!!」
【ゴギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!】
「っ! うわああああああああああああっ!!」
突撃してきたイレギュラーナンバーを二人はぎりぎり回避できた。
だがそれだけだ、痛覚もなくした壊れたイレギュラーナンバーは無理な軌道変更をしながら再び二人に向かって襲い掛かろうと足を踏み鳴らす。
「ひゃはははは! れべる4ならともかく、おまえじゃあしぬよなぁ! ていうか次はうごくなよぉ!? このおとこがころされたくないならなぁ!!」
アクセルの眉間部分に銃を押し付ける粉骨砕身の死体の行動にバンカーの動きが大きく鈍る。死なせたくはない、だがこのままでは自分が死ぬ。
レヴォの言う通りに彼を見捨てなければ今度は自分が死ぬのだ。それでも尚、どうにかして全員が生き残る術を探そうとするが頭が上手く回らずに混乱する。
「どうにか、なんとかしなくちゃ・・・なんとか・・・!」
「ばけものぉ! そいつらをひき殺せええええ! さぁ、しにさらせやああああ!!」
「テメェがなぁっ!!」
「あぼっ!?」
完璧な不意打ちからの御堂の渾身の蹴りが男の顔面に突き刺さった。
突然の衝撃に何も分からないままの死体が更に全身を激しく強打される。
サイレーンとテルクシノエーのダブル強化によって人外な力から放たれた打撃が全てクリティカルヒットする。
容赦を捨て一切の手加減無く殴り続ける御堂。レベル1とは言えモンスターを軽く粉砕できるその攻撃は男の身体のあらゆる部分の肉を穿ち骨を粉砕していく。
「おおおおおおおおおおおおお!!」
今の自身が出せる限り全力の攻撃を何度も叩き込む。いつの間にか男の腕はあらぬ方向を向き、手にしていた銃や粉骨砕身はその辺りに落ちていた。
再び奪われてはまずいと思い銃は蹴り飛ばしたのだが、粉骨砕身は全く動かず放置するしかなく、ひたすら攻撃を続ける。
「坊主今の内だ! そいつを助けてやれ!! 最初の場所にいる俺のソウルギアなら回復能力がある!」
漸くある程度の余裕ができ、呆けているバンカーに説明しつつ活を入れる御堂。
勿論その間も怒涛の連続攻撃は続いている。
「!? 有難うございます!! アクセルさん! 行きますよ!」
一瞬何が起こったか分からなかったバンカーだが、直ぐに状況を理解し倒れたままのアクセルを担いでその場を離脱する。
「すま・・・なぃ・・」
「喋らないで!! 直ぐに回復してくれる場所に行きますから!!」
その様子を暴れ狂うイレギュラーナンバーと戦いながら見ていたレヴォ。
「兄さん結局来ちまったか」
「悪いなっ! 我慢できなかった!!」
御堂は男の死体を攻撃し続けながらもレヴォに近づきつつ、そしてレヴォは御堂が居る方角にモンスターが向かないように、だが御堂に声が届く距離を確保しながら相手の攻撃をいなし続けている。
「だが助かった。聞こえるかい兄さん! そいつを落としたらこっちを手伝ってくれ!! それまでは俺が一人で耐え忍ぶ!!」
「わかったぁ!!」
そう言うと同時にボロボロになった腹部に全力の掌底。
既に全身のあらゆる所から血が溢れ骨が砕かれているというのに、まだ動こうと逃げようとしている。死体であるにも関わらずだ。
『どう見ても肉体的には死んでるのに動いてやがる、吹き飛ばして放置は悪手になるか!?』
何も考えずに攻撃したら威力がありすぎて吹き飛ばしてしまいそうだったので、逃がさないように片方の手で掴みながら攻撃を続ける。もし吹き飛ばしてしまえばこの状態でも動けると言うのならば逃げて次の手を打たれるか遠距離攻撃を受ける可能性がある以上、ここで確実に倒さなくてはならない。
『仏さんにこれ以上するのはあれだが【破壊】するしかねぇ』
覚悟を決め目の前の死体を完全に損壊させる事を視野に入れる御堂。
死体を動かせるとはいえ、頭部や両腕両足を吹き飛ばしてしまえばそれ以上は何もできないだろうと考える。もしそれで動けたとしても脅威にはほぼならないだろう。
死体を動かしている存在が誰なのかは分からないが、御堂は改めてその存在に怒りを覚える。
「これがPK、これがプレイヤーキラー!だっていうのかっ!? どんだけ畜生なんだよっ!!」
吠える御堂の攻撃は止まる事は無い。すでに死んでいる男を完全に止める為、これ以上この男を辱めない為に全力を叩き込んだ。
―26話了
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テンプレさん実はテンプレではなかった!?
どうやらPKは他にいる模様です、果たしてどうなるやらですね。
のんびり続きをお待ちください。
今日からグラブルの古戦場ですね。
あさねこは一応団長さんをやらせて頂いているので、頑張らなくてはなりません
小説にグラブルにやる夫スレ、大変大変・・・・
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