第25話 そろそろボスは倒れてもいい。

何時も皆さん閲覧ありがとうございます。

つい先日1日のPVがなんと1000を突破しました。

いつもいつも本当に有難い事です。

■ご指摘により、レヴォリューションを中三、14歳に変更しました。

──────────────────────────────────────


【ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!】


 死亡寸前の状態とは思えない速度でイレギュラーナンバーはレヴォに攻撃を仕掛ける。


 だが、速さはあれど攻撃自体はとても単調、レヴォを背中に背負ったアクセルにとっては簡単に避けられるものだ。


 攻撃が空ぶりふらつきながらも再び狙おうとするが、そのタイミングでバンカーが必殺の一撃を叩き込んでいく。だがそれでもモンスターは未だ倒れることは無い。


「これだから緊急ミッションは嫌なんだ、大体ろくでもねぇ」


 アクセルの背中で実感の籠った愚痴を漏らすレヴォ。


 スキルのお陰で疲労は少しずつ回復してきている。あと数分休めればもう一度あの連鎖攻撃を放つ程度の体力と生命力は回復する。


 今はただ大人しく回復に努めるのみだ。


「死にかけてる・・・! 死にかけているのに、全然弱まらない・・・!?」


 何度全力の一撃を叩きこんだか―


 マキシマムバンカーの破壊力は同レベル帯なら随一だ。その一撃を何度叩き込んでも目の前の化け物は何の痛痒も感じていない様に見える。


「これが、緊急ミッション・・・まだ僕では力が足りないのかっ!?」


 強く拳を握り、直ぐに頭を振り思考を切り替える。


 例え今そうだとしても、参加している以上自分の役目はある。アクセルから頼まれた敵の動きを鈍らせる役目は、今バンカーにしかできないのだ。


「そうだ、僕の役目はお前を倒す事じゃあない・・・! マキシマムバンカー!!」


 再びチャージされた一撃を化け物の横っ腹に叩き込む。


 爆音と衝撃がイレギュラーナンバーの動きをまた鈍らせる。


「今の僕の役割はこれなんだ! 全力で止めてやる!! ・・・・・ん??」


【こgすおぎyうぃえygちうtyうぇいうgyへwげw!?!??!?!!?】


 先ほどとは違う、既に絶叫ですらない意味不明な声を上げたイレギュラーナンバーがその場で倒れ込み両手と両足をばたばたと動かし始める。


 寝返りを打ち、頭部をぶんぶんと振り回し、急に狂ったかのようにその場でただ苦しみ藻掻いているかのように暴れだす。


「な、何が・・・?」


「バンカー!? やったのか!?」


 レヴォを背負いながらも高速でアクセルが駆け寄る。


「アクセルさん! いえ、僕の一撃でこうなった訳じゃあないと思います」


「なら、これは・・・どういうことだ? まるで発狂したみたいに」


「発狂して壊れたんだろうな。アクセルの兄さん、もう大丈夫だ降ろしてくれ」


 レヴォがアクセルに言い、そのままゆっくりと降ろされる。


 まだふらつくが動くのはすでに問題なく、回復ももう少しで完了だった。


 急におかしくなったイレギュラーナンバーに困惑している二人にレヴォが答える。


「多分脳みそが完全にぶっ壊れたんだろ、自我も本能も壊されたら残ってるのは生きてるだけの肉の塊だ」


 こうなった原因についてさらに続ける。


「おそらくこれはあっちで待機してもらってる兄さんのソウルギアのスキル効果だな。いずれ発狂して自我崩壊するとか言ってたし、まさかこんなことになるとはね」


「あ! そ、そういえば言ってましたね。こ、こんな風になっちゃうんだ・・・」


「改めて敵に回したくないな。あいつがジェミニの知人でよかった」


 目の前で壊れたイレギュラーナンバーは完全に自我崩壊しただ意味もなくその場で動いている。このまま放置しておけばコアも破壊された以上いつかは死ぬ事になる。


「ここにいる参加者が居なきゃきつかったな。兄さん達、感謝してるよ」


「こいつら全て滅ぼすと決めたからな、俺も今回は助かった」


「少しでも役に立ててよかったです。というか僕とレヴォリューションさんは同じ位じゃあないかな・・・?」


「俺は中三だが、そっちは??」


「あ、僕も中三です」


「ならバンカーって呼ばせてもらうよ。丁寧語は苦手なんで勘弁してくれ、序に俺に敬語はいらないぜ?」


「あはは、く、癖みたいなものだからゆっくり慣らしていこうと思う、よ」


 他人に初めて使った口調を急に変えるのはそれなりに難しいものだ。ゆっくり親交を深めていけば少しずつ変わっていくかもしれないが。


「とりあえず二人とも、これはどうしますか? もう無理しなくても放置しておけば勝手に倒れると思うんですが?」


 5分稼いだ後にレヴォが先ほどの様な攻撃をする手筈となっていたが、既に目の前の存在はほぼ死んでいる様なもの、バンカーとしてもあまり彼に無茶はさせたくないと考えていた。


 だがそれに反論したのはアクセルだ。


 その眼には強い怒りが今も見える。


「いいや。これはここで確実に殺す。一匹残らずディザスターに属する奴らは皆殺しだ! こいつも野垂れ死になんて楽な真似なんてさせられるか!!」


 怨嗟の言葉を吐き散らすアクセル。


「この化け物も主催者も、それに乗じてPKなどしている屑共も、その全てを塵殺するまで俺は戦う!!」


「アクセルの兄さんレベルじゃあないがこれは倒しておかないとマズイ。と言うか倒さないとミッションクリアにならねぇ。出血死か発狂死するかはわからないがいつ死ぬかわかったもんじゃねぇしな」


 血まみれになっていた腕は既に回復し、握っている小剣を振り感覚を確かめた。違和感もなく問題なく動く、疲労も後2分ほどあれば回復すると当たりをつけレヴォは続ける。


「もう少しで回復が終わる。さっきのをもう一度ぶちかますから次は確実に倒し切れる筈だ。兄さんたちは離れてて構わねぇよ、流石にもうそこで暴れるしかない奴だからな、のんびり待てる」


「そうなんだ・・・分かったよ。悔しいけれど、今の僕じゃ君の様な破壊力のある攻撃は出来ない。一応ここで君をカバーさせてくれないか? 何かあればいつでも動けるようにするから」


「できれば俺が倒してやりたいが、今の俺じゃ攻撃力が絶対的に足りない。レヴォお前に今回は譲る、俺はその間にさっき殺されたおっさんの亡骸を回収してくる、流石に放置はできないからな」


「気を付けろよアクセルの兄さん。まだ何があるかわからんからな」 


 何処かにPKが居る可能性を考え警告するレヴォ。


 その警告を受け取り強く頷きながらアクセルは死んだ【粉骨砕身】の遺体がある場所まで警戒しながら歩いて行った。


 歩いて行くアクセルの姿をバンカーは神妙な面持ちで見ている。


 彼は知っている。


 アクセル、リアリティアクセルは最初は三人組でミッションに参加していた事を。その時にはバンカーも面識は無く、仲の良さそうなプレイヤー達だな、と少し羨ましいと感じていたものだ。


 しかし――再び出会った時のミッションでアクセルはたった一人になっていた。


 初めて見た時のアクセルは今とは違い、普通のどこにでもいるお調子者の様な男子高校生だった。だが、その時に出会ったアクセルはもう今の様なディザスターを憎み羅刹の様に戦い続けるような男になっていた。


 バンカーは考える。


『僕は初めから一人だったから最初は色々大変だったけど、もしかしたらこれで良かったのかもしれない。こんなふざけた戦いに身内も友人も巻き込む訳にはいかない』


「バンカー。あの兄さんとは知人か何かかい?」


「いや・・・何度か共闘しただけの間柄だよ」


 事実だ。今回のように共闘するようになったのは前回のミッションが初である。


「ならいい。あまり関わるのはやめときな」


 レヴォがさらに続ける。


「いつ死ぬかわからない世界に生きてんだ、あまり誰彼仲良くなってると心が死ぬぜ? アクセルの兄さんはその典型だ」


「そう簡単に割り切るのは難しいけどね・・・君は、出来たのかい?」


 レベル4という、高レベルにまで到達しているレヴォ。中学一年生と言うには何もかもが達観しているように見える。その様子は既に子供とは言えない物だ。バンカーもこの戦いに参加するようになってから、内向的だった性格もある程度変わってきたが、かれの態度はそのレベルではない。


「俺はちょっと特殊だからな。まぁ、あまり兄さん達とつるむ気は無いさ、次死んでたり、敵になってたら困るからね」


【ギョオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ】


 話を遮る様にイレギュラーナンバーが弱弱しい叫び声を上げながらその場で暴れ続けている。もうただ藻掻く事しか出来ていないが、巨体故に動くだけで周囲のものがどんどん壊されていく。


 その様子を見てうんざりした様にレヴォが言う。


「早く回復してくれないもんかね。目の前でどたんばたんやられるのは精神的にくる、かといって離れるもあれだしなぁ・・・」


「あぁ・・・うん、わかるよ」


 こちらに襲ってくる事は恐らくもう無いだろうとはいえ、化け物が目の前で暴れ続けている姿を見るのは精神的に堪えるものだ。


「よし、あとすこ――!?」


―あああああああああああああああああああああああっ!!


 その瞬間遠くで絶叫が響き、同時に弾かれたように此方に転がり込んでくるアクセル、ごろごろと転がり漸くレヴォ達の近くで止まる。


 彼の右半身が大きく爆ぜ、防具が壊れていた。破けた衣服の奥の胸板が削れら血が留めどなく溢れている。致命傷ではないが行動不能になるのは十分な大怪我だ。


「アクセルさん!?」


「あ・・・ぐっ・・・! 気を、つけろ・・!」


「なんだ、まだ生きてるんかよ」


「!? あ、貴方は・・・」


 此方に向かってゆっくりと近づいてくる人影。


 それは先ほど死んだはずだった男、間違いなく即死だった。


「あれを受けて、生きてただと・・・・・!?」 


「くくくっ、上手く騙されてくれたなぁ。これで漸く一匹、後は疲労困憊の奴が1匹に雑魚が一匹かぁ」


 三人の目の前に現れたのは先ほど死んだはずの【粉骨砕身】のソウルギアを持っていた男だった。全身血まみれなのはそのままで、何事も無いように目の前まで歩いてくる。


 にやにやと笑いながら粉骨砕身は三人を馬鹿にしたような態度で続ける。


「さぁて、そろそろ死んでもらおうかい? いやぁ、ちゃんと待ってたんだぜ? そこの化け物が死にかけてお前等が疲労しているタイミング。そして馬鹿みたいに誰かを救おうとしてる奴がわざわざ来てくれるのをよぉ」


「貴方は・・・!? いや! お前プレイヤキラーだったのか!? よくもアクセルさんを!」


 わざわざ死にかけるような真似をしてまで、今のタイミングを計っていたのかとバンカーが怒りに震える。直ぐにマキシマムバンカーのチャージを始めようとするがそれよりも早く懐から取り出した銃を倒れ込んでいるアクセルに突き付けた。


「おっと動くなよ? てめぇはどうやらこういうのが一番効きやすいみたいだからなぁ」


 左手で銃を突きつけ、右手の粉骨砕身を構えながら男は厭らしい笑みを浮かべ続けていた。





―25話了



──────────────────────────────────────リターンオブテンプレチンピラさん!!

リターンオブテンプレチンピラさんです!!

彼はテンプレに負けずに帰ってきました!!


Q 主人公どこ??

A 安全な所で放置されてます(爆笑


実はもう少し続けて書きたいのですが、これ以上はやる夫スレ投下に

間に合わないので明日に回す事にしました。明日の投稿をお楽しみください。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る