第260話 ほんとウチの馬鹿がすみません!


 頬というより、顔が真っ赤に腫れている山崎の隣で一生懸命俺に向かってぺこぺこと頭を下げる女性の姿。


 彼女が山崎が失ってしまったもう一人の親友であり恋人の立川恵との事だ。


 いきなり俺達の所にやってきて開幕俺に向かって礼と謝罪を伝えに来てくれている。どうやらかなり真面目な様で自分の蘇生の為に、蘇生薬を譲ってくれた事や、新島の事、山崎に色々手助けしてきた事をとても感謝していた。


 寧ろ山崎には此方が助けてもらってるから気にしないでくれとは伝えておいたが、これから出来る限り俺を手伝うって事で話はついた。


 にしても元気な女性だな。俺達のメンバーには居なかったタイプだ。強いて言えばガーディアンが似たような感じかもしれん。


 結構勝気なタイプらしく、あの山崎がたじたじだった。これはこれで面白いものを見られた気がするな。


「改めまして、立川恵です。ソウルギアは【千手観音】名前負けしてるんですけど前衛は任せてください」


 立川はそう言うとステータスを俺に見せてくれた。


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【ソウルギア:立川恵(タチカワ メグミ)】

【LEVEL:4】

【ステータス:パワー:15 マジック:0 ガード:10 レジスト:5】

【スキル:ソウルギア:千手観音Lv4】

【ステータス:パワー:25 マジック:0 ガード:15 レジスト:10】

■合計ステータス

【ステータス:パワー:40 マジック:0 ガード:25 レジスト:15】

■千手観音固有スキル

【無限乱打】近距離の相手に対し超高速で打撃攻撃を行える。

この攻撃に対して【割り込み】を行うには【パワー】を超えなくてはならない。

【千手千眼】自身に対する全ての攻撃を超高確率で回避し反撃する。

目の届く範囲内の奇襲に対して100%カウンターする。

【闘拳術:最上級】装備するだけで【闘拳術】を最上級で扱う事が出来る。

【格闘術:最上級】装備するだけで格闘術を達人級で扱う事が出来る。

【千裂豪打】1日1回使用可能。敵単体に千発の打撃を叩き込む。

この時の威力は【パワー×ソウルギアLv】として扱う

自身の【パワー】が相手の【ガード+レジスト】を超えていた場合、

防御無視になり、割り込みを無効化し、吸収や反射を貫通する。

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 俺以上の脳筋がそこに居た。


 清々しいほど前衛で相手を殴る専用に特化しているステータスだ。パワー40ってどういう事だろうか。これ一切のバフ無しでソウルギア展開しただけでこれになるんだぞ? 俺の筋肉が見せ筋(爆笑)になってしまうほどの近距離能力じゃねぇか。


 完全に格闘技、近接白兵戦オンリーで、魔法に関しては一切使えないとか潔いにも程がある。


 それに1日1回とは言え、一瞬で千発殴りますとか普通に恐ろしい事書かれてるんだよ。威力も自分のパワー×レベルとか、山崎とレベルが連動してるから、今はレベル4なので、4×40=160。


 パワー160とか俺の全力バフでも届かないんだが? 後、それが相手の防御を貫通したら防御無視とか、単体特化の最高峰が目の前にいた。俺格闘術じゃなくて、見た目に合わないけど速剣術にしておいてよかった。


 彼女の前じゃ俺の格闘術なんて悲しみしか溢れてこないぞ。後ついでに言うと、彼女との組手は謹んでご遠慮させてもらおう。


「前から筋肉こそパワーみたいなステータスだったけど、レベル4になったせいでもっとおかしい事になってるな」


「う、うっさいわね! 分かりやすくていいでしょ!」


 新島に揶揄われて顔を赤くしている立川と、それを横目に見て嬉しそうにしている山崎の姿。多分これが昔の山崎の日常だったんだろうな。


 ぎゃーぎゃーやっている二人を横目に俺は山崎の方に近づいて行く。


「お疲れさん」


「あぁ。朝からやかましくて済まないな」


「気にするなって。元気な彼女さんじゃねぇか。一発重いの喰らったみたいだしな」


「久しぶりに思い切り殴られたよ。昔は俺と新島が馬鹿をやっては、そうやってどつかれてた」


 俺の知っている山崎はもう既に復讐者みたいになっているこの山崎だったが。そうなる前は新島が言っていたように、騒がしく賑やかな奴だったんだよな。


 それがここまで変わっちまう。大切な存在が亡くなるってのは本当に色々あるもんだ。


「あんたのお陰で、俺は全てを取り戻せた。これほどの恩、どうやって返せばいいか分からない程にな」


「・・・あー、まぁ気にするな・・・っても無理なんだろうが、それならこれからもよろしく頼むぜ? お前さんは頼りになるからな」


「あんたにそう思ってもらえるのは面映いな」


「お。おもはゆい??」


 おかゆの親戚ですか? もしくは面白いの言い間違いか??


「あんたは少しケーキ以外で勉強した方がいいかもしれんな」


「日常じゃあんまり聞かんし俺は悪くねぇ」


「はは、そうだな。俺の方こそ古臭かった」


 珍しく、本当に珍しく山崎が普段のクールさを崩して笑った後、真剣な表情で俺の方に向き直る。


 俺の方を真剣な眼差しで見ているその姿は、俺も何度か見た事があるし、自分もやった事がある。信用できる、信頼できる、感謝している相手に自分の気持ちを、想いを伝えようとしている覚悟の表情だ。


「俺は、この生き方をもう変える事は出来そうにない。あの二人が蘇っても、結局俺は俺のままだった。だから、ディザスターを滅ぼす事を諦める事は出来ない」


「山崎・・・」


「だが、それはあくまで俺の目指す最終的な場所。これからはそれを大前提にして、この場所を、御堂。あんたとあんたの仲間達を守り抜くと誓う」


 覚悟を決めた瞳が俺を見ている。


 それが山崎の決めた事ならば、俺はこう返すだけだ。


「お前の言う仲間には、お前が入ってる事を忘れるなよ山崎、お前が死んだら意味がねぇからな? その時はあまってる蘇生薬を山田辺りに使わせて蘇生させるぞ?」


「あ、あいつのソウルギアか・・・き、気を付ける」


「おぅ。精々気を付けろ。これからも頼りにしてるぜ?」


「任せろ。・・・・透哉。俺の事は透哉と呼んでくれて構わん」


「まったく、イケメンは名前までイケメンかよ。ならそう呼ばせてもらうぞ? 俺の事は今まで通りでも何でも構わん」


「それは助かる。これからも御堂かケーキ屋と呼ばせてもらおう」


 俺と透哉はお互いに腕を合わせ、ほほ笑んでいた。


 その後ろで何故かハトメヒトがなんかバカでかいカメラを持って一生懸命激写していたが、俺と透哉はあえて全スルーする事にした。



―260話了


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透哉君、本領発揮モードの様ですね。

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