第261話 くっ、持病のケーキ作りたい病が・・・!!



 ダンジョアタックミッションが終わってそろそろ一週間。体のだるさも殆ど回復し、日々の鍛錬なども再開するようになった。


 モンスターを倒してのポイント稼ぎはそれなりに稼げるようになったし、適度に緊張感をもって日々を過ごせるので、こうして考えるとかなり悪くないもんだと感じてる。ハトメヒトがこれに関して教えてくれなければ即座にスルーしてた案件だしな。


 今は主に山崎・・・透哉達が山田を加えて四人で鍛錬兼稼ぎを行ってるな。立川は復活したばかり、それも本来のレベルは2だったので勘を取り戻したり今の実力をちゃんと把握するために毎日の様にモンスターをぶん殴っている。


 冗談ではなく本気で全てのモンスターを殴り倒して倒してるのだから、凄まじいもんだ。時々蹴りも使うが、基本は千手観音のソウルギアを用いた素手攻撃がメインらしい。佐伯少年みたいな戦い方をしてると思えば分かりやすいか。


 彼女のソウルギアは名前の通り背中部分に複数の疑似腕が浮かんでいて攻撃時にそれらの腕も同時に相手を殴ったりどついたりエルボーしたり捕まえたりとやりたい放題だ。


 レベルが低い時はまともに操り切れてなかったらしいが、レベル4に格上げしている今ならそこそこは操り切れてるらしい。


 後、千手観音というが、浮いている腕は千本はないとの事。展開している姿を見せてもらったが、彼女が法衣の様な変わった鎧・・・観音様が身に着けてる衣服? あれの鎧バージョンを身に纏い、その後ろに数えただけで20~50本はある空飛ぶ疑似腕があるみたいな感じだった。


 レベル1の時は数本しか浮かんでなかったとのことなのでレベルが上がるほど腕の総数が増えていくんだろうか。末恐ろしい接近戦娘である。


 既にサイレーン達とも仲良くなっており、色々女性同士の話をしてたりする。片桐?? 片桐にそういう乙女っぽい話は・・・うん。あいつは俺と同じオタクの系譜だから仕方ないね。


 まぁ、それは良いんだ。そこまで重要な事ではないからな。それに関しては透哉の方で色々やってくれるだろう。


 今俺が考えているのは鍛錬とか、次のミッションとか、そう言うのじゃあない。


 そう・・・今の俺は―――


「ケーキが・・・!! 作りたい!!」


「あ、はい」


 はい、そこの片桐君? 何呆れたような表情をしておられるのかね?


 俺と言えばケーキ。ケーキと言えば俺ですよ。


 更には新しく増えた住人の立川の為にも、歓迎のケーキは作らざるをえない、そうは思わないだろうか? やはり歓迎会をやるのならば最高のケーキは必須である。正直な話、ケーキの為の他の物があると言っても過言ではない。


「過言だよ」


「はいそこ、俺の心の独白に突っ込むな」


 お前は心が読めるサトリ種か何かか?


「回復したばかりなんだし、ゆっくり休んでりゃあいいのに」


「回復したからこそだろ? ケーキの妖精さん達も俺に作ってくれー、作ってくれーって呼んでいる気がする」


「大丈夫か・・・? 頭に後遺症残ってるとか・・・?」


「冗談じゃ、やかましいわ。という訳で折角の空き時間だし、立川にもケーキを振舞ってやらんとなぁ」


「ふーん・・・」 


 微妙にしらーっとしてる片桐。今日はゲームのメンテ日らしく部屋から出てのんびりしてるそうだ。今までだったらそれでも違うゲームをやって籠ってそうだったし、少しずつは引きこもりも改善されてるのかもしれんな。


「そうだ、暇だったら一緒にやらないか?」


「ぅぇ・・・?? ケーキ作り??」


「あぁ。前に美味い蕎麦作ってくれただろ? あれだけの努力と根性があるならケーキも上手く作れるぞ? どうよ、美味いケーキ自分で作ってみたくないか?」


 あの時、テルクシノエー達を超えて美味い蕎麦を作った片桐だ。そもそも器用だしケーキ作りも慣れちまえば簡単に出来ると思うんだよな。


 前も手伝ってはくれてたが、あくまで手伝いで自分で作ろうとは考えてなかったみたいだし。


 俺は作るのも好きだが食べるのはもっと好きだ。他の奴等が作った美味いケーキを食べるのも勿論大好きなのだ。同時にそいつらに俺が作ったケーキを食べてもらうのもな。


 片桐なら蕎麦に向けた気合があれば、美味いケーキを作れるようになるとみてる。


 今はスピネルの方が技術は上だが、片桐なら本格的にやればもしかしたら何れは俺並の腕前になれる気がするんだよな。


「自分でケーキかぁ・・・うーん」


「そうそう、作ったケーキを自分で食べるも良し、誰かに振舞うも良しだ。寧ろ俺に食わせてくれ」


「っ!? ・・・と、友樹に食べさせたら批評されまくりな気がして怖いんだけどなぁ」


「まさか。俺は他人の批評が出来る程の腕前なんてねぇよ。ただ美味いのが食いたいし作りたいからやってるだけだ」


 みんなして俺のケーキ作りの腕を褒めてくれるが、世の中にゃ俺なんか足元にも及ばないパティシエなんてごまんと居る。俺はあくまで趣味で美味しいケーキを作ってるだけのお兄さんだからな。


 とはいえ自分を卑下してる訳じゃねぇ。俺は俺で俺なりに自信をもってうまいケーキを作れているつもりだ。楽しくやってりゃ誰でも上手くなる。


 専門的な技術よりもまずは、ケーキ作りを楽しむ事から始めて行けば美味いケーキを少しずつ作れるようになっていくもんだ。


「・・・友樹が私のケーキを食べる・・・か」


「片桐?」


「作ったら食べるんだろうなー? ちゃんと褒めてくれよ? 辛口ばっかりだったら私は泣くからな」


 ゲームの時に見せる様にニヤリと笑った表情で俺を見る片桐。


 調子に乗ってる時や、機嫌がいい時、嬉しい事があった時に良く見せるようになった表情だ。結構乗り気になってくれたようだな。


「大丈夫だって、お前さんならうまいケーキを直ぐに作れるし、食べるのが楽しみだ」


「・・・楽しみ。たのしみ・・・か。よし、頑張ってみるかぁ」


「よく言った。美味いケーキ作ろうぜ?」


「ちゃんと教えてくれよー? で、何のケーキ作るの? 前はなんだっけ? まいたけでケーキ作ってたよな?」


「まいたけな・・・まだ腐るほどあるんだがどうしよう・・・」


「嫌いじゃないけど毎日は嫌だ・・・」


 安心してくれ、俺も嫌だ。


「行き成り凝ったの作っても上手くいかんし、簡単な奴から作っていこうショートケーキとか慣れるとほんと簡単で楽しいぞ? デコレートセンスがものを言うしな。味も見栄えも色々好きなようにやれる」


「あー、いいなぁそれ。私ショートケーキの上の飾りとか大好きだわ。チョコとか砂糖菓子とか色々のってるとなんて言うか、豪華! って感じするし」


「わかってるじゃねぇの。そうそう、ショートケーキの良い所はそこなんだよ。他のケーキでも飾りがものを言うが、生クリームを使うショートケーキは色々飾りつけして自分の味を出せるのが良いんだよなぁ」


 興に乗り始めてケーキについて語りだす俺に、片桐は嫌な顔をもせずに付き合ってくれる。こりゃケーキ作る時は色々しっかりと教えてやらないとだな。


 片桐の作った美味いケーキか・・・楽しみだな俺も。


―261話了


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ケーキ作りたくなる病 

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